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ゲスターの事情
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「チッ……。相変わらず貧相な食事だな……」
この屋敷に来てからようやく半年が経とうしているが今だにこの屋敷の質素さや貧相な食事には慣れない。
数口食事を食べたところで手を止めデュークに下げるように命じる。
「すみませんゲスター様。すぐに代わりの食事を持って参ります」
この屋敷に来てから半年……。
あの忌々しい遺言書さえなければこんな生活など送らなくてもすんだものを……。
遺言書が保管されている金庫を睨みつけていると、デュークが代わりの食事を持ってやってくる。
『ヴァントーラ公爵家の全財産は、レノー・ヴァントーラの契約従者であるココに譲る』
その遺言書を見せられたのは叔父であるレノーが危篤状態だと聞いてやってきた当日の夜の事だった……。
危篤状態だと聞いていたよりも元気そうな叔父を見てガックリと肩を落とした所に叔父から突きつけられた衝撃的な事実……。
叔父は子どもに恵まれず公爵家の後継は叔父の弟である父が引き継ぐ事になっていた。王都近くにある公爵家の本家はすでに父へ譲渡し、領地経営や貴族のいざこざに疲れたからと言って、叔父は遠く離れた地へと拠点を移した……と、いうところまでは父から聞いてはいた。
五男である私は爵位を継ぐ権利も遠く、父が死ねば次にヴァントーラ公爵家を継ぐのは兄のうちの誰かだ……。
それならばと、叔父にあたるレノーに媚びを売り叔父の遺産相続を有利に進めて行こうとしたのだが……気難しい叔父の機嫌を取るのは思ったよりも難しく難航していた。
元々の持病が悪化した時も弱り目に付け込めば……と、思ったが余計に不機嫌にしてしまうだけだった。
そんな時に出てきた遺言書に落ち着いていられるはずもない。
………だから実力行使にでた。
叔父の持病が再度悪化するようにこちらで用意した医師に薬を処方させ、また弱らせていく。
身動きが取れない間に屋敷の使用人達を解雇していき、自分にとって都合のいい者達を配置していけばこの屋敷は私の手に落ちたも同然……。
だが、私達がやってきてすぐに叔父に死なれれば怪しまれる事もある。なので、叔父の看病をする為に屋敷で過ごしているように装い、嫌々ながらここでの生活をなんとか過ごしている。
それに……あの忌々しい遺言書をどうにかしなければ私の努力も水の泡……。
叔父の書いた遺言書は魔法契約された物で本人以外は契約破棄ができない代物だ。叔父の死と共にその契約は執行される。
だから叔父にすぐ死なれてはいけない……。
「ゲスター様。注文されていた物が三日後に到着するようです」
「そうか! では……ついにこの生活から抜け出せるのだな」
デュークの言葉に久しぶりに明るい気持ちになる。
注文していたのは即効性のある『毒薬』……。
それを使い叔父に最後を迎えてもらう予定だ。ただ、私達が毒を盛る訳ではない。
毒を飲ませる役目はココにやってもらう。
遺言書の効力も罪人には通用しない。そこに、もう一枚の私が用意した遺言書が見つかれば、叔父の財産は全て私のもの……。
「物が到着しましたらココの小屋にも同じ物を忍ばせておきます」
「あぁ。よろしく頼むよデューク」
私は数日後に訪れる幸福な日々を思い浮かべながら用意された食事に舌鼓を打った。
この屋敷に来てからようやく半年が経とうしているが今だにこの屋敷の質素さや貧相な食事には慣れない。
数口食事を食べたところで手を止めデュークに下げるように命じる。
「すみませんゲスター様。すぐに代わりの食事を持って参ります」
この屋敷に来てから半年……。
あの忌々しい遺言書さえなければこんな生活など送らなくてもすんだものを……。
遺言書が保管されている金庫を睨みつけていると、デュークが代わりの食事を持ってやってくる。
『ヴァントーラ公爵家の全財産は、レノー・ヴァントーラの契約従者であるココに譲る』
その遺言書を見せられたのは叔父であるレノーが危篤状態だと聞いてやってきた当日の夜の事だった……。
危篤状態だと聞いていたよりも元気そうな叔父を見てガックリと肩を落とした所に叔父から突きつけられた衝撃的な事実……。
叔父は子どもに恵まれず公爵家の後継は叔父の弟である父が引き継ぐ事になっていた。王都近くにある公爵家の本家はすでに父へ譲渡し、領地経営や貴族のいざこざに疲れたからと言って、叔父は遠く離れた地へと拠点を移した……と、いうところまでは父から聞いてはいた。
五男である私は爵位を継ぐ権利も遠く、父が死ねば次にヴァントーラ公爵家を継ぐのは兄のうちの誰かだ……。
それならばと、叔父にあたるレノーに媚びを売り叔父の遺産相続を有利に進めて行こうとしたのだが……気難しい叔父の機嫌を取るのは思ったよりも難しく難航していた。
元々の持病が悪化した時も弱り目に付け込めば……と、思ったが余計に不機嫌にしてしまうだけだった。
そんな時に出てきた遺言書に落ち着いていられるはずもない。
………だから実力行使にでた。
叔父の持病が再度悪化するようにこちらで用意した医師に薬を処方させ、また弱らせていく。
身動きが取れない間に屋敷の使用人達を解雇していき、自分にとって都合のいい者達を配置していけばこの屋敷は私の手に落ちたも同然……。
だが、私達がやってきてすぐに叔父に死なれれば怪しまれる事もある。なので、叔父の看病をする為に屋敷で過ごしているように装い、嫌々ながらここでの生活をなんとか過ごしている。
それに……あの忌々しい遺言書をどうにかしなければ私の努力も水の泡……。
叔父の書いた遺言書は魔法契約された物で本人以外は契約破棄ができない代物だ。叔父の死と共にその契約は執行される。
だから叔父にすぐ死なれてはいけない……。
「ゲスター様。注文されていた物が三日後に到着するようです」
「そうか! では……ついにこの生活から抜け出せるのだな」
デュークの言葉に久しぶりに明るい気持ちになる。
注文していたのは即効性のある『毒薬』……。
それを使い叔父に最後を迎えてもらう予定だ。ただ、私達が毒を盛る訳ではない。
毒を飲ませる役目はココにやってもらう。
遺言書の効力も罪人には通用しない。そこに、もう一枚の私が用意した遺言書が見つかれば、叔父の財産は全て私のもの……。
「物が到着しましたらココの小屋にも同じ物を忍ばせておきます」
「あぁ。よろしく頼むよデューク」
私は数日後に訪れる幸福な日々を思い浮かべながら用意された食事に舌鼓を打った。
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