12 / 25
目撃した人
全校集会
しおりを挟む
私は生徒たちのことを自分の子どものように大切に思っている。だからうちの学校の生徒に手を出した奴は許さない。絶対に。
「おはようございます」
「おはよう」
「おはようございます! 先生」
「おう、おはよう峯岸、今日も元気だな」
「おはようございまーす」
「ああ、おはよう」
春の訪れを感じる気持ちのいい朝。大勢の生徒たちが学校の門を通るのを見守る。今日も特に問題なくみんな通学してきているようだ。
毎朝学校にやってくる彼女たちの姿を見ると、今日も新しい一日が始まるなあとしみじみ思う。
この学校に来てもう15年になる。就職活動に苦戦していたところ、親戚の紹介で働くことになった市内のお嬢様高校。やはり「お嬢様高校」と言われるだけあって周りの学校よりも比較的平和な学校だと思う。
いじめ等の問題が全くないかというとそういう訳でもない。残念ながら子どもだから、いや、人間だから仕方がないのかもしれない。
しかし、大きな問題になる前に発見、対処ができているため保護者も安心して子どもを通わせてくれている。今後もいじめを0にすることはきっとできないだろう。でも、限りなく0にすることはできる。
気がつけばアラフォー、彼女はいない。もちろん結婚の予定なんてない。言い訳ではないが仕事が忙しくて恋愛をする余裕がないのだ。でもおれはこの仕事にやりがいを感じている。
生徒はみんないい子たちだ。女子校という事もあり特有の苦労もあるが生徒たちの成長する姿を見るのは楽しい。卒業式は恥ずかしい話だが毎年泣いている。
女子校で働いていたらもしかしておれのことを好きになってくれる生徒が……なんて働き出した時は思っていた。それは否定できない。しかし、その考えはすぐに消えた。それはもう一瞬で。
私からすると生徒は我が子だ。気持ち悪いと思われそうだから絶対に口には出さないが父親になった気持ちで生徒たちと接している。だから、万が一何かあった場合には生徒を守るために全力を尽くすつもりだ。
『…………という訳です。だから皆さん、時間や場所に関係なく歩きながらスマートフォンを見ないように。それから夜に出歩く時は背後に十分に気をつけるように。私からの話は以上です』
『宮田先生、ありがとうございました。それでは次のプログラムです。次は……』
放送部のアナウンスを聞きながら私は体育館のステージから降りた。
体育館での全校集会。私は生徒指導担当として歩きスマホを注意する事にした。ここ最近、歩きスマホをしている人の事故が学校周辺で相次いでいるからだ。
まだうちの生徒は被害にあっていない。しかし被害が出てからでは遅いと思い全校集会で時間をとってもらった。備えるに越したことはない。
パトロール男。
一部の生徒たちの間で流行っている都市伝説だ。夜間に歩きながらスマートフォンを見ていると後ろから突き飛ばされるらしい。まだそれほど広がっていない話らしいが私にこの話を教えてくれた生徒たちはみんな信じているようだった。
きっとこの都市伝説を隠れ蓑にしてよからぬ事をしている奴がいるのだろう。腹立たしいことだ。都市伝説? そんなもの作り話に決まっている。私は犯人を捕まえてでも生徒たちの安全を守らなければいけない。
そんな事を考えていた二週間後だ。我が校の生徒が事故にあったという報告が入ったのは。
「おはようございます」
「おはよう」
「おはようございます! 先生」
「おう、おはよう峯岸、今日も元気だな」
「おはようございまーす」
「ああ、おはよう」
春の訪れを感じる気持ちのいい朝。大勢の生徒たちが学校の門を通るのを見守る。今日も特に問題なくみんな通学してきているようだ。
毎朝学校にやってくる彼女たちの姿を見ると、今日も新しい一日が始まるなあとしみじみ思う。
この学校に来てもう15年になる。就職活動に苦戦していたところ、親戚の紹介で働くことになった市内のお嬢様高校。やはり「お嬢様高校」と言われるだけあって周りの学校よりも比較的平和な学校だと思う。
いじめ等の問題が全くないかというとそういう訳でもない。残念ながら子どもだから、いや、人間だから仕方がないのかもしれない。
しかし、大きな問題になる前に発見、対処ができているため保護者も安心して子どもを通わせてくれている。今後もいじめを0にすることはきっとできないだろう。でも、限りなく0にすることはできる。
気がつけばアラフォー、彼女はいない。もちろん結婚の予定なんてない。言い訳ではないが仕事が忙しくて恋愛をする余裕がないのだ。でもおれはこの仕事にやりがいを感じている。
生徒はみんないい子たちだ。女子校という事もあり特有の苦労もあるが生徒たちの成長する姿を見るのは楽しい。卒業式は恥ずかしい話だが毎年泣いている。
女子校で働いていたらもしかしておれのことを好きになってくれる生徒が……なんて働き出した時は思っていた。それは否定できない。しかし、その考えはすぐに消えた。それはもう一瞬で。
私からすると生徒は我が子だ。気持ち悪いと思われそうだから絶対に口には出さないが父親になった気持ちで生徒たちと接している。だから、万が一何かあった場合には生徒を守るために全力を尽くすつもりだ。
『…………という訳です。だから皆さん、時間や場所に関係なく歩きながらスマートフォンを見ないように。それから夜に出歩く時は背後に十分に気をつけるように。私からの話は以上です』
『宮田先生、ありがとうございました。それでは次のプログラムです。次は……』
放送部のアナウンスを聞きながら私は体育館のステージから降りた。
体育館での全校集会。私は生徒指導担当として歩きスマホを注意する事にした。ここ最近、歩きスマホをしている人の事故が学校周辺で相次いでいるからだ。
まだうちの生徒は被害にあっていない。しかし被害が出てからでは遅いと思い全校集会で時間をとってもらった。備えるに越したことはない。
パトロール男。
一部の生徒たちの間で流行っている都市伝説だ。夜間に歩きながらスマートフォンを見ていると後ろから突き飛ばされるらしい。まだそれほど広がっていない話らしいが私にこの話を教えてくれた生徒たちはみんな信じているようだった。
きっとこの都市伝説を隠れ蓑にしてよからぬ事をしている奴がいるのだろう。腹立たしいことだ。都市伝説? そんなもの作り話に決まっている。私は犯人を捕まえてでも生徒たちの安全を守らなければいけない。
そんな事を考えていた二週間後だ。我が校の生徒が事故にあったという報告が入ったのは。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【本当にあった怖い話】
ねこぽて
ホラー
※実話怪談や本当にあった怖い話など、
取材や実体験を元に構成されております。
【ご朗読について】
申請などは特に必要ありませんが、
引用元への記載をお願い致します。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
ゴーストバスター幽野怜
蜂峰 文助
ホラー
ゴーストバスターとは、霊を倒す者達を指す言葉である。
山奥の廃校舎に住む、おかしな男子高校生――幽野怜はゴーストバスターだった。
そんな彼の元に今日も依頼が舞い込む。
肝試しにて悪霊に取り憑かれた女性――
悲しい呪いをかけられている同級生――
一県全体を恐怖に陥れる、最凶の悪霊――
そして、その先に待ち受けているのは、十体の霊王!
ゴーストバスターVS悪霊達
笑いあり、涙あり、怒りありの、壮絶な戦いが幕を開ける!
現代ホラーバトル、いざ開幕!!
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる