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アルバード王立高等学院~新たな出会い~

重なりあう点と点

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「ここがアクアマリン寮だ。」

結構デカイ。そして思っていたよりもキレイだ。

ゼノンさんが扉を開けると広い談話室に50人程の人が座っていた。


「軽い自己紹介をしてくれるか?」

自己紹介か…これで僕の立ち位置が決まるといっても過言ではないだろう。
やはり学校は苦手だ。いやでも昔を思い出してしまう。

自己紹介とか僕のような陰キャにやらせたら空気がまずくなるだろうに。

「はい。わかりました。…僕の名前はカイ・ハルシャです。好きなことは…ううんと、チェスです。よろしくお願いします。」

そう言ってぺこりとお辞儀した。

その瞬間談話室のいたるところから歓声が飛び交った。

「よっしゃあ!!!アタリ引いたな!!!!!」

アタリって、、何が?

「よくやったゼノン!!」

くじ引きで寮が決まるわけじゃないだろうし、ゼノンさんのおかげではないとおもうんだけど…

「あの、アタリってなんですか?」

と少し困った顔をしてゼノンさんに聞く。

「この学院の貴族のうち、伯爵家以上から生まれた子息令嬢は平民や下級貴族を差別する傾向が強い人が一定数いるんだよ。君も公爵家だから少し警戒されてたってわけだ。」

はぁ、、なるほど?やはりどこにでもそういうヤツはいるんだな…

「この学院は完全なる平等だと思いますが…」

一応何も知らない体でいこう。

「この寮は運良くそういう人はいないんだけど他の寮にはある程度いる。君は公爵家だから気を付ける必要はないかもしれないが、特にタンザナイト寮は酷いから近づかない方がいいと思う。」

マジか…

「わかりました。」

やっぱりこの寮の決め方は誰かの圧力がかかっているに違いない。

おそらく殿下に悪い影響が及ぼさないメンバーが揃ったのだろう。

「ちなみに今日は休日で授業がないからこのまま歓迎会を始める!!」

やっぱここの人らいい人が多いな…。僕なら絶対参加しない転入生の歓迎会にこんなに人が集まるなんてことがあるのだろうか?

「転入生、こっち座れ!!」

と言われるまま真ん中に座る。

今回の学校生活は上手くいくかもしれないな、と心に呟く。

「あっ、あの、隣に座ってもいい?」

後ろを振り返ると端正な顔の少年がいた。

「構わないよ。従兄弟のハミルだよね?」

と言うと少し嬉しそうに頷いた。

「知ってたんだね、嬉しいよ!カイって呼んでいいかな?」

従兄弟とはできれば仲良くしたい。

「もちろん構わないよ。」

ハミルは僕と同じ黒髪に緑の眼で文武両道ということで有名だ。

「あの、わたしもお隣に座ってもよろしいですか?」

と後ろからまたもや透き通った声が聞こえてきたので振り返ると銀髪の少女がいた。

「いいですよ、フローレス嬢。」

彼女の名前はアイリス=フローレス。伯爵家のご令嬢だ。事前情報で見た容姿よりとても美しい。長い銀髪に涼しげな青い瞳は絵本にいそうなお姫様を連想させられる。
とても賢くハミルと張り合えるほどだ。

「ありがとうございます!アイリスで構いませんよ。公爵家からの転入生と聞いて失礼ながら不安でしたが杞憂でしたね…それと、私にもため口で話してくださらない?あなたは私の大切な人にとっても似てるんです。違うのは眼の色くらいでしょうか…」


「大切な人?」

ふむ、果たして僕と似た貴族がいたものか…と思いおこしてみるものの見当たらない。

「ええ。もう会うことは叶いませんが。」

フローレス嬢もとおいアイリスは悲しそうに呟いた。これは深く踏み込まない方がいいだろう。

「私も会話にはいって構わないかい?」

今度は王子か…大物揃いだな

「もちろんです。王太子殿下。」

名前はノエル・エスペラード。この国の王太子殿下だ。
知的で温厚で将来有望だと噂されている。
圧倒的な魔力量を誇るヘリオス家特有の薄水色の髪に王族の血筋であることを示す黄緑の瞳を有した人で、僕とは2つ年が離れている。

ちなみに公式の場で王族以外が黄緑の宝石を着けることは許されていない。そして、黄緑と似ている緑色の宝石を着けることができるのは唯一ハルシャ家とハルシャ家が認めた者だけだ。
認められていなければ王族でも着けることは許されていない。だから僕とハミルは緑色の宝石を胸に着けているし殿下も黄緑の宝石を着けている。

そのため顔を知らなくても宝石を見れば平民にもどこの家の者なのかわかるって寸法だ。

まあ制服など着る人はあまりいないため服の質でだいたいわかるのだが…
…ちなみに僕は制服を着ている。だって選ぶのが面倒なんだもん

「さっきから気になっていたのだけれど、ハルシャ卿、全員の顔と名前を覚えているのかい?」

ここで能力を悟られるのはよろしくない、か

「さすがにそれは無理ですよ。アクアマリン寮の人達はある程度覚えましたけど、他の寮の人達はほとんど覚えてません。」

そう言って無害アピールをするために笑顔の仮面を張り付ける。

「そうか。まっ、これからよろしく頼むよ。ここでは身分など無用なのだからハルシャ卿も敬語はやめてくれ」

そういいながら『卿』と告げる殿下はなかなかの皮肉屋だ。

「…殿下にそう言われたら断れないな。」

と言って少し笑う。

ちなみにだが、爵位を継いでいない貴族同士が名前を呼ぶときは男性に対しては○○卿、女性に対しては○○嬢と呼ぶのが礼儀だ。
親しくなれば名前で呼んでも良いが初対面では上の爵位の人間もしくは同じ爵位の人間に対してはそう呼ばなければならない。

殿下が僕を『ハルシャ卿』と呼んだのは公爵家に敬意を表したのだろう、と第三者なら思うだろう。本来は呼び捨てでも構わない。

何故敬意を表したのかというと恐らくそれは王位継承がかかっているからだろう。

本来であれば殿下が王位を継承するが、先王の妹が嫁いで王家の血が入っているクロード侯爵が急成長しているだ。

そして、クロード侯爵の息子ブルース・クロードの婚約者は由緒正しいフローレス家のアイリス・フローレスだ。

何故殿下とフローレス嬢が牽制もせず普通に話しているのかは気になるところだが、クロード侯爵家の黒い噂はよく聞くため伯爵家は圧力をかけられただけで本意ではないのだろうと推測する。

そこまで考えて意識を3人に戻した。

それからお菓子を食べたりゲームをしたりして寮の人達と親睦を深めた。















明日から授業か…
基本的なことは頭に積めてきたからあまり心配はない。だが、学校での生活に耐えられるだろうか?昔のトラウマによって植えつけられた恐怖は今行き場を失くしている。

この学院に来た目的は心の成長を促すためが70、義務としてが30だ。


地球の僕がこの世界のどこかにいるのだとしたら間違いなく僕を殺しに来るだろう。僕ならそうするからだ。
なぜそうするかというと同じ人間が同じ世界に2人も存在してはならないからだ。もしかしたら何者かによって消されるかもしれない。そうなる前にもう一人の僕を殺す。合理的な判断だ。

公爵家の手が離れた今、この学院でことは起こるだろう。
なんとかしなければな…


ちなみに部屋は殿下と同じだった。安全のためだとは思うが絶対にお祖父様が一枚噛んでいる気がする。
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