13 / 96
1 新たな出会い
手がかりを求めて
しおりを挟む
何かゆかりのあるらしい有名なお寺を過ぎ、しばらくして家々が途切れ始め、この先、何があるのかと、思われるような山の中を進んでいた。
しばらくすると、蜃気楼光学N研究所と書かれた。看板を見つけ案内に従って、少し細くなった道を進んだ。
舗装はされているが、両側を木々が立ち並ぶ、陽の光が届きにくい道であった。クネクネと蛇行しながら進んだ先に、広く開けたところに出る。
二階建ての建物が、フェンスに囲まれて建っている。
「ついに来たね。大志への足掛かりになるんだ」
建物を遠く見据える真希乃
「うん、もうすぐだよ」
彩花が期待に胸躍らせる真希乃を嬉しそうに見つめる。
正面ゲートを入るとフェンス沿いに駐車スペースがあって、そこにランドクルーザーを停めた。
正面入り口と書かれた場所の脇に受付を見つけ、それに五人は向かった。
メールの相手は、幸島拓海とある。
受付に着くと、幸島さんに、面会で来たことを告げると、通すように言われているとのことで、幸島の自室へ通された。
廊下を抜け、さまざまな機器が置かれた部屋の脇を通り、幸島拓海 の名札の掛かった部屋に到着した。
コンコンと扉を叩く。返事がない。
もう一度、ノックをするが、やはり返事がない。
恐る恐るドアノブを回す。鍵は掛かっていない。
ゆっくり扉を開ける。軽くキーっと、音を立てて真希乃は入っていく。
「失礼します」
悪いことをしてるような気分だ。何故か小声になっている。
もどかしくなって、堪らず彩花
「失礼します。幸島さんいますか?」
やや大きな声で、呼んでみた。
が、やはり応答がない。
ふと、机の上を見ると、叶大志様 と、書かれたディスクの入ったケースが置かれていた。
俊は、迷うことなくこれを取った。
「少し待ってみる?」
彩花が真希乃を見る。
「そうだね」
肩を落とす真希乃。
なんでもいい、大志に会うための、きっかけが欲しかった。
迂闊に触れてはいけない物が、テーブルの上に並んでいるため、近づく事も出来ず、場違いな居心地の悪さを味わっていた。
「外で待とうか?」
彩花が口を開いた。
皆、同意見だった。
ディスクケースをリュックにしまい、スマホでメールを開く俊。
受付に事情を伝え、駐車場で待つことにした。
「何か、連絡は?」
俊に尋ねる真希乃
ううんと首を振る俊。
(どうなってるんだ、いったい)
少しイライラする真希乃。
バタバタと白衣を着た研究員と思しき男性が慌ただしく走っていく。それに続くように、警備員姿の男性が後に続く。
そのあとを、白衣の女性、スーツ姿の男性、次々あとを追う。
受付を見ると、何かあったのか、物々しく、電話対応をしている姿が見えた。
真希乃は、ドアを開け、受付に走り寄った。皆も、後を追う。
電話が終わるのを待って、声をかける。
「何かあったんですか?」
「あ、先程の」
額の汗を拭って、今はそれどころではないと、言わんばかりに
「恐れ入りますが、今日の所は、お引き取り願えませんか?幸島は、急用が出来まして」
と、目を逸らす。
はっとして、真希乃が皆が走っていった方に、駆け出した。
それを見た、受付が
「いけません、ダメです」
聞かずに、四人も後に続いた。
建物の裏側に回ると、人混みが出来ていた。
人混みの隙間に、横たわる白衣の姿を見た。
従業員出入り口、搬入口、喫煙所など、看板が見える。
喫煙所近くに、集中していた。
恐る恐る近づくと、幸島さんの名を呟き、囁く声。むせびなく声、座り込む者、合掌している者。
遠く、何色ものサイレンの音が、聞こえてきた。
真希乃は、状況を理解した。
「そんな・・」
姿を確かめようと、真希乃は一歩を踏み出した。
腕を掴まれ、引き戻されるのを感じ、振り返る。
「ダメ・・ダメだよ」
彩花が、震える手で、真希乃を抑えている。
そんな彩花に寄り添う蓮華。
忍は、俊の視界を塞ぐように、抱き寄しめていた。
通してくださいと、救急隊員が真希乃の脇を通り過ぎ、下がって下さいと警官が真希乃たちを、下がらせる。
「大志・・」
手がかりを失い途方に暮れる真希乃。
大志がまた、遠くに行ってしまった。そんな、思いであった。
しばらくすると、蜃気楼光学N研究所と書かれた。看板を見つけ案内に従って、少し細くなった道を進んだ。
舗装はされているが、両側を木々が立ち並ぶ、陽の光が届きにくい道であった。クネクネと蛇行しながら進んだ先に、広く開けたところに出る。
二階建ての建物が、フェンスに囲まれて建っている。
「ついに来たね。大志への足掛かりになるんだ」
建物を遠く見据える真希乃
「うん、もうすぐだよ」
彩花が期待に胸躍らせる真希乃を嬉しそうに見つめる。
正面ゲートを入るとフェンス沿いに駐車スペースがあって、そこにランドクルーザーを停めた。
正面入り口と書かれた場所の脇に受付を見つけ、それに五人は向かった。
メールの相手は、幸島拓海とある。
受付に着くと、幸島さんに、面会で来たことを告げると、通すように言われているとのことで、幸島の自室へ通された。
廊下を抜け、さまざまな機器が置かれた部屋の脇を通り、幸島拓海 の名札の掛かった部屋に到着した。
コンコンと扉を叩く。返事がない。
もう一度、ノックをするが、やはり返事がない。
恐る恐るドアノブを回す。鍵は掛かっていない。
ゆっくり扉を開ける。軽くキーっと、音を立てて真希乃は入っていく。
「失礼します」
悪いことをしてるような気分だ。何故か小声になっている。
もどかしくなって、堪らず彩花
「失礼します。幸島さんいますか?」
やや大きな声で、呼んでみた。
が、やはり応答がない。
ふと、机の上を見ると、叶大志様 と、書かれたディスクの入ったケースが置かれていた。
俊は、迷うことなくこれを取った。
「少し待ってみる?」
彩花が真希乃を見る。
「そうだね」
肩を落とす真希乃。
なんでもいい、大志に会うための、きっかけが欲しかった。
迂闊に触れてはいけない物が、テーブルの上に並んでいるため、近づく事も出来ず、場違いな居心地の悪さを味わっていた。
「外で待とうか?」
彩花が口を開いた。
皆、同意見だった。
ディスクケースをリュックにしまい、スマホでメールを開く俊。
受付に事情を伝え、駐車場で待つことにした。
「何か、連絡は?」
俊に尋ねる真希乃
ううんと首を振る俊。
(どうなってるんだ、いったい)
少しイライラする真希乃。
バタバタと白衣を着た研究員と思しき男性が慌ただしく走っていく。それに続くように、警備員姿の男性が後に続く。
そのあとを、白衣の女性、スーツ姿の男性、次々あとを追う。
受付を見ると、何かあったのか、物々しく、電話対応をしている姿が見えた。
真希乃は、ドアを開け、受付に走り寄った。皆も、後を追う。
電話が終わるのを待って、声をかける。
「何かあったんですか?」
「あ、先程の」
額の汗を拭って、今はそれどころではないと、言わんばかりに
「恐れ入りますが、今日の所は、お引き取り願えませんか?幸島は、急用が出来まして」
と、目を逸らす。
はっとして、真希乃が皆が走っていった方に、駆け出した。
それを見た、受付が
「いけません、ダメです」
聞かずに、四人も後に続いた。
建物の裏側に回ると、人混みが出来ていた。
人混みの隙間に、横たわる白衣の姿を見た。
従業員出入り口、搬入口、喫煙所など、看板が見える。
喫煙所近くに、集中していた。
恐る恐る近づくと、幸島さんの名を呟き、囁く声。むせびなく声、座り込む者、合掌している者。
遠く、何色ものサイレンの音が、聞こえてきた。
真希乃は、状況を理解した。
「そんな・・」
姿を確かめようと、真希乃は一歩を踏み出した。
腕を掴まれ、引き戻されるのを感じ、振り返る。
「ダメ・・ダメだよ」
彩花が、震える手で、真希乃を抑えている。
そんな彩花に寄り添う蓮華。
忍は、俊の視界を塞ぐように、抱き寄しめていた。
通してくださいと、救急隊員が真希乃の脇を通り過ぎ、下がって下さいと警官が真希乃たちを、下がらせる。
「大志・・」
手がかりを失い途方に暮れる真希乃。
大志がまた、遠くに行ってしまった。そんな、思いであった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る
はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。
そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。
幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。
だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。
はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。
彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。
いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。
川嶋マサヒロ
恋愛
「僕たちの婚約を破棄しよう」
愛しき婚約者は無情にも、予測していた言葉を口にした。
伯爵令嬢のバシュラール・ディアーヌは婚約破棄を宣告されてしまう。
「あの女のせいです」
兄は怒り――。
「それほどの話であったのか……」
――父は呆れた。
そして始まる貴族同士の駆け引き。
「ディアーヌの執務室だけど、引き払うように通達を出してくれ。彼女も今は、身の置き所がないだろうしね」
「我が家との取引を中止する? いつでも再開できるように、受け入れ体勢は維持するように」
「決闘か……、子供のころ以来だよ。ワクワクするなあ」
令嬢ディアーヌは、残酷な現実を覆せるのか?
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる