嫌われ者の俺はやり直しの世界で義弟達にごまをする

【番外編】ジェイドとリエンのやり直し

シャルルの悩み ②

ずっと心の中のもやもやが晴れないまま時間だけが過ぎていき、今日の授業が全て終わる。
ジェイドの学年はまだ授業が残っていて、今日は一緒に帰る予定ではなかったが、朝イザークからかけられた言葉にジェイドが傷ついていないか気になり俺はジェイドの授業が終わるまで馬車の中で待つ事にした。

ジェイドの学年の授業が終わったのか、白と黒のストライプの生徒が走っていくのが見える。しばらくするとジェイドも馬車に乗ってきて、俺の姿を見て少し驚いていた。
早く座るように促し、初めての学園がどうだったか話を聞けば友達ができ楽しかったと笑顔を見せてくれる。
その笑顔にホッと胸を撫で下ろし、俺はイザークが件についてジェイドに謝る。
ジェイドはいつものように「大丈夫だ」と言ってくれるが……今日の朝のような事がこれからも続くのは俺としても辛い。

できれば二人が仲良くなってくれればいいんだが……。


そんな事を考えながら、屋敷へと帰り着き部屋で課題をしているとコンコンと部屋のドアを叩く音とリエンの声が聞こえる。
「入っていいよ」と、声をかければリエンが嬉しそうな顔をしてこちらへとやってくる。

「兄様！　お帰りなさい～」
「ただいまリエン。今日もいい子にしてたか？」
「うん！　兄様は課題しているの？」
「あぁ、これを終わらせたら遊んでやれるから少し待っててくれ」
「うんっ！」

リエンはそう言うと、俺の部屋の本棚から一冊本を取りソファーに座り読み始める。静かに俺の事を待ってくれるリエンのおかげで、課題もすんなりと終わる。

「リエン、お待たせ。課題も終わったから遊ぼうか」
「わ～い！」

リエンは俺の言葉にパッと顔を明るくして、駆け寄ってくる。いつものように抱きつかれるので、頭を撫でながら今日は何をして遊ぼうかと聞けば、リエンは学園での話を聞きたいと言ってくる。

「学園のことって……何を知りたいんだ？」
「ん～そうだなぁ～……色々気になるけど、シャルル兄様のお友達ってどんな人がいるの？」
「友達……」

パッと浮かんだイザークの顔、そしてエレン……。

「そうだな……皆いいやつばかりだよ」
「そうなんだ！　シャルル兄様は、友達と何して遊ぶの？」
「何って……一緒に勉強したり、色んな事を話したりするかな」
「へぇ～。友達っていいね。僕も学園に行ったらシャルル兄様みたいな優しい人が友達になってくれるかな？」
「きっと……なってくれるよ……」

リエンの言葉に胸がチクリとする。
学園での俺はリエンが思っているような人物ではない……。
俺は……優しくなんかない……。

「兄様……？　大丈夫？」

俺の表情が浮かないのが気になったのか、リエンは心配そうな顔で俯く俺を覗き込む。

「大丈夫だよ……」

俺は今できる精一杯の笑顔で答えると、リエンは俺をぎゅっと抱きしめてくれる。

「シャルル兄様……。辛い事があったら僕を頼っていいんだよ。僕がシャルル兄様を守るから……」

真剣な表情でそんな事を言ってくるリエンに驚き目を瞬かせてしまう。何故だか小さなリエンがとても大人に見えて、本当に俺の事を守ってくれそうな雰囲気に少し安心感を覚えてしまう。

一体どこでそんな言葉を覚えてきたんだろうか？
絵本に出てくる王子様のようなリエンに思わず笑みが溢れる。

「ありがとうリエン」

そう言って抱きしめると、リエンはいつものように可愛らしい笑みを浮かべた。