上 下
50 / 141
コウの過去

逆境に逆らう2つの花

しおりを挟む
目が覚めたら川岸にいた。近くの街まで行くと、ここがハールーン帝国の最西の街であることがわかった。ここでは赤眼に対して否定的な眼も多いが、自分の村よりも全然マシだった。集団リンチなんてほとんどないし嫌みを言われて勝手に蔑まれるだけだから。

ステータスを見ることができるようになる12歳までの辛抱だと思って耐えてきた。
暴力から逃げ回って戦って、残飯を食べて路地裏で寝る。そんな生活を毎日繰り返した。
だが、ある日そんな俺の生活が一変した。


「おい、お前!キレイな身なりをしてんなぁ!死にたくなかったら有り金全部置いていきな!」

いつも俺にちょっかい出すアホどもの声がしたので振り向くとそこにはソイツらの目の前には俺と同じくらいの年をした小綺麗な格好の少年がいた。

俺と同じ黒髪でエメラルドをはめ込んだような綺麗な眼をしていた。俺はなぜだかその眼に強く惹き付けられた。…それは昔の俺と同じ眼をしていたからだろう。

「やだよ。なんで君らに渡さないといけないんだ?」

強気なんはエエけど、そんなこと言ったら逆上すんで…

「ちっ、こうなりゃ力ずくて奪うまで!いけ、お前ら」

ほら、言わんこっちゃない…

そう思った次の瞬間には自分の体は意思と関係なく少年の元に行こうとしていた。

「おい、お前らなにやっとんねん!」

あ、思わず出てきてしまった…

「おい、あいつってたしか」


「悪魔だ!逃げろ!!」


孤児達は我先にと逃げていった。

アイツら、ちょっかい出す割には弱いよな…

「君、大丈夫か?アイツらは最近良くない噂聞くから、次見たら逃げるんやで。」

そう言いながら少し眼を反らす。長居は無用だ。この少年もどうせ赤眼をよく思っていないのだから。

「大丈夫だよ。それにもう少ししたら衛兵の巡回時間になるし。それより眼、キレイだね。」

キレイ?そんなわけない

「お世辞はええで。この眼、悪魔のようやって言われて村も追い出されたんや。」

そう少し嘘をまぜながら言うと少年は興味なさげに言葉を続けた。

「へー、そうなんだ。その人達悪魔を見たことあるの?」

その返しは予想してへんかったな…

「さすがに無いやろ。悪魔は神話におる生き物やし。」


「その村の人、頭おかしいんじゃないの?存在してるかも怪しい悪魔なんてものを信じて、かってに恐れて子供を追い出すなんて。」
   
そう言って自分もそんな目に合ったことがあるかのように顔を歪ませたと思ったらハッとしたような顔をした。

「それに君のそれは悪魔のものじゃない。それだけは確かだよ。こんなキレイな赤色、僕は初めて見たからね。じゃあ、僕は行くね。さっきは助けてくれてありがとう。」

本当に兄さんみたいなことを言うな、この少年は…

「あ、ああ。気をつけてな…。キレイ、か。ありがとうな。」

久々に「眼が綺麗だ」と言われたけどそんなに悪いものやないな…





あの少年、裕福な家の子供やと思うけど俺と同じやったな。
両親からの愛を受けず、周りの人間にも罵倒されて暴力を振るわれる。そんな人生を送ってたんやろう。人生に絶望し誰も信用できず何にもすがれないためにできる、どうなっても構わないという自暴自棄の瞳。
それでも彼の眼の奥には生きることを諦めない小さいながらも強い光があった。なんでかは分からへんけど…

俺はその瞳に強く惹かれたんやろな。俺はどこか生きることを諦めてた気がする。復讐してそれで終わり、復讐が終われば自分には生きる価値すらもないと…

彼なら俺を変えてくれるかもしれへんな…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スキル【海】ってなんですか?

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
スキル【海】ってなんですか?〜使えないユニークスキルを貰った筈が、海どころか他人のアイテムボックスにまでつながってたので、商人として成り上がるつもりが、勇者と聖女の鍵を握るスキルとして追われています〜 ※書籍化準備中。 ※情報の海が解禁してからがある意味本番です。  我が家は代々優秀な魔法使いを排出していた侯爵家。僕はそこの長男で、期待されて挑んだ鑑定。  だけど僕が貰ったスキルは、謎のユニークスキル──〈海〉だった。  期待ハズレとして、婚約も破棄され、弟が家を継ぐことになった。  家を継げる子ども以外は平民として放逐という、貴族の取り決めにより、僕は父さまの弟である、元冒険者の叔父さんの家で、平民として暮らすことになった。  ……まあ、そもそも貴族なんて向いてないと思っていたし、僕が好きだったのは、幼なじみで我が家のメイドの娘のミーニャだったから、むしろ有り難いかも。  それに〈海〉があれば、食べるのには困らないよね!僕のところは近くに海がない国だから、魚を売って暮らすのもいいな。  スキルで手に入れたものは、ちゃんと説明もしてくれるから、なんの魚だとか毒があるとか、そういうことも分かるしね!  だけどこのスキル、単純に海につながってたわけじゃなかった。  生命の海は思った通りの効果だったけど。  ──時空の海、って、なんだろう?  階段を降りると、光る扉と灰色の扉。  灰色の扉を開いたら、そこは最近亡くなったばかりの、僕のお祖父さまのアイテムボックスの中だった。  アイテムボックスは持ち主が死ぬと、中に入れたものが取り出せなくなると聞いていたけれど……。ここにつながってたなんて!?  灰色の扉はすべて死んだ人のアイテムボックスにつながっている。階段を降りれば降りるほど、大昔に死んだ人のアイテムボックスにつながる扉に通じる。  そうだ!この力を使って、僕は古物商を始めよう!だけど、えっと……、伝説の武器だとか、ドラゴンの素材って……。  おまけに精霊の宿るアイテムって……。  なんでこんなものまで入ってるの!?  失われし伝説の武器を手にした者が次世代の勇者って……。ムリムリムリ!  そっとしておこう……。  仲間と協力しながら、商人として成り上がってみせる!  そう思っていたんだけど……。  どうやら僕のスキルが、勇者と聖女が現れる鍵を握っているらしくて?  そんな時、スキルが新たに進化する。  ──情報の海って、なんなの!?  元婚約者も追いかけてきて、いったい僕、どうなっちゃうの?

転生発明家は異世界で魔道具師となり自由気ままに暮らす~異世界生活改革浪漫譚~

夜夢
ファンタジー
 数々の発明品を世に生み出し、現代日本で大往生を迎えた主人公は神の計らいで地球とは違う異世界での第二の人生を送る事になった。  しかし、その世界は現代日本では有り得ない位文明が発達しておらず、また凶悪な魔物や犯罪者が蔓延る危険な世界であった。  そんな場所に転生した主人公はあまりの不便さに嘆き悲しみ、自らの蓄えてきた知識をどうにかこの世界でも生かせないかと孤軍奮闘する。  これは現代日本から転生した発明家の異世界改革物語である。

アクト!!!!〜異能を持たない人間でも、嘘と知略だけで人外種族と対等に渡り合おうと思います〜

ディメンションキャット
ライト文芸
この現代にはファンタジーが満ち溢れている。 それは、宇宙人。それは、魔法。それは、忍者。それは、都市伝説、ロストテクノロジー、未来人、幽霊。それは、それは、それは、、、、。 全ての創造がひっそりと、存在する世界で人間はどこまでそれら相手にやれるのだろうか? 小さな高校の演劇部に所属する鷺山 誉(さぎやま ほまれ)は、未来から来たアンドロイドであるプロンプター、略してプロ子と出会う。彼女が誉と接触した目的は、近い未来に大犯罪を犯す人外種族の早期捕縛のパートナーとする為だった。 同じ演劇部の天才、中村 惣一や利害関係の一致した人外の仲間と共に、誉は数々の犯罪者達を芝居と戦略で出し抜く。 誉が持つ異常な観察力と洞察力を駆使して、その身と言葉だけで、異能力を操る人外種族と対等に渡り合う超頭脳戦。 そして、未来テクノロジーが可能にしたプロ子の圧倒的戦闘力が魅せる、未来の犯罪者との異能力アクションバトル。 誉が騙し、プロ子がぶちのめす。 二つの要素が融合した現代ファンタジーが今ここに!

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん
ファンタジー
 人族によって滅亡を辿る運命だった魔族を神々からの指名として救った魔王ジークルード・フィーデン。 しかし神々に与えられた恩恵が強力過ぎて神に近しい存在にまでなってしまった。  膨大に膨れ上がる魔力は自分が救った魔族まで傷付けてしまう恐れがあった。 なので魔王は魔力が漏れない様に自身が張った結界の中で一人過ごす事になったのだが、暇潰しに色々やっても尽きる気配の無い寿命を前にすると焼け石に水であった。  暇に耐えられなくなった魔王はその魔王生を終わらせるべく自分を殺そうと召喚魔法によって神を下界に召喚する。 神に自分を殺してくれと魔王は頼んだが条件を出された。  それは神域に至った魔王に神になるか人族として転生するかを選べと言うものだった。 神域に至る程の魂を完全に浄化するのは難しいので、そのまま神になるか人族として大きく力を減らした状態で転生するかしか選択肢が無いらしい。  魔王はもう退屈はうんざりだと言う事で神になって下界の管理をするだけになるのは嫌なので人族を選択した。 そして転生した魔王が今度は人族として2度目の人生を送っていく。  魔王時代に知り合った者達や転生してから出会った者達と共に、元魔王様がセカンドライフを送っていくストーリーです! 元魔王が人族として自由気ままに過ごしていく感じで書いていければと思ってます!  カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております!

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

一筋の光あらんことを

ar
ファンタジー
金の髪とエメラルド色の瞳をした、記憶喪失の少女ーーリオ。幼い頃、とある森の中でシュイアという剣士に拾われ、共に旅をすることとなる。 無知な少女が剣を手にし、大切なものを見つけていく物語。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

処理中です...