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【番外編】ジェイドとリエンのやり直し
ジェイドとリエンのやり直しの人生 ②
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リエンの突然の訪室と発言に返す言葉が見つからずに黙ったまま固まっていると、リエンは「あれ?」と首を傾げる。
「もしかして……ジェイド兄様は変わらないまま? 僕だけこっちに来ちゃったんだ……。じゃあ……シャルル兄様は僕だけのもの……? どうしよう……毎日シャルル兄様を独り占めできるなんて夢みたい……」
「リエン。シャルル兄さんはお前だけのものじゃない」
私が黙っていれば好き放題言い放つリエンに釘を刺せば「なんだ~やっぱり兄様も来てたんだ~」と、悪びれる様子もなく笑顔を見せてくる。
しかし……本当に人生を逆行してしまうとは……。
今だに自分自身に起こった出来事が信じられず小さくなった自分の手を見つめていると、下から覗き込むようにリエンが顔を出してくる。
「ねぇねぇジェイド兄様。昔の家にいるって事は、まだ母さん達は再婚前だよね」
「そうだな。シャルル兄さんがやり直した時は私達が訪れる日だったと言っていたが……」
部屋の中を見渡せば荷物をまとめている様子はない。
まずは今の現状を確認する事から始めないといけないか……。
「よしリエン。まずは情報収集からだ。くれぐれもおかしな行動はせず子どもらしく振る舞うんだぞ」
「分かってるって~。僕的にはジェイド兄様こそ子どもらしくできるか心配なんだけど~」
「私なら大丈夫だ。リエンのようにお喋りではないからな」
「何それ。僕だって小さな頃は人見知りで臆病な可愛い少年だったんだからねぇ~」
「はは。そう言えばそんな時もあったな」
リエンと軽口を叩きつつ幼い頃の自分達がどのように過ごしていたか思い出ながら、私達は母さんの元へと向かった。
ダイニングへと到着すれば、すでに母さんが朝食の準備をしていた。久しぶりの母さんとの再会に胸がグッと締め付けられるが、表情には出さずにいつものように朝の挨拶をする。
「母さん……おはようございます」
「母様……おはよう」
「あら。おはよう。二人とも今日は早起きねぇ~」
母さんの優しい笑顔を見た瞬間、リエンはタッ……と母さんの元へと駆け寄り足に抱きつく。
「リエン? どうしたの?」
「………今日怖い夢を見たの。母様がいなくなる夢……」
「まぁ……。それは怖い思いをさせてしまったわね……。でも大丈夫よ。母さんはここにちゃ~んといるから。ね!」
母さんはそう言うとリエンを抱き上げてコツンとおデコを寄せる。私達が悲しい時や辛い時に、こうやっていつも励ましてくれた。母さんの温もりと優しい微笑みを見れば不安な気持ちが薄れていくのを覚えている……。
すっかり幼い頃の自分になりきったリエンは、母さんに抱き抱えられ満足そうな表情を浮かべている。
演技というよりは素に近いリエンの行動を見習うべきか迷ったが……私はまだその域には達する事が出来なかったので大人しく席に着き朝食をとる。
たわいのない会話をしながら三人で食卓を囲み、いつ母さんに再婚の話を聞き出そうかタイミングを見計らっていると母さんの方からその話題をふってくる。
「あと二週間でこの家を出るけれど少しは荷物の整理ができたかしら……?」
二週間後……。
つまり現在の私は8歳、リエンは5歳か……。
母さんの質問に「少しずつ整理してるよ」と、答えればホッとした表情を見せる。
前回の私は荷物の整理などギリギリまで行わなかった事を思い出す。
口には出さないが再婚について良く思っていない事を態度で示し、母さんを困らせてしまっていた……。
あの時は、自分が二人を守らなければと不安でいっぱいだったが今は違う……。
早くシャルル兄さんに会いたい……。
「新しい家、凄く楽しみにしているよ母さん」
「ほんと! よかったわぁ……。二人とも不安なんじゃないかって心配していたのよ」
「大丈夫だよ母様! 新しい父様と兄様に会えるの凄く楽しみ~」
「ふふ。そうね。私もシャルルくんに会うのは今回が初めてだから楽しみなの。ケインさんに写真を見せてもらったけど凄く可愛らしい子だったのよ~」
「そうなんだ……。シャルル兄さんに早く会ってみたいな」
母さんとシャルル兄さんについて話しながら皆で過ごした時を思い出す。
幸せで……笑顔と愛に溢れた人生だった。
きっと、今回はそれ以上に幸せな人生を三人で歩んで行くのだろう。
その時の私はシャルル兄さんに会える喜びに浮かれていて……
私の思い描いていたシャルル兄さんとの素敵な未来とは程遠い現実が待ち受けている事を、二週間後に思い知らされるのだった。
「もしかして……ジェイド兄様は変わらないまま? 僕だけこっちに来ちゃったんだ……。じゃあ……シャルル兄様は僕だけのもの……? どうしよう……毎日シャルル兄様を独り占めできるなんて夢みたい……」
「リエン。シャルル兄さんはお前だけのものじゃない」
私が黙っていれば好き放題言い放つリエンに釘を刺せば「なんだ~やっぱり兄様も来てたんだ~」と、悪びれる様子もなく笑顔を見せてくる。
しかし……本当に人生を逆行してしまうとは……。
今だに自分自身に起こった出来事が信じられず小さくなった自分の手を見つめていると、下から覗き込むようにリエンが顔を出してくる。
「ねぇねぇジェイド兄様。昔の家にいるって事は、まだ母さん達は再婚前だよね」
「そうだな。シャルル兄さんがやり直した時は私達が訪れる日だったと言っていたが……」
部屋の中を見渡せば荷物をまとめている様子はない。
まずは今の現状を確認する事から始めないといけないか……。
「よしリエン。まずは情報収集からだ。くれぐれもおかしな行動はせず子どもらしく振る舞うんだぞ」
「分かってるって~。僕的にはジェイド兄様こそ子どもらしくできるか心配なんだけど~」
「私なら大丈夫だ。リエンのようにお喋りではないからな」
「何それ。僕だって小さな頃は人見知りで臆病な可愛い少年だったんだからねぇ~」
「はは。そう言えばそんな時もあったな」
リエンと軽口を叩きつつ幼い頃の自分達がどのように過ごしていたか思い出ながら、私達は母さんの元へと向かった。
ダイニングへと到着すれば、すでに母さんが朝食の準備をしていた。久しぶりの母さんとの再会に胸がグッと締め付けられるが、表情には出さずにいつものように朝の挨拶をする。
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「母様……おはよう」
「あら。おはよう。二人とも今日は早起きねぇ~」
母さんの優しい笑顔を見た瞬間、リエンはタッ……と母さんの元へと駆け寄り足に抱きつく。
「リエン? どうしたの?」
「………今日怖い夢を見たの。母様がいなくなる夢……」
「まぁ……。それは怖い思いをさせてしまったわね……。でも大丈夫よ。母さんはここにちゃ~んといるから。ね!」
母さんはそう言うとリエンを抱き上げてコツンとおデコを寄せる。私達が悲しい時や辛い時に、こうやっていつも励ましてくれた。母さんの温もりと優しい微笑みを見れば不安な気持ちが薄れていくのを覚えている……。
すっかり幼い頃の自分になりきったリエンは、母さんに抱き抱えられ満足そうな表情を浮かべている。
演技というよりは素に近いリエンの行動を見習うべきか迷ったが……私はまだその域には達する事が出来なかったので大人しく席に着き朝食をとる。
たわいのない会話をしながら三人で食卓を囲み、いつ母さんに再婚の話を聞き出そうかタイミングを見計らっていると母さんの方からその話題をふってくる。
「あと二週間でこの家を出るけれど少しは荷物の整理ができたかしら……?」
二週間後……。
つまり現在の私は8歳、リエンは5歳か……。
母さんの質問に「少しずつ整理してるよ」と、答えればホッとした表情を見せる。
前回の私は荷物の整理などギリギリまで行わなかった事を思い出す。
口には出さないが再婚について良く思っていない事を態度で示し、母さんを困らせてしまっていた……。
あの時は、自分が二人を守らなければと不安でいっぱいだったが今は違う……。
早くシャルル兄さんに会いたい……。
「新しい家、凄く楽しみにしているよ母さん」
「ほんと! よかったわぁ……。二人とも不安なんじゃないかって心配していたのよ」
「大丈夫だよ母様! 新しい父様と兄様に会えるの凄く楽しみ~」
「ふふ。そうね。私もシャルルくんに会うのは今回が初めてだから楽しみなの。ケインさんに写真を見せてもらったけど凄く可愛らしい子だったのよ~」
「そうなんだ……。シャルル兄さんに早く会ってみたいな」
母さんとシャルル兄さんについて話しながら皆で過ごした時を思い出す。
幸せで……笑顔と愛に溢れた人生だった。
きっと、今回はそれ以上に幸せな人生を三人で歩んで行くのだろう。
その時の私はシャルル兄さんに会える喜びに浮かれていて……
私の思い描いていたシャルル兄さんとの素敵な未来とは程遠い現実が待ち受けている事を、二週間後に思い知らされるのだった。
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