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【番外編】〜嫌われ者の兄はやり直しの義弟達の愛玩人形になる〜
笑顔と涙 ① 〜リエンSide〜
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「シャルル兄様~! あ~そ~ぼ!」
声をかけるとシャルル兄様は少し間を開けて頷く。
二度目の人生が始まってから、二年が経ちすっかり毒気の抜けたシャルル兄様。
今では僕たちのいいなりで、反抗することはほとんどない。
本人が嫌だと思っても、誰も味方がいない状況に色々と諦めたんだろう。
まぁ、一度目も一人じゃ何もできなくて、領民に嫌われ妻にも愛想をつかされて、最後は利用されるだけ利用されて奴隷にまで落ちた可哀想な兄様。
そんな可哀想な兄様に、手を差し伸べてあげるのは僕たちくらいだった。
「ねぇ、シャルル兄様何して遊びたい?」
「なんでもいいけど」
「じゃあ、かくれんぼはどう?」
「……かくれんぼは……嫌だ」
兄様はあの時のことを思い出したのか、首を小さく横にふる。
「えー。もう、シャルル兄様は我儘なんだからぁ~」
「ごめん……」
素直に謝るシャルル兄様の姿を見ていると、一度目の面影は見当たらない。
ジェイド兄様と僕によって従順になるように躾けられた兄様は、今では僕たちの可愛いペットだ。
ちょっとしたことでも不安な表情を見せ、機嫌を伺うシャルル兄様は、一度目の僕たちを見ているようで面白い。
シャルル兄様も、こんな気持ちで僕たちをいじめていたんだと思いながら兄様に微笑みかけ、今日も楽しい一日が始まる。
「じゃあ、兄様のやりたいことして遊ぼうよ。兄様は何がしたいの?」
「……湖に散策に行きたい」
「湖……?」
兄様から出た『湖』というフレーズに、首にかけていたペンダントを握りしめる。
一度目の時は、無くしてしまったペンダントを湖に捨てられ、僕は泣きながら湖に飛び込んだ。
冷たくて仄暗い湖の底に沈んだ、かけがえのない僕と父様の思い出。
そんな場所に行きたいなんて……やっぱりシャルル兄様は何も変わっていないんだな。
「いいよ。でも、今日はあまり天気も良くないから別の日に行こうよ。湖に向かうなら準備もしなくちゃね」
そう言って笑いかければ、兄様も顔を綻ばせる。
楽しい楽しい兄様とお出かけ。
しっかりと心に残る思い出を作ってあげないと。
そう思い、僕は笑みを深くした。
それから二日後。
兄様と共に、北のはずれにある湖へと向かう。
母様に兄様と出かけてくると言うと、お昼に食べてとランチボックスを手渡してくれる。
シャルル兄様に手を引かれ、湖へと辿り着くと美しい景色が広がる。
青々と芝生のように生えた草原の奥にコバルトブルーの大きな湖が見える。
「すごく綺麗だね、兄様……」
「そうだろ。とても綺麗は場所だから、リエンも気にいるかなと思ったんだ」
気恥ずかしそうに照れ笑いを見せる兄様。
その笑みが僕のペンダントを投げ捨てた時と重なり、引き攣りながら笑顔を向けた。
それから、兄様が湖の周りを案内してくれて母様の作ったランチボックスを開く。
僕の大好きなサンドイッチや果物、それに兄様の好きなパンも入っている。
二人で母様の用意してくれたサンドイッチを口にすると、兄様は水色の瞳を輝かせ顔を綻ばせる。
「リエン、美味しいな」
「うん、そうだね……」
食事中も楽しそうに学園の話をしたり学友との日常を話してくれる。
僕が学園にきたら自分が色々と案内すると言ってくる。
キラキラした笑顔を振りまく兄様。
生まれ変わったかのように、従順でいい子になった兄様。
けれど、その笑顔は本物なのだろうか?
僕は兄様に試練を与えることにした。
声をかけるとシャルル兄様は少し間を開けて頷く。
二度目の人生が始まってから、二年が経ちすっかり毒気の抜けたシャルル兄様。
今では僕たちのいいなりで、反抗することはほとんどない。
本人が嫌だと思っても、誰も味方がいない状況に色々と諦めたんだろう。
まぁ、一度目も一人じゃ何もできなくて、領民に嫌われ妻にも愛想をつかされて、最後は利用されるだけ利用されて奴隷にまで落ちた可哀想な兄様。
そんな可哀想な兄様に、手を差し伸べてあげるのは僕たちくらいだった。
「ねぇ、シャルル兄様何して遊びたい?」
「なんでもいいけど」
「じゃあ、かくれんぼはどう?」
「……かくれんぼは……嫌だ」
兄様はあの時のことを思い出したのか、首を小さく横にふる。
「えー。もう、シャルル兄様は我儘なんだからぁ~」
「ごめん……」
素直に謝るシャルル兄様の姿を見ていると、一度目の面影は見当たらない。
ジェイド兄様と僕によって従順になるように躾けられた兄様は、今では僕たちの可愛いペットだ。
ちょっとしたことでも不安な表情を見せ、機嫌を伺うシャルル兄様は、一度目の僕たちを見ているようで面白い。
シャルル兄様も、こんな気持ちで僕たちをいじめていたんだと思いながら兄様に微笑みかけ、今日も楽しい一日が始まる。
「じゃあ、兄様のやりたいことして遊ぼうよ。兄様は何がしたいの?」
「……湖に散策に行きたい」
「湖……?」
兄様から出た『湖』というフレーズに、首にかけていたペンダントを握りしめる。
一度目の時は、無くしてしまったペンダントを湖に捨てられ、僕は泣きながら湖に飛び込んだ。
冷たくて仄暗い湖の底に沈んだ、かけがえのない僕と父様の思い出。
そんな場所に行きたいなんて……やっぱりシャルル兄様は何も変わっていないんだな。
「いいよ。でも、今日はあまり天気も良くないから別の日に行こうよ。湖に向かうなら準備もしなくちゃね」
そう言って笑いかければ、兄様も顔を綻ばせる。
楽しい楽しい兄様とお出かけ。
しっかりと心に残る思い出を作ってあげないと。
そう思い、僕は笑みを深くした。
それから二日後。
兄様と共に、北のはずれにある湖へと向かう。
母様に兄様と出かけてくると言うと、お昼に食べてとランチボックスを手渡してくれる。
シャルル兄様に手を引かれ、湖へと辿り着くと美しい景色が広がる。
青々と芝生のように生えた草原の奥にコバルトブルーの大きな湖が見える。
「すごく綺麗だね、兄様……」
「そうだろ。とても綺麗は場所だから、リエンも気にいるかなと思ったんだ」
気恥ずかしそうに照れ笑いを見せる兄様。
その笑みが僕のペンダントを投げ捨てた時と重なり、引き攣りながら笑顔を向けた。
それから、兄様が湖の周りを案内してくれて母様の作ったランチボックスを開く。
僕の大好きなサンドイッチや果物、それに兄様の好きなパンも入っている。
二人で母様の用意してくれたサンドイッチを口にすると、兄様は水色の瞳を輝かせ顔を綻ばせる。
「リエン、美味しいな」
「うん、そうだね……」
食事中も楽しそうに学園の話をしたり学友との日常を話してくれる。
僕が学園にきたら自分が色々と案内すると言ってくる。
キラキラした笑顔を振りまく兄様。
生まれ変わったかのように、従順でいい子になった兄様。
けれど、その笑顔は本物なのだろうか?
僕は兄様に試練を与えることにした。
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