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本編
幼馴染と丈太郎
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週末の金曜日。
新規のプロジェクトも始まり、先週末の憂鬱さを忘れるように丈太郎は仕事に打ち込んだ。
企画案の提出も終わった丈太郎はうーんと背伸びをする。
オフィスを出ると、仕事帰りの街の人々の足元はいつもより軽やかで、その表情も明るい。
丈太郎も、街の皆と同じように久しぶりの幼馴染との再会に胸を躍らせていた。
丈太郎の幼馴染である星園聖は中学生まで家が隣同士で幼い頃から二人仲良く育った。
やんちゃだった丈太郎とは違い、聖はどちらかというと大人しく外で遊ぼうと丈太郎がよく家から引っ張っていた。
聖はやや引っ込み思案で、人見知りも強く、小学校時代は丈太郎以外に仲の良い友達はいなかった。
聖の引っ込み思案の原因は、その見た目だった。
父の祖母がアメリカ人で、聖はその血が強く出ていた。
真っ白な肌と薄茶色の栗毛色、瞳の色も薄くハニーブラウンの瞳をしていた。
大人から見れば可愛らしいその外見も、子供からするとからかうネタになってしまい、聖は友達にからかわれるたびに、自分の外見が嫌いだと丈太郎の前ではよく泣いていた。
丈太郎には、聖の髪の色も瞳の色を皆がからかう理由が分からなかった。
ただ、綺麗だということは確かだったので、丈太郎は聖に「ひーくんの髪も目も、すごくきれいだよ」と、満面の笑みで本心を告げる。
その言葉に聖は目を瞬かせて、涙目だった瞳が細く弧をえがき微笑んだ。
それから二人はいつも一緒だった。
中学に入ってからも、丈太郎の部活が休みの時は聖と二人でいることが多かった。
きっとこれからも、自分と聖は親友として一緒にいるのだろうと思っていたが、別れは突然だった。
聖の祖母が病気で介護が必要になり、聖たち家族はアメリカへと引っ越すことになった。
別れの日、丈太郎は寂しさをぐっと堪えて聖を空港まで見送りに行った。
聖はポロポロと泣きながら「沢山手紙を書くから」と丈太郎に告げた。
離れ離れになってから、聖から頻繁に手紙が届いた。
丈太郎もこまめに返事を返していく。
スマホを買ってもらってからは、連絡手段は手紙からメールへと変わっていく。
簡単に連絡が取り合えるようになったのは良かったが、それゆえに二人の距離は離れていった。
毎日交わしていたメールも、時差のせいで少しずつ間隔が空いていく。
そこに、高校受験も重なりスマホを親から没収されるといよいよ聖とは連絡を取ることがなくなった。
連絡といえば、互いの誕生日を祝うくらいになり、二人は違う国でそれぞれの人生を歩んでいった。
そんな二人が再び出会うことになり、丈太郎は懐かしさと嬉しさで久しぶりに楽しい週末を迎えていた。
先週の鬱屈した気持ちも、聖に会えると思うと吹き飛んだ。
聖から、仕事の拠点をアメリカから日本へと移し、十四年ぶりに日本へ戻ってくると連絡がきた時は驚いて咄嗟に電話をかけてしまった。
時差のことなど忘れて、昼間に電話をかけると眠そうな聖の声がスマホ越しに聞こえた。
昔と変わらず優しく柔らかな口調と、澄んだ声を聞いて懐かしさで胸がいっぱいになった。
時差に気付いて謝れば、丈太郎らしいと笑われた。
聖の帰国が決まってからは、毎日のように連絡を取り合った。
聖の仕事はフリーのSEで、基本在宅ワークなので住む場所をどうしようかと悩んでいたので、丈太郎は自分の住んでいる地域をすすめた。
何かあれば頼ってくれと、聖に声をかけると嬉しそうな声でよろしくと返事がきた。
昨日、引っ越しが済んだと聖から連絡が入り写メ付きで部屋の写真も送ってきた。
一DKのこじんまりした部屋には、まだ荷解きされていない荷物も写り込んでいた。
そして、今日も部屋の写メが送られてきたがソファーとテーブルが入り、ダンボールも姿を消し部屋らしくなっていた。
ーー引っ越し祝いに何か買っていこうかな。
待ち合わせまで、まだ少し時間があったので丈太郎は洒落た雑貨屋へと赴き、聖が喜びそうなものを選ぶ。
ーータオル……いや、近所に配るものを選んでんじゃないんだから。できれば、日常的に使ってもらえるものがいいよな……
ふと、目に入ってきたのはライティングされた美しいグラス。
グラスの底に向けて濃くなっていくブラウンの色は、聖の瞳の色とよく似ていた。
クリスタルガラスの美しさを際立たせるカットで、グラスは光をまとい美しく光っていた。
ブラウン色のグラスの隣には、やや黒みを帯びたペアのグラスも置いてあった。
値段はやや張るが、聖との久しぶりの再会を祝うのであればこれくらいがちょうどいいと思い、丈太郎はグラスを二つ手にとった。
新規のプロジェクトも始まり、先週末の憂鬱さを忘れるように丈太郎は仕事に打ち込んだ。
企画案の提出も終わった丈太郎はうーんと背伸びをする。
オフィスを出ると、仕事帰りの街の人々の足元はいつもより軽やかで、その表情も明るい。
丈太郎も、街の皆と同じように久しぶりの幼馴染との再会に胸を躍らせていた。
丈太郎の幼馴染である星園聖は中学生まで家が隣同士で幼い頃から二人仲良く育った。
やんちゃだった丈太郎とは違い、聖はどちらかというと大人しく外で遊ぼうと丈太郎がよく家から引っ張っていた。
聖はやや引っ込み思案で、人見知りも強く、小学校時代は丈太郎以外に仲の良い友達はいなかった。
聖の引っ込み思案の原因は、その見た目だった。
父の祖母がアメリカ人で、聖はその血が強く出ていた。
真っ白な肌と薄茶色の栗毛色、瞳の色も薄くハニーブラウンの瞳をしていた。
大人から見れば可愛らしいその外見も、子供からするとからかうネタになってしまい、聖は友達にからかわれるたびに、自分の外見が嫌いだと丈太郎の前ではよく泣いていた。
丈太郎には、聖の髪の色も瞳の色を皆がからかう理由が分からなかった。
ただ、綺麗だということは確かだったので、丈太郎は聖に「ひーくんの髪も目も、すごくきれいだよ」と、満面の笑みで本心を告げる。
その言葉に聖は目を瞬かせて、涙目だった瞳が細く弧をえがき微笑んだ。
それから二人はいつも一緒だった。
中学に入ってからも、丈太郎の部活が休みの時は聖と二人でいることが多かった。
きっとこれからも、自分と聖は親友として一緒にいるのだろうと思っていたが、別れは突然だった。
聖の祖母が病気で介護が必要になり、聖たち家族はアメリカへと引っ越すことになった。
別れの日、丈太郎は寂しさをぐっと堪えて聖を空港まで見送りに行った。
聖はポロポロと泣きながら「沢山手紙を書くから」と丈太郎に告げた。
離れ離れになってから、聖から頻繁に手紙が届いた。
丈太郎もこまめに返事を返していく。
スマホを買ってもらってからは、連絡手段は手紙からメールへと変わっていく。
簡単に連絡が取り合えるようになったのは良かったが、それゆえに二人の距離は離れていった。
毎日交わしていたメールも、時差のせいで少しずつ間隔が空いていく。
そこに、高校受験も重なりスマホを親から没収されるといよいよ聖とは連絡を取ることがなくなった。
連絡といえば、互いの誕生日を祝うくらいになり、二人は違う国でそれぞれの人生を歩んでいった。
そんな二人が再び出会うことになり、丈太郎は懐かしさと嬉しさで久しぶりに楽しい週末を迎えていた。
先週の鬱屈した気持ちも、聖に会えると思うと吹き飛んだ。
聖から、仕事の拠点をアメリカから日本へと移し、十四年ぶりに日本へ戻ってくると連絡がきた時は驚いて咄嗟に電話をかけてしまった。
時差のことなど忘れて、昼間に電話をかけると眠そうな聖の声がスマホ越しに聞こえた。
昔と変わらず優しく柔らかな口調と、澄んだ声を聞いて懐かしさで胸がいっぱいになった。
時差に気付いて謝れば、丈太郎らしいと笑われた。
聖の帰国が決まってからは、毎日のように連絡を取り合った。
聖の仕事はフリーのSEで、基本在宅ワークなので住む場所をどうしようかと悩んでいたので、丈太郎は自分の住んでいる地域をすすめた。
何かあれば頼ってくれと、聖に声をかけると嬉しそうな声でよろしくと返事がきた。
昨日、引っ越しが済んだと聖から連絡が入り写メ付きで部屋の写真も送ってきた。
一DKのこじんまりした部屋には、まだ荷解きされていない荷物も写り込んでいた。
そして、今日も部屋の写メが送られてきたがソファーとテーブルが入り、ダンボールも姿を消し部屋らしくなっていた。
ーー引っ越し祝いに何か買っていこうかな。
待ち合わせまで、まだ少し時間があったので丈太郎は洒落た雑貨屋へと赴き、聖が喜びそうなものを選ぶ。
ーータオル……いや、近所に配るものを選んでんじゃないんだから。できれば、日常的に使ってもらえるものがいいよな……
ふと、目に入ってきたのはライティングされた美しいグラス。
グラスの底に向けて濃くなっていくブラウンの色は、聖の瞳の色とよく似ていた。
クリスタルガラスの美しさを際立たせるカットで、グラスは光をまとい美しく光っていた。
ブラウン色のグラスの隣には、やや黒みを帯びたペアのグラスも置いてあった。
値段はやや張るが、聖との久しぶりの再会を祝うのであればこれくらいがちょうどいいと思い、丈太郎はグラスを二つ手にとった。
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