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白き光
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――今のは、トリカを助けたのは竜騎士のミンシー。それにも驚いたけど、どうしてあたいに。
「……ちょっと待ってエメール、モント」
「うおぉ……っとネモネア・プリンセス?」
「ネモネア、戦えっ、アクアン老師の仇を」
「……あんた達にまだ言ってないことがあった」
「言ってないこと、こんな時にまたか」
「たのむ、あたいに誰も近づけないように守ってほしい」
――アヴエロとソレイルの頭を掴み、魔王は回転しながら2人を投げ飛ばす。
「くっ、死んで、たまるかぁっ!」
「ソレイル無理しないで、ハァ、ハァ……アクアン老師、今回の相手はキツイです……光?」
弱音を吐くアヴエロ、でも気がついた光の方を向くと白く輝くあたいに気がついた……。
「あ、あの光はあの時の、まさか……だめだっ、ネモネアッ!」
駆け寄ると前にエメールが立ち塞がる。
「エメールさんどいてください、ネモネアが!」
「駄目です」
「どうしてだエメールさん、今は仲間で揉めている場合じゃないんだ、どいてください!」
「退けません、それがネモネア・プリンセスの望みですから」
「望みだって……そんな、ネモネアッ!」
「うくっ……」
意識が薄れるのを感じる。やっぱり城下町が観えたのは……。これはあたいの望みでエメールやモントに隠していたこと、それは。
「――女神の命……」
「うん、あたいは一度死んだ。でも一つ目邪獣に封印されていた女神フラデーアは解いてくれた御礼に勇者たちの願いを叶えた」
「……それが、その戦で散ったネモネア・プリンセスの、命……」
「そうなんだエメール……その後は激しいトラウマに苦しんだけど……こうして女神の命によってあたいは生き返った」
一瞬の静寂。
「ネモネア・プリンセスは、やはり一度死んでいた」
「ごめん黙ってて」
「……そんなことは……いまさらいい、ネモネアの考えがあってのことだろう。それでどうするつもりだ」
「ありがとモント。それは……」
この命を、女神に返す……。
「これしか手がないんですよ……勇者アヴエロ」
「そんな、それじゃネモネアは……」
「ソレイル・プリンセスとスオーロさんが魔王に苦戦しています、戦ってくださいっ!」
「ぐうっ……」
「御つらいでしょうが、これでは魔王が世界を握ってしまう、だから戦って貴方の使命を果たしてください、勇者アヴエロッ!」
「うあぁぁぁーっ!」
叫びながら魔王シャンイレールに殺られそうなソレイルとスオーロの元へ走っていく。
「はぁ……はぁ、ごめん、ね……アヴ、エロ」
「ネモネア!」
「だい……じょうぶ……モン、ト」
命に意識するたびにどんどん視界が薄れて白くなっていく。死ぬなんて嫌だけど……だけど、なんかあたたかくて、気持ちよくなってくる……。
「あぁあっ!」
「ソレイルッ、くう!」
吹き飛ぶソレイルを身体で受け止めたスオーロ。
「スオーロ、ごめんなさい」
「気にするな、アヴエロ、ネモネアは……」
「ソレイル、スオーロ……」
「そうか……あれは恐らく」
スオーロはアヴエロの哀しく諦めたような顔を見て全てを悟ったみたい。
「はぁ、はぁ……もう、だめ……」
せっかく会えたのに、こんなのって……、
でも冒険たのしかったな……、
エメールとモントにあってちょっと勇者気分だったし……、
あきらめないでアヴエロにだって会えたんだから……、
こんな事になっちゃったけど……あたいの変わりに魔王を倒して女神フラデーア、
みんな、さようなら……。
「うわぁぁぁっ!」
「どうした涙を流して」
