ずっと、ずっと

みみみ

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ずっと、ずっと、

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「傷跡には触れへんで。」
そう言われた。その傷跡は、彼が軍人としての生命を断った原因となったものだと聞いていた。俺は彼の言葉に少しだけ驚いたが、それに気が付かれないようにポーカーフェイスを保つ。俺は彼の言葉に答えるようにゆっくりと頷き、傷口を避けるように彼の体に触れた。彼のヒトとしての温もりが掌に伝わり、指先がじんわりと熱を持った。
「これ、いつできた傷なん。」
思わず聞いていた。彼は俺の言葉に、ふふ、と小さな声を上げて笑う。寂しそうな笑みに聞こえた。
「俺の相棒が、俺を裏切ったときに付けた傷。」
聞かなければ良かったと、俺は一瞬後悔した。誰にでも触れられたくない過去の1つや2つはあって、自分はそれに触れてしまったのだと思った。けれど、直ぐに考え直す事にした。恋人として、できる限り相手の哀しみには寄り添いたい。そう考えれば、この過去に触れられた事は案外悪い事ではないように思えた。
「なぁ、この傷、まだ痛むん。」
俺は続けてそう聞いた。彼であれば、本当に言いたく無いことは口を噤むだろうという判断からだった。
「…うん。」
彼の答えはyesだった。と同時に、彼は苦虫を噛み潰したような顔をした。急な表情の変化に俺は慌てる。
「ご、ごめん。そ、そんな、無理矢理聞き出したかった訳ちゃうねん。」
あまりにも酷い慌てっぷりに、自分で自分が少しだけ嫌になった。彼はそんな俺の様子に緩く微笑む。
「…別に、お前が無理矢理聞き出したわけちゃうよ。そんな気にせんで。」
緩いほほえみの奥には哀愁が光っている気がして、俺は何も言えなかった。


傷口がまだ痛むだなんて、本当は、言わないつもりだったのだ。
未だにあの日を思い出す、なんて。
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