上 下
44 / 51
十三突き目 琴音

一城と涼介

しおりを挟む
バーまさる 
カウンターで、ウィスキーの入ったグラスを傾ける涼介。
グラスを拭きながら、落ち着かないまさる。
恵と琴音のことも気になるところだが、何よりもすぐそこに涼介がいるのが気になるまさる。
「そ、それにしても、珍しいわね」
「何がです?」
「り、涼介がこういうことに首を突っ込むなんて」
「・・・たまたまです」
「あ・・・そ」
一城とは違う反応に戸惑う、まさる。
カラカラン
扉が開き一城が戻ってくる。
「おかえり、2人はどう?」
一城を見てホッとしたように、口を開くまさる。
「恵は、目を覚ましたんだが、琴音は眠ってるよ」
カウンターに座る一城。
「そお、2人の関係が変にならなければいいけど」
グラスとボトルを置くまさる。
「恵と琴音なら大丈夫だ」
「ん?」
「恵は、傷ついたものを放っておくような奴じゃない」
「それもそうね」
一城はボトルを手に取ると涼介のグラスにウィスキーを注ぎ足している。
「悪かったな、涼介」
「いいんですよ、俺にだって許せないことくらいありますから」
「そうか」
「ええ」
「それにしても、よくわかったな」
「ああ、奴が携帯落として行ったんで、気づいただけです」
話を聞いていたまさるが、カウンターに置かれていた携帯を手に取ると一城の前に置いた。
「はいこれ、涼介から預かってた携帯」
一城は画面をタップすると、ロックがかけられていないため、普通に操作が出来る。
着信記録を閲覧する一城。
「けんすけ。これが琴音の元カレか?」
「そうみたいですね」
「で、奴らビデオ撮ってたんだろ?」
「ええ、商品にしようとしてたみたいですね」
「どこかの組の依頼か?」
「いや、それはないでしょう」
「ん?なんで言い切れる?」
「仮にも、あのビルはうちのシマですから」
「そうか、なら個人的なもんか」
「たぶん。何にしても処分しときましたよ」
「助かるよ」
「あと、奈良橋さんにあの4人の処分は頼んでおきました」
「奈良橋?って、マル暴のか?」
「ええ」
襟足を掻く一城。
「まいったな、あの人に借りを作りたくなかったんだがな」
「大丈夫ですよ」
「ん?」
「一城さんが、絡んでるとは言ってませんから」
涼介のグラスが空なのを見て一城がボトルを持つ。
その手を止める涼介は、ボトルを取り上げめようとするが、一城が譲らない。
仕方なくグラスを差し出す涼介。
トゥーフィンガーほど注いだ一城が鼻で笑う。
「それにしても」
「え?」
グラスを口につけた涼介の手の止まる。
「相も変わらず、強えな。涼介は」
その言葉に首を振って鼻で笑う涼介。
「一城さんには、到底敵いませんよ」
「そんなことねえだろ。お前の動きには、無駄がないからな。長期戦になれば俺はお前に負ける」
一息にグラスを空ける一城。
「いえ、それはないですね。長期戦になる前に、俺が先に地に伏してますよ」
一城の空になったグラスにウィスキーを継ぎ足す涼介。
「よく言うぜ、俺の拳なんて一発も当たりはしねえよ」
「いいえ、それもあり得ませんね」
まさるが2人の会話を呆れ顔で聞いている。
「今からでも、殴り合いしそうな会話ね。なんで、二人はそんなになっちまったのさ?」
「ん?」
「まるで、兄弟みたいだった2人がさ。ある日突然、好敵手みたいになってるんだから、おかしな話よ」
「色々ですよ」
「女にはわかんねえ話だよ」
「けっ、こういう時だけ女扱いしやがる、汚ないわよね男って」
「かもな」
グラスをカラカラと鳴らす一城。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

おとなのための保育所

あーる
BL
逆トイレトレーニングをしながらそこの先生になるために学ぶところ。 見た目はおとな 排泄は赤ちゃん(お漏らししたら泣いちゃう)

処理中です...