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10 自由のために
蓮華の決意
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自由の旗 支部 作戦室
京介からの報告を聞き終え、皆が意見や考えを話し合った。
行き着くところは、サトルに会う事。
会って知っている事全てを語ってもらう事以外、この件の解決策は、見つからなかった。
「私、行きます」
蓮華が立ち上がるのを見た麗美が、蓮華の肩を掴む。
「行くって、いったいどこに行くって言うの?」
「わかりません、ただ、わかっていることが、あるとすれば」
「あるとすれば?」
「異生物の現れるところに、サトルさんが来るという事です」
「かもしれないけど、いったいどこに行こうって言うの?」
「わかりません」
「だったら・・・」
「いいえ、もう私、決めたんです」
「だから、何を?」
「私も異世界からやってくる異生物を退治します」
「退治って言うけど、どうやってその異生物を見つけると言うの?」
蓮華は、いつのまにか、サトルから譲り受けた武具を装着していた。
「麗美さん、これを見てください」
手甲をはめた腕を持ち上げて見せる蓮華。
「手甲が、どうかしたの?」
「気が付きませんか?」
「何を?」
「この手甲には、結晶が練り込まれています」
「だから?」
「よく見てください」
麗美は言われるまま、手甲を見つめる。
小さな粒となって練り込まれている結晶がうっすらと輝いていた。
「光ってる?だとしても、これがどうだと言うの?」
「先程の争いのことです。ダムドさんは、私に似た女を見たと言っていました」
「それが、どうだと言いたいの?」
「おかしくないですか?皆が戦っているのに、刀を打っているなんて」
「ええ、だって、ダムドは鍛治師よ。刀を打つのは当たり前のこと」
「でも、一度は戦さ場に出向いているんですよね?私に似た女を見たと言うくらいですから」
「何が言いたいの?蓮華さん」
「皆が戦っている。しかも、一度は戦さ場に出向いている。なのに鍛冶場で刀を打っている。私なら武器を持って加勢に行きますけど」
「そうかもしれないけど、ダムドは鍛治師よ」
「今、それを確かめたいと思います」
蓮華は、鍛冶場の方に手甲を向けると結晶の輝きが増している。
「もし、この輝きが異生物に反応するとしたら」
「え?まさか、蓮華さん」
鍛冶場へと歩を進める蓮華は、刀を打っているダムドの前で立ち止まる。
手甲の輝きが、辺りを照らし出すほどだった。
「ダムドさん、ごめんなさいね」
蓮華は言うと、手甲に仕込まれた針を一本引き抜くとダムドの腕に突き立てた。
「うがあああ、なな何をするのです」
蓮華は、突き刺した針を引き抜いた。
一瞬、血が飛び散ったが、止めどなく溢れ出る血が、次第に収まったばかりか、傷口が塞がって元の皮膚の状態に戻っていった。
「ダムド?おまえ」
麗美が只事ではないのを理解した。
ダムドは、身体を大きく震わせ始める。
足が靴を破り大きく迫り出してくる。
ダムドの顔も口が獣のように前に伸びてくる。
それを見た皆が身構える。
相手の出方を見ようとしている瞬間。驚くべきことが起きた。
蓮華が何の迷うこともなく、拳でダムドの顔面を力の限り叩きのめしていた。
顔面に沈み込む拳、血飛沫が飛び散る。
蓮華は、ダムドの顔面に沈み込んだ拳で何かを掴もうとまさぐり始める。
手応えがあって、手を引き抜く蓮華。
それと同時に、獣と化したダムドは、絶命した。
蓮華の拳の中で、クネクネとのたうち回るもの。
麗美が、それを見て思い当たるものがあった。
「寄生虫?」
やがて蓮華の手の中で、宿主を失って乾燥し、硬くなる寄生虫。
蓮華が、その拳を皆に見えるように振り返る。
「これで、ハッキリしました。異生物は結晶に反応します」
蓮華は、握った拳に更に力を加える。
バキッ音を立てて、寄生虫が二つに折れて、手から地に落ちた。
それを足で踏みにじる蓮華。
怒りの態度を露わにする蓮華だったが、その頬を涙が流れ落ちている。
十五の時の、忌まわしい記憶が今の蓮華に、そうさせているのかもしれない。
皆が、こんな蓮華を見たことがなかった。それだけに、皆が言葉を失っていた。
蓮華は、静かに、そして深くお辞儀をした。
それから、地上を見上げるように天井を仰いだ。
麗美が蓮華に駆け寄る。
「待って、蓮華さん」
蓮華を捕まえようと伸ばした腕は空を切る。
もうそこには、蓮華の姿はなかった。
誰もが、この時の蓮華に圧倒され、動けずにいた。
京介も、すぐさま我に帰り、後を追ったが、蓮華を見つけることは出来なかった。
京介からの報告を聞き終え、皆が意見や考えを話し合った。
行き着くところは、サトルに会う事。
会って知っている事全てを語ってもらう事以外、この件の解決策は、見つからなかった。
「私、行きます」
蓮華が立ち上がるのを見た麗美が、蓮華の肩を掴む。
「行くって、いったいどこに行くって言うの?」
「わかりません、ただ、わかっていることが、あるとすれば」
「あるとすれば?」
「異生物の現れるところに、サトルさんが来るという事です」
「かもしれないけど、いったいどこに行こうって言うの?」
「わかりません」
「だったら・・・」
「いいえ、もう私、決めたんです」
「だから、何を?」
「私も異世界からやってくる異生物を退治します」
「退治って言うけど、どうやってその異生物を見つけると言うの?」
蓮華は、いつのまにか、サトルから譲り受けた武具を装着していた。
「麗美さん、これを見てください」
手甲をはめた腕を持ち上げて見せる蓮華。
「手甲が、どうかしたの?」
「気が付きませんか?」
「何を?」
「この手甲には、結晶が練り込まれています」
「だから?」
「よく見てください」
麗美は言われるまま、手甲を見つめる。
小さな粒となって練り込まれている結晶がうっすらと輝いていた。
「光ってる?だとしても、これがどうだと言うの?」
「先程の争いのことです。ダムドさんは、私に似た女を見たと言っていました」
「それが、どうだと言いたいの?」
「おかしくないですか?皆が戦っているのに、刀を打っているなんて」
「ええ、だって、ダムドは鍛治師よ。刀を打つのは当たり前のこと」
「でも、一度は戦さ場に出向いているんですよね?私に似た女を見たと言うくらいですから」
「何が言いたいの?蓮華さん」
「皆が戦っている。しかも、一度は戦さ場に出向いている。なのに鍛冶場で刀を打っている。私なら武器を持って加勢に行きますけど」
「そうかもしれないけど、ダムドは鍛治師よ」
「今、それを確かめたいと思います」
蓮華は、鍛冶場の方に手甲を向けると結晶の輝きが増している。
「もし、この輝きが異生物に反応するとしたら」
「え?まさか、蓮華さん」
鍛冶場へと歩を進める蓮華は、刀を打っているダムドの前で立ち止まる。
手甲の輝きが、辺りを照らし出すほどだった。
「ダムドさん、ごめんなさいね」
蓮華は言うと、手甲に仕込まれた針を一本引き抜くとダムドの腕に突き立てた。
「うがあああ、なな何をするのです」
蓮華は、突き刺した針を引き抜いた。
一瞬、血が飛び散ったが、止めどなく溢れ出る血が、次第に収まったばかりか、傷口が塞がって元の皮膚の状態に戻っていった。
「ダムド?おまえ」
麗美が只事ではないのを理解した。
ダムドは、身体を大きく震わせ始める。
足が靴を破り大きく迫り出してくる。
ダムドの顔も口が獣のように前に伸びてくる。
それを見た皆が身構える。
相手の出方を見ようとしている瞬間。驚くべきことが起きた。
蓮華が何の迷うこともなく、拳でダムドの顔面を力の限り叩きのめしていた。
顔面に沈み込む拳、血飛沫が飛び散る。
蓮華は、ダムドの顔面に沈み込んだ拳で何かを掴もうとまさぐり始める。
手応えがあって、手を引き抜く蓮華。
それと同時に、獣と化したダムドは、絶命した。
蓮華の拳の中で、クネクネとのたうち回るもの。
麗美が、それを見て思い当たるものがあった。
「寄生虫?」
やがて蓮華の手の中で、宿主を失って乾燥し、硬くなる寄生虫。
蓮華が、その拳を皆に見えるように振り返る。
「これで、ハッキリしました。異生物は結晶に反応します」
蓮華は、握った拳に更に力を加える。
バキッ音を立てて、寄生虫が二つに折れて、手から地に落ちた。
それを足で踏みにじる蓮華。
怒りの態度を露わにする蓮華だったが、その頬を涙が流れ落ちている。
十五の時の、忌まわしい記憶が今の蓮華に、そうさせているのかもしれない。
皆が、こんな蓮華を見たことがなかった。それだけに、皆が言葉を失っていた。
蓮華は、静かに、そして深くお辞儀をした。
それから、地上を見上げるように天井を仰いだ。
麗美が蓮華に駆け寄る。
「待って、蓮華さん」
蓮華を捕まえようと伸ばした腕は空を切る。
もうそこには、蓮華の姿はなかった。
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