アヴエロを避けて後ろから仕掛ける魔王シャンイレール、だがその更に後ろから飛び込んだソレイル、モント、エメール。
「「はぁああっ!」」
「フフッ、ハッハーッ!」
1人ひとりを順番づつ痛めつけていく。それでも倒れないのは命を捨てて救ってくれたアクアン老師のため。
「ちくしょ……え、剣がっ!」
「ううっ……あたしの盾も!」
「私のクラウンも」
「師匠の、マントもです!」
突如持っていた剣に盾、装備していたクラウンに羽衣までが光に包まれて何処かへ飛んでいく。
「フンッ、女神にでも見捨てられたか……ん」
腕を組んで呆れた矢先に魔王シャンイレールも気がついた謎の光。倒れているアヴエロ、ソレイル、モント、エメール、それらを回復していたスオーロたちはその光を発して浮かんでいる白いローブの女性に目を向けた。
『魔王シャンイレール……』
「その声は……女神フラデーア? 何故だっ、あのとき確実に貴様は散った」
浮かんでいる女神フラデーアに、自身も浮いて近づいた魔王シャンイレール。しかし眉間にしわを寄せ納得いかずイライラしていた。
「猿芝居だったとでも言うつもりか……女神フラデーアッ、言えっ、何故貴様がいきているっ!」
「……私は死にました。それは変わりません」
「ならその姿は……魔族の女?」
「そう、この肉体は魔族の娘ネモネアのもの。私の身体は消滅しましたが、ネモネアを生き返らせたときに渡した魂で、まさか私が救われるなんて思ってもいなかった」
「なるほどしぶとい女だ、フッフッフッ……ハッハッハッハッハッ」
「シャンイレール、なにがおかしいのです」
そのとき魔王は腕に力を、魔力を発する。すると紫雲から激しい雷鳴と強風が吹き荒れた。まるで自然が魔王に怯えるように。
「では、もう一度殺してやろ女神フラデーア」
すると静かに女神フラデーアから白く輝く力が覆う。そして女神の剣、盾、クラウンにマントを装備して戦闘態勢に入った。
「もう、やられません……」
光と闇は再び衝突した……。
「……ちょっと待ってエメール、モント」
「うおぉ……っとネモネア・プリンセス?」
「ネモネア、戦えっ、アクアン老師の仇を」
「……あんた達にまだ言ってないことがあった」
「言ってないこと、こんな時にまたか」
「たのむ、あたいに誰も近づけないように守ってほしい」
――アヴエロとソレイルの頭を掴み、魔王は回転しながら2人を投げ飛ばす。
「くっ、死んで、たまるかぁっ!」
「ソレイル無理しないで、ハァ、ハァ……アクアン老師、今回の相手はキツイです……光?」
弱音を吐くアヴエロ、でも気がついた光の方を向くと白く輝くあたいに気がついた……。
「あ、あの光はあの時の、まさか……だめだっ、ネモネアッ!」
駆け寄ると前にエメールが立ち塞がる。
「エメールさんどいてください、ネモネアが!」
「駄目です」
「どうしてだエメールさん、今は仲間で揉めている場合じゃないんだ、どいてください!」
「退けません、それがネモネア・プリンセスの望みですから」
「望みだって……そんな、ネモネアッ!」
「うくっ……」
意識が薄れるのを感じる。やっぱり城下町が観えたのは……。これはあたいの望みでエメールやモントに隠していたこと、それは。
「――女神の命……」
「うん、あたいは一度死んだ。でも一つ目邪獣に封印されていた女神フラデーアは解いてくれた御礼に勇者たちの願いを叶えた」
「……それが、その戦で散ったネモネア・プリンセスの、命……」
「そうなんだエメール……その後は激しいトラウマに苦しんだけど……こうして女神の命によってあたいは生き返った」
一瞬の静寂。
「ネモネア・プリンセスは、やはり一度死んでいた」
「ごめん黙ってて」
「……そんなことは……いまさらいい、ネモネアの考えがあってのことだろう。それでどうするつもりだ」
