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初めてのお酒と失恋……

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大学二年の冬。
俺はようやく20歳の誕生日を迎え大人の仲間入りをする。

誕生日も直史先輩(と苳也先輩)に祝ってもらい幸せな誕生日を迎える事ができた。


「なぁ、チカ。今年のクリスマスは少し早めに祝わないか?」
「はい。いいですよ! バイトもイブとクリスマスは出なきゃいけないですから……皆の予定が空いてるのは23日ですね!」

シフト表を見ながら俺はクリスマスの予定を立てる。
高校時代から毎年クリスマスは直史先輩と苳也先輩の三人で小さなパーティーを開くのが習慣になっている。

「場所は……俺の部屋にするか?」
「え? いいんですか?」
「あぁ。宅飲みの方がゆっくりできるだろ」
「はいっ! じゃあ、俺買い出しやりますね! チキンとポテトにピザに……お酒も準備しておきます!」
「ハハ。気合入ってるなぁ~」

うぅ……久しぶりの直史先輩の部屋……。
高まるっっ!!

最近直史先輩はプライベートが忙しいのか、なかなかサークルにも顔を出さないから遊べるだけでも凄く嬉しいのに、家にまで行けるなんて……。

嬉しくて飛び跳ねてしまいたい気持ちをグッと我慢して俺は23日がやってくるのを指折り数えて待った。


そして、やってきました23日当日っ!
街中はクリスマス一色であちらこちらでイルミネーションが光り輝く。

「苳也先輩! 次はお酒コーナーですよ!」
「へいへ~い」

大型スーパーへ苳也先輩を引き連れやってきた俺はルンルン気分で買い物をしていく。
チキンにピザ……あ、ポテトもレジ行く前に買いにいかないといけないなぁ~

「おい、千景。酒……そんなに買うのか?」
「え? お酒これだけで足りますか?」

カゴいっぱいにビールや酎ハイを入れてはみたが、まだお酒を解禁していない俺には量が分からず、とりあえず沢山詰め込んでみたけど……やっぱ多いのかな?

「まぁ……腐る物でもねーし、残っても直史の家に置いてけばいいからいいけど……。お前、すげー浮かれてるけどそんなに楽しみなのか?」
「はい!」

俺の返事に苳也先輩は小さくため息を吐いて「男三人で虚しくクリスマス会だぞ……」と呟いていたが、嫌なら来なくても……と、口に出そうになったが、今喧嘩したら楽しい楽しい直史先輩とのクリスマス会が台無しになりそうなので大人な俺は笑ってスルーした。

買い出しを終えて両手に荷物を持ち直史先輩のマンションへと到着する。マンションのオートロックを外してもらい、103号室へと向かえば、直史先輩が玄関前まで出てきてくれていた。

「買い出しありがとな~。おぉ……結構買ったな」
「はい! 久しぶりに皆で集まれるって思ったら色々と買い込んじゃいました……」
「ハハ。そうだな、今日は楽しまなくちゃいけないからな」

ヘヘッと笑うと直史先輩も笑顔を向けてくれる。

「おい……さみーんだけど……。早く部屋入ろうぜ」
「あぁ、そうだね!」

苳也先輩に急かされ直史先輩の部屋の中へ……。
直史先輩の部屋は整理整頓されているシンプルな部屋だ。それに、大好きなバンドのCDやレコードも飾られていてなんだか凄くお洒落に感じる。

机に買ってきたチキンやピザを並べていけば、パーティーらしくなりワクワクしてくる。
それに、初めて飲むお酒も楽しみの一つだ。

「じゃあ、とりあえず乾杯しようぜ~。飲み物持ったか~?」
「あ、まだです!」
「千景~早くしろよな~」

ビール片手に早く飲ませろと急かしてくる苳也先輩にムッとしていると、直史先輩が俺に缶チューハイを渡してくれる。

「チカはこれ飲みな。これ、アルコール度数も低いしジュースみたいに飲みやすいから初めて飲むにはピッタリだよ」
「ありがとうございます……直史先輩……」

直史先輩マジで優しい~。
ほんと、どこかの誰かさんに先輩の爪の垢煎じて飲ませたいくらいだ……。

直史先輩に選んでもらった桃の缶チューハイを手にし乾杯する。桃の酎ハイは甘くて飲みやすくて凄く美味しかった。
いつものジュース感覚でグビグビと飲んでいくと、なんだか頭がポヤポヤしてきて気持ち良くなってくる。

みんなこの感覚が気持ちよくてお酒を飲むのかなぁ~って思った。

お酒が回り酔っ払い始めると、普段は楽しくない苳也先輩の話もなんだか面白く感じてケラケラと笑ってしまう。
何もかもが楽しくて最高~!って、なっていた時……ほろ酔いの直史先輩が衝撃的な言葉を発する。

「あのさ~実は俺、恋人ができたんだ~」
「「………はぁ!?」」

思わず苳也先輩とハモってしまうほどの衝撃が走り、一気に酔いが冷めた俺はショックで言葉が出てこない……。

「え? ちょっと待て直史……。お前いつの間に……」
「つい最近付き合いだしたんだ……。報告するの遅くなってごめん」

申し訳なさそうに頭を掻く直史先輩……。

直史先輩に恋人……
おめでとうって言わなきゃ……
幸せになって下さいねって……言わないと……

胸がぎゅぅぅっと締め付けられ、伝えたい言葉を直史先輩に言ってしまうも涙が溢れてしまいそうだった……。

どうにもならない俺は近くにあった缶チューハイを手に取ると男らしく立ち上がる。

「おめでたいので、千景、一気飲みします!!」
「あっ! バカ! やめとけ! それアルコール度数高いやつだぞ!」

苳也先輩の制止する声など無視してヤケになった俺は腰に手を当て、缶チューハイを一気飲みする。


最初に飲んだ酎ハイよりもアルコールの味が強くて喉と胃がカァァァっと熱くなって……ぼんやりとする意識の中、俺は考える事をやめた。
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