6 / 38
お兄さんが特技を披露してくれました!
しおりを挟む
「ただいま~リアムさん」
「おかえり、ココ」
お兄さんことリアムさんがやってきて三日が経つ。
リアムさんの頭の傷は順調に治り包帯を付けなくてもいい状態まで改善している。
ただ……記憶の方はさっぱりで、今だに自分が誰なのかすら分からない……。
僕は仕事から帰ってくると食事の準備を始め、リアムさんも食器を準備してくれたりと手伝いをしてくれる。
傷も治ったリアムさんは、ずっと小屋で僕の帰りを待っているだけの生活に退屈をしているようだ……。
「なぁココ……何か俺にも出来ることはないか……? 料理以外で……」
「そうですねぇ……」
一度リアムさんが僕のためにと料理を作ってくれたのだが……ちょっぴり残念な味だった。食べられない程ではなかったのだが、マーサさんや僕の作る料理には及ばないと凄くショックを受けていた。
リアムさんに出来る事はないかと考えながら竈に火をつけようと準備するが……火口を切らしている事に気付く。
「あ……火口は昨日で使いきっちゃってたっけ……」
火口をもらいにお屋敷へ戻らないと……。
そう思っていると、リアムさんが「どうした?」と声をかけてくる。
「すみません……。竈に火を付けようと思ったんですが火口を切らしてるの忘れてて……。今からお屋敷にもらいに行ってきますね」
「………竈に火をつければいいのか?」
リアムさんは竈の前へとやってくると腰を屈め人差し指を薪の方へと近づけると……ボッと炎が上がる。
「これでいいか?」
リアムさんは普通の顔して僕に尋ねてくるが……僕は目の前で起こった出来事に驚いて固まってしまう。
リアムさんは簡単に魔法を使って火を起こしたが……魔法はそんな簡単に使えるものではない。
無詠唱で魔法が使えるなんて上級の魔導師でも難しいのに……ましてや貴重な魔法を竈に火を付けるために使うなんて……
「リアムさん……。魔法が使えるんですか……?」
「あぁ……これか? ずっと暇だったから何か俺にも出来る事はないかと色々と考えていたんだ。火起こしは時間がかかるし大変そうだったから俺にも手伝えないかなぁ~と、考えていたら指先から火がでたんだ! 不思議だろ?」
リアムさんはアハハと屈託のない笑顔を向けてくるが……魔法はそんな簡単に使えないんですよ!!
ツッコミたいけど驚きすぎて何も言えない僕に、リアムさんはさらに追い討ちをかけてくる。
「他にもこんな事ができるようになったんだぞ!」
リアムさんはそう言って手の平から水を出したり、風を起こし「涼しいだろ?」なんて言いながら楽しそうに魔法を披露してくれる。
「リアムさん! ストーーップ!! 魔法が……魔法が……勿体ないですぅぅ!!」
僕の大声に少し驚きリアムさんは風を起こしていた手を止め、シュンとした表情を見せる。
「すまない……。自分に出来ることが見つかり嬉しさのあまり調子に乗ってしまったな……。迷惑をかけてすまない……」
「あ、えっと……違うんですリアムさん。怒っている訳ではないので謝らないで下さい……。ただ、魔法はそんな簡単に使えるものではないんです。魔法を使うと魔力が減って体が疲れてしまうんです。だからリアムさんが心配で……」
「そうなのか……。俺の心配をしてくれていたんだな……。ココ、ありがとう。だが、心配はいらないぞ。朝からずっと魔法を使っていたが疲れなどはまったく感じない。どうやら俺は魔力が多いようだな。さぁ、遊んでいたら夕食の時間が遅くなってしまったな。俺も手伝うよ」
リアムさんは何もなかったかのように僕の隣で夕食の準備を手伝ってくれる。
僕はと言うと、リアムさんが見せてくれた魔法に衝撃を受けつつ、もしかして僕はとんでもない人に怪我を負わせ記憶まで奪ってしまったのではないかと心の中で冷や汗をかいた………。
そして、次の日から火起こしはリアムさんの担当になった。
「おかえり、ココ」
お兄さんことリアムさんがやってきて三日が経つ。
リアムさんの頭の傷は順調に治り包帯を付けなくてもいい状態まで改善している。
ただ……記憶の方はさっぱりで、今だに自分が誰なのかすら分からない……。
僕は仕事から帰ってくると食事の準備を始め、リアムさんも食器を準備してくれたりと手伝いをしてくれる。
傷も治ったリアムさんは、ずっと小屋で僕の帰りを待っているだけの生活に退屈をしているようだ……。
「なぁココ……何か俺にも出来ることはないか……? 料理以外で……」
