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本編

それぞれの思惑  ヒーローSide・悪役Side

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  ✳︎✳︎ヒーローSide~赤城兄弟~✳︎✳︎


「優が…拐われただと……」
「うん…。まぁ…正しくは優くんの兄さんが取り返しに来たんだけどね…。僕は…僕は何も出来なかった…」

ヒカルからの連絡を受けた星夜はすぐに家へと帰ってきた。
優がいた部屋で落ち込んだ顔をしてベッドに腰掛けているヒカルの姿にいつものような元気はない。

「青木誠か…。以前開かれた会議でも要注意人物にあがっていたな。戦闘力もトップクラスで、それ以外にも裏社会でのビジネスにも成功し地位を確立している男だと聞いた」
「優くんのお兄さんって凄いんだね…」
「あぁそうだな…。なぁヒカル。お前はこれからどうしたい?このまま優を諦めるのか?」

星夜の挑発するような言葉に、落ち込んだ表情を見せていたヒカルは顔を上げてキッと星夜を睨みつける。

「こんな事で優くんのこと諦めるわけないじゃん。兄さんこそどうするの?僕的には別に諦めてもらっても構わないけど」

いつもの口調に戻ったヒカルを見て星夜は口角を上げる。

「俺が諦めるわけないだろ。優の兄貴はきっと俺達の事をこのまま許すなんて事はしないだろうな。青木誠…敵としては申し分ない相手だ。」
「兄さん優くんを取り戻すまでは簡単にやられないでよね。僕、悪役のトップと戦うのは流石に無理だからね」
「任せておけ。優への愛の力で必ず勝ってみせる…」
「何その決め台詞。ダサいんだけど…」

星夜は誠と戦う事を想像しニヤリと笑みをこぼす。

「絶対に優を取り返す…。どんな手を使ってでも…。そして優をこの手で抱く!」
「うん…そうだね!じゃあ早速作成会議だよ兄さん!」


愛する優を取り戻すべく赤城兄弟は動きだす。




  ✳︎✳︎悪役Side~青木誠~✳︎✳︎


優からの話を聞き誠は大事にしていた優がヒーローに調教される様に玩具にされもてあそばれていた事実を知り赤城兄弟に対して殺意を覚える。

優の意識を失わせると地下の最奥の部屋へと連れて行き赤城兄弟を始末するまでは監禁する事にした。


殺す…殺す…殺す……

今の誠の頭の中は赤城兄弟への殺意で溢れていた。
優を閉じ込めた部屋から出て誠は自分の部屋へと向かっていると家庭教師の林が声をかけてくる。

「誠様…。優くんは…」

林が近づいて来ると誠は顔をしかめる。
今回、優があんな酷い目にあい助けるのが遅れた原因の一つが林の報告が遅かった事。

そんな林が心配そうな顔を浮かべてこちらを見てくるのだから誠は怪訝な顔になる。

「優なら奥の部屋で休ませている…。林…お前はもう優の家庭教師から外す。もう俺の前にも現れるな」
「そ、そんな!何故ですか!?」
「何故か?そんな理由も分からないのか!優が赤城に連れ去られた時、お前がしっかり監視し早く報告していれば…優はあんなに傷つく事はなかった…」
「本当に…本当に申し訳ありません!次からはしっかりと優くんを監視します。誠様への報告も怠りません。だから…私を見捨てないでください…」

林は縋り付く様に誠へ懇願し手を伸ばすが、誠はその手を払いのける

「次などない。もうお前の顔も見たくないんだ。早く出て行ってくれ」
「そんな…。私は…誠様の役に立ちたくて…ずっと優くんの世話だって…」
「うるさい!俺がお前を消す前にさっさと消えろ!」

誠は林の胸ぐらを掴むと壁に向かってダンっ!と林の体を打ち付ける。
林は苦痛に歪む顔を見せながらも必死に誠へと謝罪を繰り返し見捨てないでくれと泣き叫ぶ。

「何を言われようと俺の意思は変わらん。殺されないだけマシだったと思え」

誠は林に冷たい目線を向けてそう言うと掴んでいた手を離しその場を去る。


残された林は壁にもたれ掛かり怒りと苦痛でぐちゃぐちゃに顔を歪ませる。


「私は誠様にとって必要な存在なんだ…。あいつさえ…あいつさえいなければ…」

林は優のいる部屋の方を睨みつけながら呪いのように優への恨言を呟いた。
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