上 下
66 / 98
【番外編】二度目の人生番外編

隣国、ミャーム国編 ⑦

しおりを挟む
喉の渇きで目が覚める。
しっとりと汗ばんだ肌が少し気持ち悪くて、ベッドの中で体を動かすと、二人の腕が俺を離してくれない。
すやすやと眠る二人の顔は、昨日とは違い穏やかなものだった。
なんとか二人の腕から逃げ出し、ベッドに腰掛け太ももを見れば……沢山の赤い鬱血痕が目に入る。

「うわぁ……。着替える時どうしよう……」

どうしようと考えたところで、どうしようもないので大きくため息を吐いて諦めることにする。
窓の方を見れば、空は薄明るくなっている。
シャツを羽織り、バルコニーに続く窓を開くと、柔らかな風が入ってくる。

「綺麗……」

バルコニーからは城の庭園が見え、綺麗な花々が朝日の光を浴び輝いている。そよ風に揺られる、大きな木々の葉の音を聞きながら、目一杯空気を吸い込み深呼吸する。
この綺麗な風景を二人と一緒に見たいと思った俺は、眠るジェイドとリエンのもとへ。

「ジェイド、リエン。朝焼けがすっごく綺麗だぞ」
「ん……。もぅ起きたの兄さまぁ、おはよ~」

リエンは眠い目を擦りのそりと起き上がる。朝に弱いジェイドは、しかめ面してまた布団の中に。

「おはよう、リエン。景色が綺麗だったから、一緒に見たいなって思ってさ」
「そうなんだ。ジェイド兄様は……これは起きないね」
「だな」

大きな体を丸めるジェイドを見て、くすくすと二人で笑う。リエンとともにバルコニーへ。
太陽はさっきよりも顔を出し、オレンジの光が強くなる。

「うわぁ、すっごく綺麗だね~」
「そうだろ。こんなに綺麗な景色を一人で見るのは勿体ないなって思って、寝てる二人を起こしちゃったんだ」
「そっか~。兄様、起こしてくれてありがとう」

リエンは背後から俺を抱きしめると頬を擦り寄せてくれる。リエンの柔らかな癖っ毛が頬に触れて少しくすぐったい。
リエンに抱きしめられたまま、太陽がのぼる様子を二人で見つめ、素敵な朝のひと時を過ごした。

しばらくして、ジェイドが目を覚ます。
リエンが朝の様子を自慢げに話すと、ちょっぴり不機嫌な顔をして「明日は絶対に起こして下さいね」と、念押ししてくる。
子どものようなジェイドの姿に、思わず笑いが込み上げてしまった。

それから、執事長が部屋へ訪れると約束していたノア王子との朝食に誘われる。
ジェイドとリエンに行ってくると手を振り部屋を出ると、まずは着替えに。
用意されていた服に袖を通していく。服は、昨日着ていたものより少し落ち着いた雰囲気だ。
淡い水色のゆったりとした襟のない長袖のシャツを羽織る。ズボンも動きやすい軽い感じのもので、肌触りもすごくいい。
最後に長くなった髪を結われると準備が終わる。

そして、執事長が連れて行ってくれたのは城の庭園。手がかけられた庭を歩いていくと、木々に囲まれたガゼボが見える。
その中には机と椅子が並べられ、椅子に座る二つの人影が見える。小さな人影がこちらに気付くと、大きく手を振る。

「マエル国王、ノア王子、お待たせしました」
「私たちも今来たところだ。さぁ、座ってくれ」

マエル国王に促され、席に着くとノア王子は笑顔でこちらを見てくる。

「シャルル様、今日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします、ノア王子」

二人に挨拶をすませると、朝食が運ばれる。
ふんわりとした蒸しパンにスープ、スパイスの効いた具沢山のオムレツなどミャーム国の朝食はどれも新鮮で美味しかった。
ノア王子は俺の様子をチラチラと見てくるので、美味しいですよと微笑めば微笑み返してくれる。
食事が終わると、お茶が振る舞われる。

「ノア王子、今日は行きたい場所があるとおっしゃっていましたね」
「はい。シャルル様に見せたい素敵な場所があるんです」
「そうですか。それは楽しみですね」

エヘヘと微笑むノア王子。

「今日は父様も一緒に過ごしてくれるので、すごく嬉しいです」

ノア王子の言葉に、マエル国王へ視線を向けると目を細め笑みを深くする。

「今日はよろしく頼むよ、シャルル殿」
「は、はい!」

国王の微笑みに俺は少し緊張してしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

良かれと思ってうっかり執事をハメてしまった

天災
BL
 良かれと思ってつい…やってしまいました。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

魔王討伐後に勇者の子を身篭ったので、逃げたけど結局勇者に捕まった。

柴傘
BL
勇者パーティーに属していた魔術師が勇者との子を身篭ったので逃走を図り失敗に終わるお話。 頭よわよわハッピーエンド、執着溺愛勇者×気弱臆病魔術師。 誰もが妊娠できる世界、勇者パーティーは皆仲良し。 さくっと読める短編です。

親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺

toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染) ※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。 pixivでも同タイトルで投稿しています。 https://www.pixiv.net/users/3179376 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/98346398

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

悪魔の子と呼ばれ家を追い出されたけど、平民になった先で公爵に溺愛される

ゆう
BL
実の母レイシーの死からレヴナントの暮らしは一変した。継母からは悪魔の子と呼ばれ、周りからは優秀な異母弟と比べられる日々。多少やさぐれながらも自分にできることを頑張るレヴナント。しかし弟が嫡男に決まり自分は家を追い出されることになり...

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。