「そうですねぇ……」
一度リアムさんが僕のためにと料理を作ってくれたのだが……ちょっぴり残念な味だった。食べられない程ではなかったのだが、マーサさんや僕の作る料理には及ばないと凄くショックを受けていた。
リアムさんに出来る事はないかと考えながら竈に火をつけようと準備するが……火口を切らしている事に気付く。
「あ……火口は昨日で使いきっちゃってたっけ……」
火口をもらいにお屋敷へ戻らないと……。
そう思っていると、リアムさんが「どうした?」と声をかけてくる。
「すみません……。竈に火を付けようと思ったんですが火口を切らしてるの忘れてて……。今からお屋敷にもらいに行ってきますね」
「………竈に火をつければいいのか?」
リアムさんは竈の前へとやってくると腰を屈め人差し指を薪の方へと近づけると……ボッと炎が上がる。
「これでいいか?」
リアムさんは普通の顔して僕に尋ねてくるが……僕は目の前で起こった出来事に驚いて固まってしまう。
リアムさんは簡単に魔法を使って火を起こしたが……魔法はそんな簡単に使えるものではない。
無詠唱で魔法が使えるなんて上級の魔導師でも難しいのに……ましてや貴重な魔法を竈に火を付けるために使うなんて……
「リアムさん……。魔法が使えるんですか……?」
「あぁ……これか? ずっと暇だったから何か俺にも出来る事はないかと色々と考えていたんだ。火起こしは時間がかかるし大変そうだったから俺にも手伝えないかなぁ~と、考えていたら指先から火がでたんだ! 不思議だろ?」
リアムさんはアハハと屈託のない笑顔を向けてくるが……魔法はそんな簡単に使えないんですよ!!
ツッコミたいけど驚きすぎて何も言えない僕に、リアムさんはさらに追い討ちをかけてくる。
「他にもこんな事ができるようになったんだぞ!」
リアムさんはそう言って手の平から水を出したり、風を起こし「涼しいだろ?」なんて言いながら楽しそうに魔法を披露してくれる。
「リアムさん! ストーーップ!! 魔法が……魔法が……勿体ないですぅぅ!!」
僕の大声に少し驚きリアムさんは風を起こしていた手を止め、シュンとした表情を見せる。
「すまない……。自分に出来ることが見つかり嬉しさのあまり調子に乗ってしまったな……。迷惑をかけてすまない……」
「あ、えっと……違うんですリアムさん。怒っている訳ではないので謝らないで下さい……。ただ、魔法はそんな簡単に使えるものではないんです。魔法を使うと魔力が減って体が疲れてしまうんです。だからリアムさんが心配で……」
「そうなのか……。俺の心配をしてくれていたんだな……。ココ、ありがとう。だが、心配はいらないぞ。朝からずっと魔法を使っていたが疲れなどはまったく感じない。どうやら俺は魔力が多いようだな。さぁ、遊んでいたら夕食の時間が遅くなってしまったな。俺も手伝うよ」
リアムさんは何もなかったかのように僕の隣で夕食の準備を手伝ってくれる。
僕はと言うと、リアムさんが見せてくれた魔法に衝撃を受けつつ、もしかして僕はとんでもない人に怪我を負わせ記憶まで奪ってしまったのではないかと心の中で冷や汗をかいた………。
そして、次の日から火起こしはリアムさんの担当になった。
11
お気に入りに追加
1,041
あなたにおすすめの小説
嫌われ者の僕が学園を去る話
おこげ茶
BL
嫌われ者の男の子が学園を去って生活していく話です。
一旦ものすごく不幸にしたかったのですがあんまなってないかもです…。
最終的にはハピエンの予定です。
Rは書けるかわからなくて入れるか迷っているので今のところなしにしておきます。
↓↓↓
微妙なやつのタイトルに※つけておくので苦手な方は自衛お願いします。
設定ガバガバです。なんでも許せる方向け。
不定期更新です。(目標週1)
勝手もわかっていない超初心者が書いた拙い文章ですが、楽しんでいただければ幸いです。
誤字などがありましたらふわふわ言葉で教えて欲しいです。爆速で修正します。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
鈍感モブは俺様主人公に溺愛される?
桃栗
BL
地味なモブがカーストトップに溺愛される、ただそれだけの話。
前作がなかなか進まないので、とりあえずリハビリ的に書きました。
ほんの少しの間お付き合い下さい。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる