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本章
125話:不穏
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洗練された…とは言い難い自分の権力と財力を見せびらかすような部屋の中。
自分専用に作らせた眩く光る金色の椅子に腰掛けヴェルニ公爵は王宮へと忍ばせていた間者からの報告を待っていた。
どっしりと椅子に座りワイン片手に暫く待っていると一人の男が部屋へと入ってくる。
「ただ今戻りました」
「挨拶などはいらん。それで、噂は本当だったのか?」
「はい…。クリストファー王子の想い人と思われる人物が離れの塔に匿われています。警備にあたっている兵士達の間では『婚約者』ではないのかと言われている程に溺愛しているようです」
間者の男からの話を聞いていくうちにヴェルニの顔は醜く歪み持っていたワイングラスを床へと投げつける。
「ただでさえウィリアム王子がクラレンス家の醜い奴などと婚約して腹が立っているというのに…。クリストファー王子の婚約が決まればウィリアム王子の王位の座が遠のいてしまうではないか…」
本当ならばウィリアム王子と自分の息子の婚約を結びたかったが、クラレンス家の長男フレイとの恋仲を裂く事は叶わずヴェルニは苛立っていた。
そんな時に入ってきたクリストファー王子が離れの塔に恋人を囲っていると噂…。
クリストファー王子の事は見た目の醜さも気にくわないが特にヴェルニを苛立たせていたのは金稼ぎの邪魔をする事だった。
以前も、ルーニア国からの武器の密輸を行う為に国境付近の者達を洗脳の魔道具を使用し国境の警備を掌握しようとしたが途中でバレてしまい、駒として使っていたサンクチュアリは皆捕まってしまった。
サンクチュアリのメンバーとは魔法契約を結びヴェルニの事を絶対に話さないようにしていたおかげで自分の事を疑う者はいなかったが、以前にも増して動きにくくなっていた。
ルーニア国は武器の輸出が盛んで、それだけで富を築いている。ヴェルニはルーニア国との橋渡しを自分が担うことで多額の仲介料を手にする事ができ、また、自分の後ろ盾としてルーニア国をチラつかせれば自分に逆らう者などいなくなり…実質この国を自分の物にできると浅はかにも考えていた。
その為にもルーニア国からの信頼を得なければいけないのに…望み通りにいかない現実にヴェルニは腹を立てていた。
「それで…そのクリストファー王子の想い人はどのような見た目なのだ」
「噂によりますと可憐な美少年だとか…」
「あんな醜い王子にそんな美少年が懐くはずもない。どうせ無理矢理囲い込んでいるのだろう…。そうだな…そういえばサリュイ様が新しい玩具が欲しいと言っていたな…。王子の想い人か…これはいい贈り物になるかもしれない」
ヴェルニはこれから起こる事を想像しゲラゲラと下品な笑い声をあげたるんだ腹を揺らす。
それから数日後、クリスの元にヴェルニ公爵家からの社交界への招待状が届いたのだった。
自分専用に作らせた眩く光る金色の椅子に腰掛けヴェルニ公爵は王宮へと忍ばせていた間者からの報告を待っていた。
どっしりと椅子に座りワイン片手に暫く待っていると一人の男が部屋へと入ってくる。
「ただ今戻りました」
「挨拶などはいらん。それで、噂は本当だったのか?」
「はい…。クリストファー王子の想い人と思われる人物が離れの塔に匿われています。警備にあたっている兵士達の間では『婚約者』ではないのかと言われている程に溺愛しているようです」
間者の男からの話を聞いていくうちにヴェルニの顔は醜く歪み持っていたワイングラスを床へと投げつける。
「ただでさえウィリアム王子がクラレンス家の醜い奴などと婚約して腹が立っているというのに…。クリストファー王子の婚約が決まればウィリアム王子の王位の座が遠のいてしまうではないか…」
本当ならばウィリアム王子と自分の息子の婚約を結びたかったが、クラレンス家の長男フレイとの恋仲を裂く事は叶わずヴェルニは苛立っていた。
そんな時に入ってきたクリストファー王子が離れの塔に恋人を囲っていると噂…。
クリストファー王子の事は見た目の醜さも気にくわないが特にヴェルニを苛立たせていたのは金稼ぎの邪魔をする事だった。
以前も、ルーニア国からの武器の密輸を行う為に国境付近の者達を洗脳の魔道具を使用し国境の警備を掌握しようとしたが途中でバレてしまい、駒として使っていたサンクチュアリは皆捕まってしまった。
サンクチュアリのメンバーとは魔法契約を結びヴェルニの事を絶対に話さないようにしていたおかげで自分の事を疑う者はいなかったが、以前にも増して動きにくくなっていた。
ルーニア国は武器の輸出が盛んで、それだけで富を築いている。ヴェルニはルーニア国との橋渡しを自分が担うことで多額の仲介料を手にする事ができ、また、自分の後ろ盾としてルーニア国をチラつかせれば自分に逆らう者などいなくなり…実質この国を自分の物にできると浅はかにも考えていた。
その為にもルーニア国からの信頼を得なければいけないのに…望み通りにいかない現実にヴェルニは腹を立てていた。
「それで…そのクリストファー王子の想い人はどのような見た目なのだ」
「噂によりますと可憐な美少年だとか…」
「あんな醜い王子にそんな美少年が懐くはずもない。どうせ無理矢理囲い込んでいるのだろう…。そうだな…そういえばサリュイ様が新しい玩具が欲しいと言っていたな…。王子の想い人か…これはいい贈り物になるかもしれない」
ヴェルニはこれから起こる事を想像しゲラゲラと下品な笑い声をあげたるんだ腹を揺らす。
それから数日後、クリスの元にヴェルニ公爵家からの社交界への招待状が届いたのだった。
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