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1章 

家族が増えた

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「お前の名前はボン助の弟分という事で、デンにします! デンちゃん!」
「クゥ?」

 コテンと首を傾げた白い子犬、デンに私は満足そうに頷く。
ネーミングセンスが死滅してる? そんなの関係ない。大事なのはどれだけ愛情を込めるかだ。
本当はデン助にしたかったんだけど、この世界でデンスケは無いかなー? って思って「デン」だけ採用した。
ゲッちゃんに関しては、もう付けちゃったんだからゲッちゃんでいい。
名前をコロコロ変えるのはゲッちゃんに悪い。

「薬草の効果すごーい! デンちゃん良くなって良かった~」

 一夜明けたら、デンちゃんの傷口は瘡蓋になっていて、『まだ見ぬ君』さんには悪いけど、お肉をデンちゃん用に少し貰って、細かく切って食べさせた。
食べっぷりも良いし、昨日の今日でこの回復力は凄い。
薬草も後で採りに行って瓶に詰めておこう。
冬になったら採れないとかだったら、少し困るかもしれないからね。

「ゲッちゃん、今日は芋を手に入れようと思うの。ゲッちゃん芋の生えてる場所はわかる?」
「ゲキョ!」
「デンちゃんはお留守番出来る?」
「クウン?」

 怪我したばかりの子犬を連れ歩いて良いものか悩む……でも、ついて歩いてくるから連れて行った方が良いのかなぁ?
首輪とか無いから心配なんだけど、いざとなれば抱き上げて歩けば良いかな? うん。抱っこで移動しよう。モフ毛パラダイスを我が手にする時だ。
デンちゃんを抱き上げて、へにゃーと顔が緩んでしまう。

「このふわふわ感たまらない……うわぁ~なにこれ! モフモフ最高!!」

 顔をスリスリとデンちゃんに埋めて、スーハースーハーと匂いを嗅ぎまわる私の変態さに、若干ゲッちゃんが白い目で見た様な気がしたのは気のせいかな?
ああ、数ヵ月ぶりのモフ毛……デンちゃんを助けた甲斐があった。
あの時、怖気づいて逃げていたら、この毛並みは失われていたかもしれないのだから、私は黄色い猿のザクザクした毛を払拭するかのように、デンちゃんを触りまくった。

「よし、皆で一緒に行こうか!」
「ゲキョ―……」
「クウン」

 この日、私は二人目の家族を手に入れた。

 そして、ゲッちゃんの案内の元、ビルズという芋を手に入れ、念願のエバーナの実を手に入れたのである。

 ビルズはジャガイモを少し甘くした感じで、茹でてハーブソルトとソーセージを焼いた物と一緒に食べたら滅茶苦茶美味しかった!
 本に書いてあった通り、ビルズとお肉があれば最高なのには納得。
ワインは大人になったら、ビルズとお肉と一緒に味わってみたいものだ。

 ビルズは大量に生えていたから、リヤカーで次の日に収穫に来て、エバーナの実もいっぱい採って帰った。
木箱に大量にビルズを入れて、これだけあれば冬は越せそうな感じがする。
エバーナもスライスしまくって、天日干しした。

 問題が少しだけ出てしまったけど……デンちゃんのご飯は流石にお肉くらいしか無いから、『まだ見ぬ君』さんには悪いけど、お肉はデンちゃん用になりそう……でも、それ程多くあるわけじゃないから、デンちゃんが大きくなったら足りなくなる。 
私の次の課題は、デンちゃんのお肉をどう調達するかになった。

 小屋にある狩りのやり方の本を読んで、一番簡単な方法はどれかで悩むことになった。
出来れば、動物はもう殺したくないけど、デンちゃんが生きる為にも、私がこれから生きる為にも避けては通れない課題だと思う。

 果物や木の実にお芋だけでは、成長期の私はチビっこいままで終わってしまうし、デンちゃんも飢えてガリガリに細くなってしまうのは可哀想だ。

 本で一番簡単そうなのが、鳥だった。
ゲッちゃんが居るから、鳥はなぁ……と、思ったけど、普通にウサギや猪みたいな動物は毛を剥いだりするのが大変だということ。
鳥の場合は、首を切って血抜きしたら、お湯に投げ込むと毛穴が開いて羽がむしりやすくなるらしい。
ナイフで毛皮を剥いで、内臓を取ったりとかする動物より、鳥の方が幾分か楽なのだ。
血抜き時間も鳥の方が早いらしいし。

 問題は狩りの仕方だ。
弓で射止めろ! とか……これが一番出来たら苦労しないわー!! と、叫びたいけどね。
一応、武器の部屋に弓があるから、明日は弓の練習もやろう。

 この小屋にある武器に関しては、少しヤバい武器が多いのかなー? とも思う。
斧にしても、いつも愛用しているナイフにしてもね。
切れ味が良いのは勿論だけど、刃こぼれしないし、魔法みたいなのが出るし……明日はリヤカーに武器を幾つか乗せて、武器の効果も見る予定である。
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