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十四突き目 仲間

藪蛇

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バーまさる

笑い声に包まれている店内。
カララン
音を立ててまさるの店の扉が開かれた。
「一城!いる?」
皆の視線が注がれる。店に入ってきたのは、蓮実だった。
「よお、蓮実。悪かったな」
カウンターに目をやっていた蓮実は、いつもはそこにいるはずの一城がソファにいたのに少し戸惑っている。
「あ、一城。」
蓮実は、一城の側にいる恵と琴音に気がついた。
「ああ、良かった。無事で」
蓮実は、恵と琴音に駆け寄ると二人に抱きついていた。
「は、蓮実さん?」
「本当に、良かった」
蓮実は、今にも泣き出しそうに声を震わせた。
驚いて目を丸くしていた恵だったが、こんなに自分のことを気にかけてくれることが、とても嬉しかった。琴音もまた同じ気持ちであった。故郷を出てからというもの、こんな風に誰かに抱きしめられることがなかったから、母を思い出さずにいられなかった。琴音は、いつもはパリッと張り詰めている蓮実が、小刻みに肩を震わせて嬉し泣きをしているのが分かると、自然に腕を蓮実の背中に回していた。
琴音は、蓮実の肩に埋めた顔を上げると、頬を涙が濡らしていた。
「蓮実さん。ごめんなさい」
蓮実は、優しく微笑むと琴音の頬の涙を指で拭った。
「大変だったわね。もう、大丈夫だからね」
言うと蓮実は、再び琴音を包むように抱きしめた。
琴音は、嬉しいはずなのに、涙が止まらなかった。これまで、抑えて来たものを吐き出すかのように声を上げて子供のように泣いた。
一城は、立ち上がるとカウンターのいつもの場所に戻っていった。
蓮実は、二人の落ち着いた表情を見て取ると微笑んだ。
「まったく、無茶するんだから、これからは、困ったことがあったら、もっと一城や私たちを頼りなさい。いい?二人とも。突っ走るのは、一城一人で十分」
「おいおい、それじゃまるで、俺が馬鹿みたいじゃないか」
「あら、そう聞こえたのなら正解よ。一城」
「けえ、そうかよ」
「そうよ。私がこれまでどれだけ、気を揉んで来たと思ってるの?」
一城は、口をへの字にすると返す言葉を失っていた。
「・・・悪かったよ」
藪の中の蛇を突いてしまった一城だった。
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