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リアムの過去 ④

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「俺が『英雄』の称号を……?」
「あぁ、王から直々に発表があった。やったなロンヴァルト! 久しぶりの英雄の誕生だぞ!」

団長室に急に呼び出されたので、何かやらかしてしまったんじゃないかと心配していた俺の予想を遥かに超える報告に思わず固まってしまう。

『英雄』の称号はそう簡単に与えられるものではない。
国の窮地を救った時などに与えられるものだが……前回皆と討伐したレッドドラゴンがそれに当たるのだろうか……?
それならば俺だけではなくイーゼルや騎士団の皆にも与えられる資格があるはずだが……。

「どうしたロンヴァルト? こんな名誉な事はないんだぞ? 驚いてるだろうが喜んでいいんだぞ!」

団長に背中を叩かれ俺は苦笑いを浮かべながらその場をやり過ごした。



騎士団の宿舎へと帰れば俺が英雄の称号を得た噂がすでに広まっていて同僚達から祝われる。
だが……騎士団の皆が俺の英雄を祝福してくれる訳ではない。俺に冷めた視線を向けてヒソヒソと話をしている奴らもいた。
そいつらの隣を通ればボソリと言葉を投げかけられる。

『英雄に相応しいのは孤児ではなく、由緒正しい血筋のイーゼルだ』

そんな言葉を聞くと孤児院から侯爵家に引き取られた時のことを思い出す。
魔力だけで養子になった俺は引き取られた侯爵家でも同じような言葉を吐き捨てられていた。

確かに俺には『英雄』なんてものは相応しくない……。
そう思いながら部屋の前まで来れば、イーゼルが俺の部屋の前で待っていた……。

「イーゼル……」

もしかしたら、イーゼルも俺が英雄の称号を手にした事をよく思っていないんじゃないか……。
そんな考えが過ぎるとイーゼルと顔を合わせる事に恐怖を感じてしまう……。
イーゼルは俺が戻ってきた事に気づき顔を上げると……満面の笑みで俺の方へとやってきた。

「ロンヴァルト! やったな! 王から英雄の称号を与えられるなんて凄いじゃないか!」

自分のことのように喜ぶイーゼルを見て、心の中に渦巻いていた不安は薄くなる。

「ありがとう……。だが、俺には英雄なんて称号は相応しくないと……」
「何を言っているんだ! ロンヴァルトがここまで努力してきた成果だろ? もっと自信を持っていいんだぞ」

爽やかに笑うイーゼルを見ていると少しだけ気持ちは楽になった。


それから英雄の称号を与えられた俺の生活は一変してしまう。

騎士学校に入って以降、会うことも連絡をする事もほとんどなかった侯爵家の義父母に呼び寄せられると「自慢の義理息子だ」と、手のひらを返したような態度をとられる。

行ったことなどない夜会にも連れ回され、いくら拒否をしても「これは英雄としての仕事だ」と言われる始末……。
義父母は俺を自分達の所有物だとアピールし、捏造した過去の話をし始める。

昔からやんちゃで手のかかる子だったが、私が愛情をかけて育てたのもあってこんなに立派な青年になった。
孤児として引き取ったが、英雄を生み出すのは血筋や爵位ではない。育ってきた環境や両親がいかに関わっていくかだ……。

まるで俺を作り上げたのは自分たちだと言わんばかりだが、一度だってあんた達は俺にそんな事をしてくれ事も言葉すらかけてくれたことはないのに……。

義父母へ冷めた視線を向けながら俺は小さくため息を吐いた。
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