「ありがとモント。それは……」
この命を、女神に返す……。
「これしか手がないんですよ……勇者アヴエロ」
「そんな、それじゃネモネアは……」
「ソレイル・プリンセスとスオーロさんが魔王に苦戦しています、戦ってくださいっ!」
「ぐうっ……」
「御つらいでしょうが、これでは魔王が世界を握ってしまう、だから戦って貴方の使命を果たしてください、勇者アヴエロッ!」
「うあぁぁぁーっ!」
叫びながら魔王シャンイレールに殺られそうなソレイルとスオーロの元へ走っていく。
「はぁ……はぁ、ごめん、ね……アヴ、エロ」
「ネモネア!」
「だい……じょうぶ……モン、ト」
命に意識するたびにどんどん視界が薄れて白くなっていく。死ぬなんて嫌だけど……だけど、なんかあたたかくて、気持ちよくなってくる……。
「あぁあっ!」
「ソレイルッ、くう!」
吹き飛ぶソレイルを身体で受け止めたスオーロ。
「スオーロ、ごめんなさい」
「気にするな、アヴエロ、ネモネアは……」
「ソレイル、スオーロ……」
「そうか……あれは恐らく」
スオーロはアヴエロの哀しく諦めたような顔を見て全てを悟ったみたい。
「はぁ、はぁ……もう、だめ……」
せっかく会えたのに、こんなのって……、
でも冒険たのしかったな……、
エメールとモントにあってちょっと勇者気分だったし……、
あきらめないでアヴエロにだって会えたんだから……、
こんな事になっちゃったけど……あたいの変わりに魔王を倒して女神フラデーア、
みんな、さようなら……。
「うわぁぁぁっ!」
「どうした涙を流して」
アヴエロを避けて後ろから仕掛ける魔王シャンイレール、だがその更に後ろから飛び込んだソレイル、モント、エメール。
「「はぁああっ!」」
「フフッ、ハッハーッ!」
1人ひとりを順番づつ痛めつけていく。それでも倒れないのは命を捨てて救ってくれたアクアン老師のため。
「ちくしょ……え、剣がっ!」
「ううっ……あたしの盾も!」
「私のクラウンも」
「師匠の、マントもです!」
突如持っていた剣に盾、装備していたクラウンに羽衣までが光に包まれて何処かへ飛んでいく。
「フンッ、女神にでも見捨てられたか……ん」
腕を組んで呆れた矢先に魔王シャンイレールも気がついた謎の光。倒れているアヴエロ、ソレイル、モント、エメール、それらを回復していたスオーロたちはその光を発して浮かんでいる白いローブの女性に目を向けた。
『魔王シャンイレール……』
「その声は……女神フラデーア? 何故だっ、あのとき確実に貴様は散った」
浮かんでいる女神フラデーアに、自身も浮いて近づいた魔王シャンイレール。しかし眉間にしわを寄せ納得いかずイライラしていた。
「猿芝居だったとでも言うつもりか……女神フラデーアッ、言えっ、何故貴様がいきているっ!」
「……私は死にました。それは変わりません」
「ならその姿は……魔族の女?」
「そう、この肉体は魔族の娘ネモネアのもの。私の身体は消滅しましたが、ネモネアを生き返らせたときに渡した魂で、まさか私が救われるなんて思ってもいなかった」
「なるほどしぶとい女だ、フッフッフッ……ハッハッハッハッハッ」
「シャンイレール、なにがおかしいのです」
そのとき魔王は腕に力を、魔力を発する。すると紫雲から激しい雷鳴と強風が吹き荒れた。まるで自然が魔王に怯えるように。
「では、もう一度殺してやろ女神フラデーア」
すると静かに女神フラデーアから白く輝く力が覆う。そして女神の剣、盾、クラウンにマントを装備して戦闘態勢に入った。
「もう、やられません……」
光と闇は再び衝突した……。
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