蜃気楼の向こう側

貴林

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1 新たな出会い

手がかりを求めて

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 何かゆかりのあるらしい有名なお寺を過ぎ、しばらくして家々が途切れ始め、この先、何があるのかと、思われるような山の中を進んでいた。
 しばらくすると、蜃気楼光学N研究所と書かれた。看板を見つけ案内に従って、少し細くなった道を進んだ。
舗装はされているが、両側を木々が立ち並ぶ、陽の光が届きにくい道であった。クネクネと蛇行しながら進んだ先に、広く開けたところに出る。
二階建ての建物が、フェンスに囲まれて建っている。

「ついに来たね。大志への足掛かりになるんだ」
建物を遠く見据える真希乃
「うん、もうすぐだよ」
彩花が期待に胸躍らせる真希乃を嬉しそうに見つめる。

正面ゲートを入るとフェンス沿いに駐車スペースがあって、そこにランドクルーザーを停めた。
正面入り口と書かれた場所の脇に受付を見つけ、それに五人は向かった。
メールの相手は、幸島拓海こうじまたくみとある。
受付に着くと、幸島さんに、面会で来たことを告げると、通すように言われているとのことで、幸島の自室へ通された。

廊下を抜け、さまざまな機器が置かれた部屋の脇を通り、幸島拓海 の名札の掛かった部屋に到着した。
コンコンと扉を叩く。返事がない。
もう一度、ノックをするが、やはり返事がない。

恐る恐るドアノブを回す。鍵は掛かっていない。
ゆっくり扉を開ける。軽くキーっと、音を立てて真希乃は入っていく。
「失礼します」
悪いことをしてるような気分だ。何故か小声になっている。

もどかしくなって、堪らず彩花
「失礼します。幸島さんいますか?」
やや大きな声で、呼んでみた。
が、やはり応答がない。

ふと、机の上を見ると、叶大志様 と、書かれたディスクの入ったケースが置かれていた。
俊は、迷うことなくこれを取った。
「少し待ってみる?」
彩花が真希乃を見る。
「そうだね」
肩を落とす真希乃。
なんでもいい、大志に会うための、きっかけが欲しかった。

迂闊うかつに触れてはいけない物が、テーブルの上に並んでいるため、近づく事も出来ず、場違いな居心地の悪さを味わっていた。
「外で待とうか?」
彩花が口を開いた。
皆、同意見だった。

ディスクケースをリュックにしまい、スマホでメールを開く俊。

受付に事情を伝え、駐車場で待つことにした。

「何か、連絡は?」
俊に尋ねる真希乃
ううんと首を振る俊。
(どうなってるんだ、いったい)
少しイライラする真希乃。


バタバタと白衣を着た研究員とおぼしき男性が慌ただしく走っていく。それに続くように、警備員姿の男性が後に続く。
そのあとを、白衣の女性、スーツ姿の男性、次々あとを追う。
受付を見ると、何かあったのか、物々しく、電話対応をしている姿が見えた。

真希乃は、ドアを開け、受付に走り寄った。皆も、後を追う。

電話が終わるのを待って、声をかける。
「何かあったんですか?」
「あ、先程の」
額の汗を拭って、今はそれどころではないと、言わんばかりに
「恐れ入りますが、今日の所は、お引き取り願えませんか?幸島は、急用が出来まして」
と、目を逸らす。

はっとして、真希乃が皆が走っていった方に、駆け出した。
それを見た、受付が
「いけません、ダメです」
聞かずに、四人も後に続いた。
建物の裏側に回ると、人混みが出来ていた。
人混みの隙間に、横たわる白衣の姿を見た。

従業員出入り口、搬入口、喫煙所など、看板が見える。

喫煙所近くに、集中していた。

恐る恐る近づくと、幸島さんの名を呟き、囁く声。むせびなく声、座り込む者、合掌している者。

遠く、何色ものサイレンの音が、聞こえてきた。

真希乃は、状況を理解した。
「そんな・・」
姿を確かめようと、真希乃は一歩を踏み出した。
腕を掴まれ、引き戻されるのを感じ、振り返る。
「ダメ・・ダメだよ」
彩花が、震える手で、真希乃を抑えている。
そんな彩花に寄り添う蓮華。

忍は、俊の視界を塞ぐように、抱き寄しめていた。

通してくださいと、救急隊員が真希乃の脇を通り過ぎ、下がって下さいと警官が真希乃たちを、下がらせる。

「大志・・」
手がかりを失い途方に暮れる真希乃。
大志がまた、遠くに行ってしまった。そんな、思いであった。
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