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十二突き目 病院にて
歩の決意
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歩の部屋を出た哲美は、廊下で飲み物を片手にした蓮実に会う。
「あら?哲美」
「よお、蓮実か」
「哲美、歩くんと、知り合いなの?」
「ん?ああ、たった今知り合ったばっかりだけど?なんだ、蓮実、歩ちゃんのこと知ってるのか?」
「うん、知ってるも何も」
「ん?」
「さっき話してた恵くんの幼馴染が歩くんなのよ」
「は?そうなのか、いや、てっきり男の子だと思ってたが、女の子だったのか?」
「あ、話せば長いんだけどね」
「いけね、話っていや、ナースステーション」
「え?まだ、行ってなかったの?」
「あ、うん」
「戻ったら話すわ。詳しい話」
「とにかく、行ってくら」
ぎこちない足取りで、ナースステーションを目指す哲美。
蓮実は、歩の部屋の扉をノックする。
「はい、どうぞ」
振り向く歩は、蓮実を見て笑顔を見せる。
「蓮実お姉さん」
「こんにちは、歩くん」
「炭酸で良かった?」
「ああ、ちょうど飲みたかったんだ、ありがとう」
缶ジュースを差し出す蓮実は、歩の横に腰掛ける。
「また、カカシ?」
「うん、相変わらずだよ」
「そっか」
蓮実も、カカシを見つめる。
「歩くん、哲美とお友達になったの?」
「え?蓮実お姉さん、哲美お姉さんを知ってるの?」
「うん、友達だよ」
「へえ、そうなんだね。優しいお姉さんだよね。蓮実お姉さんと同じだった」
「え?同じ?」
「ん~、笑ってるんだけど、泣いてたみたい」
「泣いてた?て、私も?」
「蓮実お姉さん、いつも、泣いてるよね?」
「ええ?そう見える?」
「うん」
「そうなんだ」
歩が愛おしく思える蓮実は、歩を抱きしめていた。
回された腕を掴む歩。
「いい匂い」
「え?」
「大人の女性の匂い」
「どんな匂いなのか、気になるな」
「なんか、今日はいつもと違う匂いもする」
「え?どんな?」
「この間の男の人の匂いがする」
「え?」
手を離し、腕の匂い嗅ぐ蓮実。
「あれから、歩。この間の男の人が気になってて」
「どうして?」
「恵の匂いがしたんだ」
「え?」
下唇を指で持ち上げる歩。
「違うな、匂いとは少し違うかも」
「歩くん、この間の男の人を覚えてるの?」
「あの時は、すごく怖かったんだけど、恵が悲しい顔をしたんだよね」
「恵くんが?」
「うん、あんな顔の恵、もう見たくないから。ねえ?蓮実お姉さん」
「なに?」
「もう一度、この間の男の人に、僕、会えるかな?」
「え?でも・・・」
「会ってみたいんだ、もう一度」
「会えなくはないけど・・・」
すぐそこにいるのだから、呼べば来てくれるだろう。
ただ、この前のようになったら、と思うと気が引けてしまう蓮実だった。
でも、今の歩は、とても真剣な表情をしている。もしかしたら・・・そんな思いが、蓮実を動かそうとしている。
「歩くん、少し時間をもらえる?」
「うん、いいよ」
(まずは、みんなに相談してみよう)
「また、来るね。歩くん」
「待ってます」
笑顔を見せる歩は、心なしか楽しみにしているようにも見える。
「あら?哲美」
「よお、蓮実か」
「哲美、歩くんと、知り合いなの?」
「ん?ああ、たった今知り合ったばっかりだけど?なんだ、蓮実、歩ちゃんのこと知ってるのか?」
「うん、知ってるも何も」
「ん?」
「さっき話してた恵くんの幼馴染が歩くんなのよ」
「は?そうなのか、いや、てっきり男の子だと思ってたが、女の子だったのか?」
「あ、話せば長いんだけどね」
「いけね、話っていや、ナースステーション」
「え?まだ、行ってなかったの?」
「あ、うん」
「戻ったら話すわ。詳しい話」
「とにかく、行ってくら」
ぎこちない足取りで、ナースステーションを目指す哲美。
蓮実は、歩の部屋の扉をノックする。
「はい、どうぞ」
振り向く歩は、蓮実を見て笑顔を見せる。
「蓮実お姉さん」
「こんにちは、歩くん」
「炭酸で良かった?」
「ああ、ちょうど飲みたかったんだ、ありがとう」
缶ジュースを差し出す蓮実は、歩の横に腰掛ける。
「また、カカシ?」
「うん、相変わらずだよ」
「そっか」
蓮実も、カカシを見つめる。
「歩くん、哲美とお友達になったの?」
「え?蓮実お姉さん、哲美お姉さんを知ってるの?」
「うん、友達だよ」
「へえ、そうなんだね。優しいお姉さんだよね。蓮実お姉さんと同じだった」
「え?同じ?」
「ん~、笑ってるんだけど、泣いてたみたい」
「泣いてた?て、私も?」
「蓮実お姉さん、いつも、泣いてるよね?」
「ええ?そう見える?」
「うん」
「そうなんだ」
歩が愛おしく思える蓮実は、歩を抱きしめていた。
回された腕を掴む歩。
「いい匂い」
「え?」
「大人の女性の匂い」
「どんな匂いなのか、気になるな」
「なんか、今日はいつもと違う匂いもする」
「え?どんな?」
「この間の男の人の匂いがする」
「え?」
手を離し、腕の匂い嗅ぐ蓮実。
「あれから、歩。この間の男の人が気になってて」
「どうして?」
「恵の匂いがしたんだ」
「え?」
下唇を指で持ち上げる歩。
「違うな、匂いとは少し違うかも」
「歩くん、この間の男の人を覚えてるの?」
「あの時は、すごく怖かったんだけど、恵が悲しい顔をしたんだよね」
「恵くんが?」
「うん、あんな顔の恵、もう見たくないから。ねえ?蓮実お姉さん」
「なに?」
「もう一度、この間の男の人に、僕、会えるかな?」
「え?でも・・・」
「会ってみたいんだ、もう一度」
「会えなくはないけど・・・」
すぐそこにいるのだから、呼べば来てくれるだろう。
ただ、この前のようになったら、と思うと気が引けてしまう蓮実だった。
でも、今の歩は、とても真剣な表情をしている。もしかしたら・・・そんな思いが、蓮実を動かそうとしている。
「歩くん、少し時間をもらえる?」
「うん、いいよ」
(まずは、みんなに相談してみよう)
「また、来るね。歩くん」
「待ってます」
笑顔を見せる歩は、心なしか楽しみにしているようにも見える。
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