49 / 55
第一章
49話
しおりを挟む
次の日、朝食を食べに行くとアストさんの姿が見当たらない。
まだ寝ているのかな…?
そう思いながら朝食を済ませて温室に行き本を読みながらアストさんを待つが、アストさんが現れる事はなかった。
ガイルさん達との稽古が入っていても必ず顔を出してくれていたが…どうしたのだろうか?
少し気になってアストさんの部屋を訪ねドアをノックするが返事はない。
部屋のドアを開けていいのか迷っていると、ゴードンさんが通りかかる。
「ハイル様。どうされました?」
「あ、ゴードンさん…。今日はアストさんを見かけないのでどうしたのかなって思って…」
「あぁ…アスト様でしたら…昨日から発情期が始まってしまい離れの屋敷で過ごされています」
「発情期ですか…」
発情期という言葉は聞いた事はあるが…詳しい事は知らない僕は首を傾げる。
「はい。半獣に戻られて初めての発情期ですので離れで過ごしたいとアスト様からのご要望でして…」
「アストさんに会いに行っては…いけないんでしょうか?」
「そうですね…。きっとアスト様はハイル様を傷付けたくないので離れに籠もられたんだと思います。発情期の時には本能のままに動いてしまう傾向にあります。特に番を目の前にした時には欲望のまま襲いかかってしまう場合もあります…」
「そうなんですね…」
アストさんは僕の為に…。
ゴードンさんの話を聞いた僕は部屋へと戻り窓から離れの屋敷を見る。
発情期についてもゴードンさんから話を聞いたが、2日程で落ち着くだろうと言われた。
発情期のない僕にとっては未知の事だが…苦しんでいるアストさんを一人にしているのが少し辛い。
「僕はアストさんの番なのだから頼ってくれればいいのに…」
僕はアストさんのいる離れの屋敷を見ながらポツリと呟いた。
✳︎
アストさんが発情期を迎えて一週間程経つが…まだ離れの屋敷から出てこない。
流石に心配になった僕はガイルさんにアストさんのことを尋ねた。
「アストさんの発情期って…そんなに酷いんですか…?」
「あぁ…。私達の種族はそこまで強い発情期を迎えないんだがな…。アストは少し特殊なのかもしれない…。でも、いずれ発情期は終わるからもう少し待っててくれ」
「はい…」
ガイルさんはそう言うが、つまりはアストさんは発情期で苦しんでいるってことなんじゃないかな…
そう思うと僕はアストさんのことが心配でたまらなくなった。
そしてその晩…
僕は厨房から離れの鍵をとると、そのまま裏口の扉から離れの屋敷へと向かう。
満月の夜ということもあり辺りは思ったよりも明るい。
屋敷の扉の鍵を開け中へ入っていく。
薄暗い屋敷の中…アストさんのいる部屋を探す。
「ここ…かな…?」
閉じられた扉の前に立ちノブを回そうとした時、アストさんが僕に話しかけてくる。
「ハイル……頼む…来ないでくれ」
「アストさん…」
部屋の中から聞こえるアストさんの声は普段よりも弱々しく聞こえる。
「アストさん。僕に…できる事はないですか?」
「………大丈夫だ。」
「でも…なんだか苦しそうです…」
「心配かけて…すまない…。だが、今の俺は…君を目の前してしまうと理性が飛び…ただの獣になってしまう…。俺はハイルを傷つけたくない…」
苦しんでいるアストさんを前にして…放っておけるわけない…
「僕は…アストさんになら傷つけられてもいいです…」
僕はそう言って扉を開け…アストさんの元へ向かった。
まだ寝ているのかな…?
そう思いながら朝食を済ませて温室に行き本を読みながらアストさんを待つが、アストさんが現れる事はなかった。
ガイルさん達との稽古が入っていても必ず顔を出してくれていたが…どうしたのだろうか?
少し気になってアストさんの部屋を訪ねドアをノックするが返事はない。
部屋のドアを開けていいのか迷っていると、ゴードンさんが通りかかる。
「ハイル様。どうされました?」
「あ、ゴードンさん…。今日はアストさんを見かけないのでどうしたのかなって思って…」
「あぁ…アスト様でしたら…昨日から発情期が始まってしまい離れの屋敷で過ごされています」
「発情期ですか…」
発情期という言葉は聞いた事はあるが…詳しい事は知らない僕は首を傾げる。
「はい。半獣に戻られて初めての発情期ですので離れで過ごしたいとアスト様からのご要望でして…」
「アストさんに会いに行っては…いけないんでしょうか?」
「そうですね…。きっとアスト様はハイル様を傷付けたくないので離れに籠もられたんだと思います。発情期の時には本能のままに動いてしまう傾向にあります。特に番を目の前にした時には欲望のまま襲いかかってしまう場合もあります…」
「そうなんですね…」
アストさんは僕の為に…。
ゴードンさんの話を聞いた僕は部屋へと戻り窓から離れの屋敷を見る。
発情期についてもゴードンさんから話を聞いたが、2日程で落ち着くだろうと言われた。
発情期のない僕にとっては未知の事だが…苦しんでいるアストさんを一人にしているのが少し辛い。
「僕はアストさんの番なのだから頼ってくれればいいのに…」
僕はアストさんのいる離れの屋敷を見ながらポツリと呟いた。
✳︎
アストさんが発情期を迎えて一週間程経つが…まだ離れの屋敷から出てこない。
流石に心配になった僕はガイルさんにアストさんのことを尋ねた。
「アストさんの発情期って…そんなに酷いんですか…?」
「あぁ…。私達の種族はそこまで強い発情期を迎えないんだがな…。アストは少し特殊なのかもしれない…。でも、いずれ発情期は終わるからもう少し待っててくれ」
「はい…」
ガイルさんはそう言うが、つまりはアストさんは発情期で苦しんでいるってことなんじゃないかな…
そう思うと僕はアストさんのことが心配でたまらなくなった。
そしてその晩…
僕は厨房から離れの鍵をとると、そのまま裏口の扉から離れの屋敷へと向かう。
満月の夜ということもあり辺りは思ったよりも明るい。
屋敷の扉の鍵を開け中へ入っていく。
薄暗い屋敷の中…アストさんのいる部屋を探す。
「ここ…かな…?」
閉じられた扉の前に立ちノブを回そうとした時、アストさんが僕に話しかけてくる。
「ハイル……頼む…来ないでくれ」
「アストさん…」
部屋の中から聞こえるアストさんの声は普段よりも弱々しく聞こえる。
「アストさん。僕に…できる事はないですか?」
「………大丈夫だ。」
「でも…なんだか苦しそうです…」
「心配かけて…すまない…。だが、今の俺は…君を目の前してしまうと理性が飛び…ただの獣になってしまう…。俺はハイルを傷つけたくない…」
苦しんでいるアストさんを前にして…放っておけるわけない…
「僕は…アストさんになら傷つけられてもいいです…」
僕はそう言って扉を開け…アストさんの元へ向かった。
0
お気に入りに追加
939
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる