【完結】 禍の子

赤牙

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20話 [R】

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「ジン、私を愛してくれるのかい?」

 目の前で涙をこらえるジンの頬を撫でる。私が触れただけで、体を震わせ小さく頷く。

「頷くだけではお前の気持ちが分からない。言葉にして教えておくれ、ジン。私をどう思っているのかを」

 頬を撫で指先で顎を上げる。ジンの顔は、今まで見たことがないくらいに悲痛な表情を浮かべている。
 噛み締める唇を撫でて、ジンが私に紡いでくれる愛の言葉を待つ。

「俺は……俺は……エクラ様の為に……ゲイル様を愛します」

 涙を流し、歪んだ笑顔で憎らしいほどの愛の言葉が告げられる。
 そんなジンが、とてつもなく愛おしかった。

「ジン、もう一度言っておくれ……」
「愛……しています、ゲイル……様……」
「もう一度……」
「愛し、て……います……ゲイル、様……」

 嗚咽混じりの愛の言葉が私の心を満たす。

———これが私が求めていた『愛』……。

 ジンを抱き寄せ、私も「愛している」と伝える。
 額や頬に唇を落とし、最後に私への愛を伝えてくれる愛らしい唇にも……。 
 私を拒むように結ばれた唇を解き、舌を絡ませ甘いジンの唾液をすする。
 後頭部を抱え込み、深く長い誓いの口付けを終えエクラを見つめる。

「ジン、このままエクラに私たちの愛を見届けてもらおう」

 薄い腹を撫でれば、ジンの細い腕が制止する。

「あ! ゲイル様……それは……」

 ジンの視線はエクラを捉える。エクラには見られたくないと必死に訴える瞳。その瞳に、ゾクリと興奮してしまう。
 ジンの言葉を無視し、私は欲望のままジンの体を暴く。ずっと触れたくて仕方なかった体に触れ、口付けをしていく。
 鞭で打たれた傷つけられていたジンの体は、エクラにより綺麗に治癒されていた。その、体に歯を立て私の痕を刻み込む。

「———くッッ! いたっ……ゲイル……様……」

 痛みに耐え涙をこらえるジンの姿は、艶かしく情欲をそそる。
 胸を撫で、赤く腫れた先端を愛撫してやればジンは体を捩らせる。
 下半身に溜まった熱に触れれば、手で顔を覆い小さく体を震わせた。

「ジン……愛している。愛しているよ……」
「ん、ぁ……ぃゃ……ぁ……ゲイル……様……」

 愛の言葉を囁き抱きしめ、ジンと一つになるために己の猛りを押し当てる。小さな体で必死に私を受け止め、私の背中に爪を立てる。
 ジンが与えてくれる痛みに、頬を緩ませ私はジンの最奥まで侵入していく。
 痛みと快楽が入り混じったジンの嬌声が教会内にこだまする。

 白き魔物は血の涙を流しジンの名を呼び続けた。




◇◇◇◇


 それから一年後。
 私のもとに討伐隊が押し寄せた。
 呪いをかけた魔物達は討伐され、教会を取り囲む数百の兵士たち。

 討伐隊がやってきた時、私はすぐにジンとエクラを地下の隠し部屋へと連れていく。
 不安そうに震えるジンの頭を撫でて、「大丈夫だ」と告げる。
 そして、部屋に結界を張り、このまま隠れていろと命令する。

 礼拝堂に戻れば、先鋭部隊が私に向かって『厄災』と言い放ち、剣先を向けた。
 そして、鈍い光りを放つ剣が私の体を貫く。
 体を貫いた剣からは赤黒い血が流れ落ち、心臓の鼓動は徐々に遅くなり、目が霞む。
 自分の死を確信し、私は首元に下げた宝玉を握りしめる。

 これでいい……。
 二人の命さえ無事ならばそれでいい。

「ジン……あい……してる……」

 光が消え失せた世界で私は最後の言葉呪いを紡ぐ。


 きっと……きっと、ジンが私を迎えに来てくれるから……。
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