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【番外編】ジェイドとリエンのやり直し
ジェイドとリエンのやり直しの人生 ③
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二週間はあっという間に過ぎていき……。
ウォールマン家へ向かう当日を迎える。
早く兄さんに会いたくて急かすように荷物を馬車へ詰め込んでいき、出発時間よりも早く準備が終わる。
「ふふ。ジェイドったらそんなに急いで……新しい家に行くのがよっぽど楽しみなのね」
「はい。早く父さんと兄さんに会いたいです」
「そうね。さぁ、荷物も積み終わった事だし、出発しましょうか」
ウォールマン家へ向かう道中も母さんは楽しそうに父さんの話や新しい家の話をしてくれる。
リエンも私もシャルル兄さんに会える事に胸を膨らまし、会ったら何と話そうか考えているとあっという間に時間は過ぎていき……懐かしのウォールマン家へと到着する。
小さな体に戻り見上げるウォールマン家の大きな屋敷はやはり立派で……前回の時はこの大きな屋敷がやけに怖く感じたのを思い出す。
「やっと戻ってきたな……」
「うん。そうだね」
リエンに小声で話しかければ嬉しそうな笑顔を浮かべる。
私達が到着し、しばらくすると玄関の扉が開き父さんが現れる。だが、その後ろにいるはずのシャルル兄さんの姿は見当たらない。
「フロル。長旅お疲れ様。それに……ジェイドとリエンも遠いところからよく来てくれたな」
父さんはそう言うと私達の方へと近づき頭を撫でてくれる。父さんに挨拶を返していると母さんが少し不安そうに口を開く。
「ケインさん……。シャルルくんはどうしたの?」
シャルル兄さんの名前が出ると、父さんはバツが悪そうな顔を見せる。
「あぁ……ちょっとな……。出迎えに行くぞと声をかけたんだが、今は行きたくないと言って部屋に引きこもっているんだ」
「あら……。そうなの……。残念だけれどまたシャルルくんには改めて挨拶させてもらうわ」
「あぁ。すまないな……」
母さんはとても残念そうに眉を下げ笑顔を見せる。
前回は父さんもシャルル兄さんも私達が到着した際には出迎えてくれたが、さっそく前回とは違う展開になってしまった……。
それから部屋へと案内され、荷解きをしているとリエンが私の部屋へとやって来る。
「シャルル兄様……出迎えに来てくれなかったね」
「そうだな……。兄さんは私達に会いたくない程に疎ましく思っているんだろな」
「分かってはいたけど……やっぱりシャルル兄様に拒否されると思うと……しんどい」
リエンは大きなため息を吐きながら、ソファーへと腰をかけ脚を組む。
「まぁ、仕方ないさ。同じ屋敷に住んでいるんだ、少しずつ兄さんとの距離を縮めていけばいい」
「うん……そうだね! こんなんで弱気になってちゃダメだよね! よ~し。頑張るぞ~」
私も頭では分かってはいるが……やはりシャルル兄さんから嫌われているのではないかと考えると憂鬱な気持ちになってしまう。
リエンを励ます言葉を自分にも言い聞かせながら、シャルル兄さんが私達に託した言葉を思い出す。
『また俺を愛してくれるか?』
大丈夫ですよ兄さん。
どんな兄さんだって私は愛しますよ……。
荷解きが終わる頃には夕食時になり、母さんとリエンと一緒にダイニングへと向かう。
ダイニングで父さん達を待っていると、父さんと……その後にシャルル兄さんの姿が見える。
シャルル兄さんの姿を見た瞬間、胸は高鳴り今すぐにでも抱きしめたい衝動に駆られる。
会いたくて会いたくてたまらなかった愛しい人……。
父さんが私達の事を紹介している間、シャルル兄さんは俯き一向に顔を上げない。
父さんが再度兄さんの名前を呼んだ時、シャルル兄さんは私達をキッと睨みつけ口を開く。
「侯爵家の地位を欲しがる卑しい子爵出身の奴らと家族になんて……俺は絶対に嫌です」
シャルル兄さんは私達にそう告げると、踵を返しそのまま部屋から出て行ってしまう。
「なっ……! シャルル! なんて事を言うんだ! 謝りなさい! 待ちなさいシャルル!」
父さんはそんな兄さんの後を追いかけて行く……。
初めて聞くシャルル兄さんの憎悪に満ちた声と表情に、私とリエンはその場から動く事が出来なかった。
あまりの違いに別人ではないかと思う程の言葉や態度……。
母さんもどうしたらいいのか分からず困った表情を浮かべる。
これが……一度目のシャルル兄さん……。
言葉を交わす前に拒絶されるとは思ってもいなかった私とリエンはどうする事もできず……
シャルル兄さんとの感動の再会は最悪の幕開けとなってしまった。
ウォールマン家へ向かう当日を迎える。
早く兄さんに会いたくて急かすように荷物を馬車へ詰め込んでいき、出発時間よりも早く準備が終わる。
「ふふ。ジェイドったらそんなに急いで……新しい家に行くのがよっぽど楽しみなのね」
「はい。早く父さんと兄さんに会いたいです」
「そうね。さぁ、荷物も積み終わった事だし、出発しましょうか」
ウォールマン家へ向かう道中も母さんは楽しそうに父さんの話や新しい家の話をしてくれる。
リエンも私もシャルル兄さんに会える事に胸を膨らまし、会ったら何と話そうか考えているとあっという間に時間は過ぎていき……懐かしのウォールマン家へと到着する。
小さな体に戻り見上げるウォールマン家の大きな屋敷はやはり立派で……前回の時はこの大きな屋敷がやけに怖く感じたのを思い出す。
「やっと戻ってきたな……」
「うん。そうだね」
リエンに小声で話しかければ嬉しそうな笑顔を浮かべる。
私達が到着し、しばらくすると玄関の扉が開き父さんが現れる。だが、その後ろにいるはずのシャルル兄さんの姿は見当たらない。
「フロル。長旅お疲れ様。それに……ジェイドとリエンも遠いところからよく来てくれたな」
父さんはそう言うと私達の方へと近づき頭を撫でてくれる。父さんに挨拶を返していると母さんが少し不安そうに口を開く。
「ケインさん……。シャルルくんはどうしたの?」
シャルル兄さんの名前が出ると、父さんはバツが悪そうな顔を見せる。
「あぁ……ちょっとな……。出迎えに行くぞと声をかけたんだが、今は行きたくないと言って部屋に引きこもっているんだ」
「あら……。そうなの……。残念だけれどまたシャルルくんには改めて挨拶させてもらうわ」
「あぁ。すまないな……」
母さんはとても残念そうに眉を下げ笑顔を見せる。
前回は父さんもシャルル兄さんも私達が到着した際には出迎えてくれたが、さっそく前回とは違う展開になってしまった……。
それから部屋へと案内され、荷解きをしているとリエンが私の部屋へとやって来る。
「シャルル兄様……出迎えに来てくれなかったね」
「そうだな……。兄さんは私達に会いたくない程に疎ましく思っているんだろな」
「分かってはいたけど……やっぱりシャルル兄様に拒否されると思うと……しんどい」
リエンは大きなため息を吐きながら、ソファーへと腰をかけ脚を組む。
「まぁ、仕方ないさ。同じ屋敷に住んでいるんだ、少しずつ兄さんとの距離を縮めていけばいい」
「うん……そうだね! こんなんで弱気になってちゃダメだよね! よ~し。頑張るぞ~」
私も頭では分かってはいるが……やはりシャルル兄さんから嫌われているのではないかと考えると憂鬱な気持ちになってしまう。
リエンを励ます言葉を自分にも言い聞かせながら、シャルル兄さんが私達に託した言葉を思い出す。
『また俺を愛してくれるか?』
大丈夫ですよ兄さん。
どんな兄さんだって私は愛しますよ……。
荷解きが終わる頃には夕食時になり、母さんとリエンと一緒にダイニングへと向かう。
ダイニングで父さん達を待っていると、父さんと……その後にシャルル兄さんの姿が見える。
シャルル兄さんの姿を見た瞬間、胸は高鳴り今すぐにでも抱きしめたい衝動に駆られる。
会いたくて会いたくてたまらなかった愛しい人……。
父さんが私達の事を紹介している間、シャルル兄さんは俯き一向に顔を上げない。
父さんが再度兄さんの名前を呼んだ時、シャルル兄さんは私達をキッと睨みつけ口を開く。
「侯爵家の地位を欲しがる卑しい子爵出身の奴らと家族になんて……俺は絶対に嫌です」
シャルル兄さんは私達にそう告げると、踵を返しそのまま部屋から出て行ってしまう。
「なっ……! シャルル! なんて事を言うんだ! 謝りなさい! 待ちなさいシャルル!」
父さんはそんな兄さんの後を追いかけて行く……。
初めて聞くシャルル兄さんの憎悪に満ちた声と表情に、私とリエンはその場から動く事が出来なかった。
あまりの違いに別人ではないかと思う程の言葉や態度……。
母さんもどうしたらいいのか分からず困った表情を浮かべる。
これが……一度目のシャルル兄さん……。
言葉を交わす前に拒絶されるとは思ってもいなかった私とリエンはどうする事もできず……
シャルル兄さんとの感動の再会は最悪の幕開けとなってしまった。
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