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第一章 五大元素の術
第六話 怪鳥 クエル
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程なくして村に着いて皆は絶望した。
村は全滅していた。畑は枯れ、家畜は皆正気を抜かれ、人々もまた同じであった。
マリカが顔を手で覆う。
タクトがマリカの肩を抱く。
タクトに顔を埋めるマリカ。
サマナが枝に、なんとか生き延びていた小鳥が飛んできてに、何やら囁く。小鳥はパタパタと飛んで行った。
うーん、と唸るサマナ。
「上から世界を見てみないか?」
タクトが上?と空を見上げる。
「出来ませんよ、そんなこと」
「ほお、ならタクトはここに残れ」
「えええ、そんなぁ」
ガハハハと笑うサマナ。
すると遠くからバサバサと羽音が聞こえてくる。
一瞬、サマナが影に覆われた。雲にでも隠れたかな?と思うと
キエーーーと、怪鳥の声。
バサバサと羽ばたくそれは、風を起こしサマナの枝から葉をむしり取り、危うく、タクトたちは振り落とされそうになる。
大きな怪鳥は片足だけで家一軒を踏み潰すと、ドサンと地に降り立った。
「おっと、これは、失礼」
サマナが、怪鳥に声をかける。
「構うことはないさ。お主も無事で何よりじゃの」
「よお、サマナ。おいらに乗せたいってのは、こいつらか?」
「ああ、そういうことになるかな。クエル。急な頼みだが頼めるか?気に入らなかったら、途中で放ってもいいぞ」
えっとなるタクトたち。
怪鳥はクエルというらしい、くちばしを大きく開くと
「あはははは、相変わらず、口の悪い親父だな。サマナの冗談だよ。それはさておき、乗るのか?乗らないのか?」
皆が慌てて、サマナから降りた。
ハヤネが少し元気になったようだ。
ナルセが手を貸す。
「歩けるか?」
「ええ、大丈夫。それより、サユミはどう?」
ナルセが、首を横に振ってみせる。
サマナが不思議そうに言う。
「おかしいのお、そろそろ目を覚ましてもいい頃だが」
サマナが肩を振るように枝を振った。
ボタボタと木の実が落ちる。
「タクト、それをサユミに食べさせてみろ」
小振りなりんごといったところだろう。
タクトが、それを拾うとサユミの口元に、持って行った。
「サユミ、食べて」
微かだが反応するサユミ。唇に実が触れると口を開け、かじってみせた。
モグモグと口を動かすとゴクリと飲み込んだ。
ゆっくりと目を開くサユミ。
「おお、サユミ。大丈夫か?」
口の周りをペロリと舐め回すサユミ。
「今、すごく美味しい夢を見たよ」
ふふっと笑うマリカ。
タクトがまったくこれだよっと、呆れて見せると残りをサユミの口に押し込んだ。ハグッとかじるとムシャムシャと夢中になった。
サユミが虚ろな目でサマナを見て目を丸くしている。開きっぱなし口から、木の実が、こぼれ落ちそうだ。
「美味かったか?私の実は」
いきなり語り始めたから、サユミはひっくり返ってしまった。
「ななな、なに?」
クエッと今度は鳴き声。
振り返ると大きなくちばしがサユミの目の前に。
サユミは、またまたひっくり返った。
「わわわ、今度は何?」
マリカ、タクト、ハヤネ、ナルセは大笑いをしている。
「みんなして何よ。どうなってるの、いったい」
目を丸くしたまま、状況がまったくわからないサユミであった。
マリカが涙目を擦りながら
「ごめんごめん、今説明するね」
カクカクシカジカ、これまでのことを話して聞かせた。
「そんなことがあったんだ」
周囲を見回すサユミ。
クエルが話し始める。
「で、乗るのか?乗らないのか?」
サマナが枝を振り見送る。
「それではの、タクト。いつか、また会おう。皆も達者でな」
「はい、ありがとうサマナ」
大きく手を振るタクトと仲間たち。
皆を背に乗せてクエルが大きな羽根を広げて飛び立つ。
一つ羽ばたく度に加速し、風圧が皆を押しつける。
あっという間に雲が近くなった。
太陽に届くのではないかと誰もが思った。遠く小さな村を見下ろす。灰色の色のない世界。まるで、墨で書かれた地図のようだった。
村の様子はおろか国全体だけでなく大陸全土がゴーストウォーカーに寄って全ての生を奪われ灰色と化していた。
怪鳥クエルの背に乗ったサユミたちは、生まれ育ったイーストグラスランドを後にするしか他になかった。
焦土と化したこの大地に今は休めるところなどなかった。
遥か下の方に、生まれた村が見え、一度、消えていた雲霧が、再び国を覆い始めているのが見える。
白黒の世界で一箇所だけ緑の部分があった。
サマナである。
やがて、それは色が抜けて灰色になった。
雲霧に飲み込まれるサマナ。
タクトが叫ぶ。
「サマナーー」
タクトの目から涙がこぼれる。
「ごめんなさい。僕がいけなかったんだ。あんなお願いをしたから」
自分を責めるタクト。
クエルが口を開く。
「タクト、それは違うぞ」
「え」
「サマナは、タクトと同じように仲間といたかったんだよ、きっと。それに、それにね、死んだわけじゃない」
サユミがタクトの手に手を重ねる。
「そうか・・・抜魂。生気を抜かれただけ。・・・だけど」
「私たちが取り戻そう。無くした全てを。奪われた全てを」
皆が、それぞれの家族や友人を想い、目を閉じる。
村は全滅していた。畑は枯れ、家畜は皆正気を抜かれ、人々もまた同じであった。
マリカが顔を手で覆う。
タクトがマリカの肩を抱く。
タクトに顔を埋めるマリカ。
サマナが枝に、なんとか生き延びていた小鳥が飛んできてに、何やら囁く。小鳥はパタパタと飛んで行った。
うーん、と唸るサマナ。
「上から世界を見てみないか?」
タクトが上?と空を見上げる。
「出来ませんよ、そんなこと」
「ほお、ならタクトはここに残れ」
「えええ、そんなぁ」
ガハハハと笑うサマナ。
すると遠くからバサバサと羽音が聞こえてくる。
一瞬、サマナが影に覆われた。雲にでも隠れたかな?と思うと
キエーーーと、怪鳥の声。
バサバサと羽ばたくそれは、風を起こしサマナの枝から葉をむしり取り、危うく、タクトたちは振り落とされそうになる。
大きな怪鳥は片足だけで家一軒を踏み潰すと、ドサンと地に降り立った。
「おっと、これは、失礼」
サマナが、怪鳥に声をかける。
「構うことはないさ。お主も無事で何よりじゃの」
「よお、サマナ。おいらに乗せたいってのは、こいつらか?」
「ああ、そういうことになるかな。クエル。急な頼みだが頼めるか?気に入らなかったら、途中で放ってもいいぞ」
えっとなるタクトたち。
怪鳥はクエルというらしい、くちばしを大きく開くと
「あはははは、相変わらず、口の悪い親父だな。サマナの冗談だよ。それはさておき、乗るのか?乗らないのか?」
皆が慌てて、サマナから降りた。
ハヤネが少し元気になったようだ。
ナルセが手を貸す。
「歩けるか?」
「ええ、大丈夫。それより、サユミはどう?」
ナルセが、首を横に振ってみせる。
サマナが不思議そうに言う。
「おかしいのお、そろそろ目を覚ましてもいい頃だが」
サマナが肩を振るように枝を振った。
ボタボタと木の実が落ちる。
「タクト、それをサユミに食べさせてみろ」
小振りなりんごといったところだろう。
タクトが、それを拾うとサユミの口元に、持って行った。
「サユミ、食べて」
微かだが反応するサユミ。唇に実が触れると口を開け、かじってみせた。
モグモグと口を動かすとゴクリと飲み込んだ。
ゆっくりと目を開くサユミ。
「おお、サユミ。大丈夫か?」
口の周りをペロリと舐め回すサユミ。
「今、すごく美味しい夢を見たよ」
ふふっと笑うマリカ。
タクトがまったくこれだよっと、呆れて見せると残りをサユミの口に押し込んだ。ハグッとかじるとムシャムシャと夢中になった。
サユミが虚ろな目でサマナを見て目を丸くしている。開きっぱなし口から、木の実が、こぼれ落ちそうだ。
「美味かったか?私の実は」
いきなり語り始めたから、サユミはひっくり返ってしまった。
「ななな、なに?」
クエッと今度は鳴き声。
振り返ると大きなくちばしがサユミの目の前に。
サユミは、またまたひっくり返った。
「わわわ、今度は何?」
マリカ、タクト、ハヤネ、ナルセは大笑いをしている。
「みんなして何よ。どうなってるの、いったい」
目を丸くしたまま、状況がまったくわからないサユミであった。
マリカが涙目を擦りながら
「ごめんごめん、今説明するね」
カクカクシカジカ、これまでのことを話して聞かせた。
「そんなことがあったんだ」
周囲を見回すサユミ。
クエルが話し始める。
「で、乗るのか?乗らないのか?」
サマナが枝を振り見送る。
「それではの、タクト。いつか、また会おう。皆も達者でな」
「はい、ありがとうサマナ」
大きく手を振るタクトと仲間たち。
皆を背に乗せてクエルが大きな羽根を広げて飛び立つ。
一つ羽ばたく度に加速し、風圧が皆を押しつける。
あっという間に雲が近くなった。
太陽に届くのではないかと誰もが思った。遠く小さな村を見下ろす。灰色の色のない世界。まるで、墨で書かれた地図のようだった。
村の様子はおろか国全体だけでなく大陸全土がゴーストウォーカーに寄って全ての生を奪われ灰色と化していた。
怪鳥クエルの背に乗ったサユミたちは、生まれ育ったイーストグラスランドを後にするしか他になかった。
焦土と化したこの大地に今は休めるところなどなかった。
遥か下の方に、生まれた村が見え、一度、消えていた雲霧が、再び国を覆い始めているのが見える。
白黒の世界で一箇所だけ緑の部分があった。
サマナである。
やがて、それは色が抜けて灰色になった。
雲霧に飲み込まれるサマナ。
タクトが叫ぶ。
「サマナーー」
タクトの目から涙がこぼれる。
「ごめんなさい。僕がいけなかったんだ。あんなお願いをしたから」
自分を責めるタクト。
クエルが口を開く。
「タクト、それは違うぞ」
「え」
「サマナは、タクトと同じように仲間といたかったんだよ、きっと。それに、それにね、死んだわけじゃない」
サユミがタクトの手に手を重ねる。
「そうか・・・抜魂。生気を抜かれただけ。・・・だけど」
「私たちが取り戻そう。無くした全てを。奪われた全てを」
皆が、それぞれの家族や友人を想い、目を閉じる。
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