18 / 31
18話
しおりを挟む
エクラは目を見開き、自分に何が起こっているのか分からず私の腕を掴み抵抗する。その間にも、呪いはエクラの体へと流れ込み浸食していく。
「———ッッ!?」
ようやく何をされたのか理解したエクラは、浄化魔法を自分の体にかけるが……呪いの多さに少しずつにエクラの体が変化していく。
苦労をしらない指先が歪な形へと変わり、煌めく黄金色の瞳は血走り光を失っていく。
美しい澄んだ声は消え失せ、不気味な呻き声を発する。
そして、呪いに飲み込まれたエクラの体はどんどん形を変えていく。
長い長いエクラとの口付けを終えた頃には、エクラとしての形を保ってはいなかった。
そこにいたのは真っ白な人型の異形。
「……エクラ」
声をかけて、顔を撫でれば「ギィ……」と声を発する。愛らしい姿に変わったエクラを見つめ、口元を綻ばせる。
「さぁ、エクラ。私とジンの世界を作ってくれ」
そう命令すると、背中から生えた骨張った翼を羽ばたかせエクラはステンドグラスを突き抜けて外へ。
教会の外から聞こえる悲鳴に耳を傾けながら、私は歩き出す。
「……さぁ、もっと世界を作り替えなければ」
……そして、慌しい一日の終わりを告げる鐘がなる。
教会にいた司祭を一人のこらず魔物に変え、王都へ解き放つ。国の中枢から解き放たれた魔物に王都は大きな混乱に陥る。
次々と人々を襲い、恐怖に陥れる魔物達。
私とジンを縛るもの全てを彼らが壊してくれる。
中でもエクラは最高だった。
真っ白な歪な羽を羽ばたかせ、この国の終わりを告げる叫び声を響き渡らせる。
そして……国王の首を手に私のもとへと戻ってくる。
真っ白な体は返り血で赤く染まり、高潔なエクラの姿はそこにはない。
「やっと、お前もここまで落ちてきたのだな……」
嬉しさのあまりニタリと微笑んでいると、背後から震える声が聞こえてくる。
「ゲイル様……」
振り向くとジンが立ちすくんでいた。
「ジン、目が覚めたんだね。おはよう」
「ゲイル様、そ、その隣にいるのは……魔物……」
ジンは魔物になったエクラを見つめ、恐怖に満ちた表情を見せる。
「大丈夫だよ、ジン。この魔物は私たちを傷つけはしない」
「え……?」
「ジンにはこの魔物が何に見えるかい?」
小さく震え、真っ白な魔物と化したエクラを見つめるジン。
すると、エクラが声をあげる。
「ジ………ン……」
「…………エ……クラ様……?」
「ほぅ、こんな形になっても、僅かに自我が残っているのか。流石、神の子と言われるだけはあるのだな」
「ゲイル……様? これは一体、どういうこと……ですか? なんで……なんで……エクラ様が……」
声を震わせエクラを見つめ続けるジン。
瞳は涙で溢れ今にもこぼれ落ちてしまいそうだ。
固まったまま動けないジンに近づき、頭を撫でるとビクリと震える。
「ジン、エクラは呪われて魔物になってしまったんだ」
私の言葉を聞いたジンの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
「———ッッ!?」
ようやく何をされたのか理解したエクラは、浄化魔法を自分の体にかけるが……呪いの多さに少しずつにエクラの体が変化していく。
苦労をしらない指先が歪な形へと変わり、煌めく黄金色の瞳は血走り光を失っていく。
美しい澄んだ声は消え失せ、不気味な呻き声を発する。
そして、呪いに飲み込まれたエクラの体はどんどん形を変えていく。
長い長いエクラとの口付けを終えた頃には、エクラとしての形を保ってはいなかった。
そこにいたのは真っ白な人型の異形。
「……エクラ」
声をかけて、顔を撫でれば「ギィ……」と声を発する。愛らしい姿に変わったエクラを見つめ、口元を綻ばせる。
「さぁ、エクラ。私とジンの世界を作ってくれ」
そう命令すると、背中から生えた骨張った翼を羽ばたかせエクラはステンドグラスを突き抜けて外へ。
教会の外から聞こえる悲鳴に耳を傾けながら、私は歩き出す。
「……さぁ、もっと世界を作り替えなければ」
……そして、慌しい一日の終わりを告げる鐘がなる。
教会にいた司祭を一人のこらず魔物に変え、王都へ解き放つ。国の中枢から解き放たれた魔物に王都は大きな混乱に陥る。
次々と人々を襲い、恐怖に陥れる魔物達。
私とジンを縛るもの全てを彼らが壊してくれる。
中でもエクラは最高だった。
真っ白な歪な羽を羽ばたかせ、この国の終わりを告げる叫び声を響き渡らせる。
そして……国王の首を手に私のもとへと戻ってくる。
真っ白な体は返り血で赤く染まり、高潔なエクラの姿はそこにはない。
「やっと、お前もここまで落ちてきたのだな……」
嬉しさのあまりニタリと微笑んでいると、背後から震える声が聞こえてくる。
「ゲイル様……」
振り向くとジンが立ちすくんでいた。
「ジン、目が覚めたんだね。おはよう」
「ゲイル様、そ、その隣にいるのは……魔物……」
ジンは魔物になったエクラを見つめ、恐怖に満ちた表情を見せる。
「大丈夫だよ、ジン。この魔物は私たちを傷つけはしない」
「え……?」
「ジンにはこの魔物が何に見えるかい?」
小さく震え、真っ白な魔物と化したエクラを見つめるジン。
すると、エクラが声をあげる。
「ジ………ン……」
「…………エ……クラ様……?」
「ほぅ、こんな形になっても、僅かに自我が残っているのか。流石、神の子と言われるだけはあるのだな」
「ゲイル……様? これは一体、どういうこと……ですか? なんで……なんで……エクラ様が……」
声を震わせエクラを見つめ続けるジン。
瞳は涙で溢れ今にもこぼれ落ちてしまいそうだ。
固まったまま動けないジンに近づき、頭を撫でるとビクリと震える。
「ジン、エクラは呪われて魔物になってしまったんだ」
私の言葉を聞いたジンの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
1
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
忘れられない君の香
秋月真鳥
BL
バルテル侯爵家の後継者アレクシスは、オメガなのに成人男性の平均身長より頭一つ大きくて筋骨隆々としてごつくて厳つくてでかい。
両親は政略結婚で、アレクシスは愛というものを信じていない。
母が亡くなり、父が借金を作って出奔した後、アレクシスは借金を返すために大金持ちのハインケス子爵家の三男、ヴォルフラムと契約結婚をする。
アレクシスには十一年前に一度だけ出会った初恋の少女がいたのだが、ヴォルフラムは初恋の少女と同じ香りを漂わせていて、契約、政略結婚なのにアレクシスに誠実に優しくしてくる。
最初は頑なだったアレクシスもヴォルフラムの優しさに心溶かされて……。
政略結婚から始まるオメガバース。
受けがでかくてごついです!
※ムーンライトノベルズ様、エブリスタ様にも掲載しています。
使用人の俺を坊ちゃんが構う理由
真魚
BL
【貴族令息×力を失った魔術師】
かつて類い稀な魔術の才能を持っていたセシルは、魔物との戦いに負け、魔力と片足の自由を失ってしまった。伯爵家の下働きとして置いてもらいながら雑用すらまともにできず、日々飢え、昔の面影も無いほど惨めな姿となっていたセシルの唯一の癒しは、むかし弟のように可愛がっていた伯爵家次男のジェフリーの成長していく姿を時折目にすることだった。
こんなみすぼらしい自分のことなど、完全に忘れてしまっているだろうと思っていたのに、ある夜、ジェフリーからその世話係に仕事を変えさせられ……
※ムーンライトノベルズにも掲載しています
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる