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1 新たな出会い
大志の妹、俊(すぐる)
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大志が、姿を消した後、一応警察には知らせ、状況を説明したが、どうにも、事件性がないため、失踪扱いとなった。
ふらりと帰ってくるかもという事で、失踪届けも後日改めてということになった。
結局のところ、僕たちの話は、信用されていないという事だ。
もっとも、あの状態は人の力でどうこうなるレベルでないことは、わかっていたので当てにはしていなかったが
あの状態をなんとか出来る人など存在するのだろうか。
・
昨日のことがあって、真希乃と蓮華の距離が少し縮んだようだ。
「おはよう」
真希乃が声をかけると、うん、とうなづく蓮華だった。
目が合うのを、避けるように、背を向けてしまうが、やや振り返って
「大志さん、見つかるといいですね」
気遣ってくれる。
昼時間に三人は、もう一度、旧校舎のあの場所に向かった。
何か、痕跡はないかと探したが何もなかった。
手がかりがないまま、放課後を迎え、とりあえず、大志の家に出向くことにした。
・
叶 の一文字だけの表札が、掲げられた玄関。
チャイムを押す。扉の向こうで、ピンポンと鳴っている。
スピーカーから、返事がない。
留守かな?と周囲を探ってみた。なんの気配もない。
諦めて引き返そうとすると
「真希乃兄ちゃん?それに彩花姉ちゃん」
見ると
大志の妹で中学一年生の叶俊十三歳が、袴姿に弓と矢筒を肩に下げ立っていた。
「俊ちゃんか、なんだか久しぶりだね。あ・・、ごめんね、あの」
俊は、大きく首を振った。
「真希乃お兄ちゃんが気にすることじゃないよ。お兄ちゃんなら、大丈夫。ここぞって時は、知恵が働く人だから」
ふふんと笑ってみせる俊。
「そうだ、ちょうど良かった。見せたい物があるんですけど、上がりませんか?」
玄関の鍵を開け、靴を片付けてスペースを作る俊。
「どうぞ、親が海外なもので、何のもてなしも出来ませんが」
真希乃は、感心した。
「出来た子だなあ」
彩花が肘で真希乃をつつく
「誰かさんとは、大違い」
この様子を見て、蓮華がクスリと笑う。
三人とも、靴を脱ぎ一段上がると銘々に、靴を揃えた。
お邪魔します と、久しぶりの大志の家だった。きちんと片付けがされている。
叶家の親は、海外にいる為、大志と俊の二人暮らしであった。
俊は、三人をソファに案内すると、お盆に乗せた三つのコップともう片方の手には麦茶の入った冷茶ポットを持ってきた。
コップに麦茶を注ぐと、それぞれに差し出した。
三人とも、申し訳なさそうにお辞儀をした。
「どうぞ。ちょっと、着替えてきますので、楽にしてください」
お盆を胸に抱え、一礼すると、お盆を食卓に置くと二階の自室に、上がっていった。
「あれ、大志の妹だよな?」
「しばらく見ないうちに、大人になってる」
「優美なお嬢様ですね」
ソファではなく、床に正座をする三人であった。
しばらくすると、トントントンと、俊が階段を降りてきた。
「お待たせしました」
三人は、俊を見るなり驚愕した。
I'M CRAZYの文字がプリントされた黒のティーシャツに、ピンクの短パンを履きキャップを後ろ向きに被っていた。
「みなさん、どうかしました?」
首をブンブンと振る三人。
「じゃ、付いてきて下さい」
と背を向け二階に上がる俊。
またまた、三人がさらに驚愕した。
背中には、FUCK YOU!!!の文字。
ふらりと帰ってくるかもという事で、失踪届けも後日改めてということになった。
結局のところ、僕たちの話は、信用されていないという事だ。
もっとも、あの状態は人の力でどうこうなるレベルでないことは、わかっていたので当てにはしていなかったが
あの状態をなんとか出来る人など存在するのだろうか。
・
昨日のことがあって、真希乃と蓮華の距離が少し縮んだようだ。
「おはよう」
真希乃が声をかけると、うん、とうなづく蓮華だった。
目が合うのを、避けるように、背を向けてしまうが、やや振り返って
「大志さん、見つかるといいですね」
気遣ってくれる。
昼時間に三人は、もう一度、旧校舎のあの場所に向かった。
何か、痕跡はないかと探したが何もなかった。
手がかりがないまま、放課後を迎え、とりあえず、大志の家に出向くことにした。
・
叶 の一文字だけの表札が、掲げられた玄関。
チャイムを押す。扉の向こうで、ピンポンと鳴っている。
スピーカーから、返事がない。
留守かな?と周囲を探ってみた。なんの気配もない。
諦めて引き返そうとすると
「真希乃兄ちゃん?それに彩花姉ちゃん」
見ると
大志の妹で中学一年生の叶俊十三歳が、袴姿に弓と矢筒を肩に下げ立っていた。
「俊ちゃんか、なんだか久しぶりだね。あ・・、ごめんね、あの」
俊は、大きく首を振った。
「真希乃お兄ちゃんが気にすることじゃないよ。お兄ちゃんなら、大丈夫。ここぞって時は、知恵が働く人だから」
ふふんと笑ってみせる俊。
「そうだ、ちょうど良かった。見せたい物があるんですけど、上がりませんか?」
玄関の鍵を開け、靴を片付けてスペースを作る俊。
「どうぞ、親が海外なもので、何のもてなしも出来ませんが」
真希乃は、感心した。
「出来た子だなあ」
彩花が肘で真希乃をつつく
「誰かさんとは、大違い」
この様子を見て、蓮華がクスリと笑う。
三人とも、靴を脱ぎ一段上がると銘々に、靴を揃えた。
お邪魔します と、久しぶりの大志の家だった。きちんと片付けがされている。
叶家の親は、海外にいる為、大志と俊の二人暮らしであった。
俊は、三人をソファに案内すると、お盆に乗せた三つのコップともう片方の手には麦茶の入った冷茶ポットを持ってきた。
コップに麦茶を注ぐと、それぞれに差し出した。
三人とも、申し訳なさそうにお辞儀をした。
「どうぞ。ちょっと、着替えてきますので、楽にしてください」
お盆を胸に抱え、一礼すると、お盆を食卓に置くと二階の自室に、上がっていった。
「あれ、大志の妹だよな?」
「しばらく見ないうちに、大人になってる」
「優美なお嬢様ですね」
ソファではなく、床に正座をする三人であった。
しばらくすると、トントントンと、俊が階段を降りてきた。
「お待たせしました」
三人は、俊を見るなり驚愕した。
I'M CRAZYの文字がプリントされた黒のティーシャツに、ピンクの短パンを履きキャップを後ろ向きに被っていた。
「みなさん、どうかしました?」
首をブンブンと振る三人。
「じゃ、付いてきて下さい」
と背を向け二階に上がる俊。
またまた、三人がさらに驚愕した。
背中には、FUCK YOU!!!の文字。
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