七代目 双子の桃太郎

ヒムネ

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    笑う桃太郎と鬼

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 鬼ヶ島の争いから一週間、巳四つ時に目を開け起き上がる桃太、そこに、
あにぃ、寝てなきゃ駄目ですよ」
「もう大丈夫だから勘弁してくれ~」
 桃子に寝るよう促され困る兄、仕方なく座る。
「桃子、夕陽殿は」
 タオルと桶を置き、
「夕陽さんなら、下で時雨殿と」
 すると、
「起きたか、も、桃太」
 彼の顔を見ると赤くする夕陽、
「あ、ああ、しかし今だ慣れぬよ、まさかあの夕陽殿が」

 あの口づけで桃太が息を吹き返すと同時に夕陽は、角は消え、肌も赤から肌色に、力も無くなって何と人間になってしまっていたのだ。
 それをあとから聞かされた彼もどういう態度を取れば良いのか分からず、
「お、鬼達の方は?」
「時雨が皆をまとめてるよ」
「そうか」
「なあ、桃太」

「目覚めたか、桃太!」
「飛竜、涼殿、源太、黒縁殿!」
 喜び笑顔になる兄を安堵して観ている桃子、

「もう、大丈夫なようですね」
 そこに気が付いたキジの涼、
「桃子」
「涼殿」
 場所を変え外に、

「桃子、やっぱり牢に彼女の姿はなかったわ」

「······そうですか」
 海を眺めながら、
「あの時わたくし達に桃源郷に行けと言ってくれたのは、母だったのですね」
「ええ、そうよ」
 涼は、戦いが終わり桃太を休ませている間に考えた末、桃子に全て伝えることにした。
「あのあと一体どこへ?」
「多分、西の方だと思うわ」
「え、なぜ?」
「この島に住む他の鳥に訊いたのよ、そしたらあの戦いが終わるちょっと前に西へと向かう小舟を見たって」
「そう、ですか」

 桃から生まれた双子の桃太郎、親の事など考えようとはしなかった、それはお爺様おばあ様そして兄がいたから別に寂しくもなかったから、でも今彼女の心の中には母の声ばかりを思い出す······。

「――時雨殿」
 階段を下りた桃太、
「お、桃太、もう良いのか?」
「いや、休みすぎた。もう暇で仕方なかったよ」
「そうか、だよな」
 周りを見渡すと鬼達がせっせっと仕事をしている。
「これは?」
「戦いで壊れた鬼城の修復して少しずつ模様を変える作業だ」
「順調なのだな」
「いや、そうでもないんだ」
「ん、そうなのか」

「ああ、鬼神と紫鬼毒の二人による支配が消えても、他の鬼達は今だ心身共に傷ついている。その傷を癒すのに何年掛かるか······」

「体の傷は治れど、心の傷は、か」

「だがもう争う事はないんだ、何年掛かってもやってやる」

「ははっ、頼もしいよ時雨」

「ふふっ、桃太郎、体はもう良いだろう。決着をつけるか?」

「やるか?」

 二人は目を合わせ、

「はっはっはっはっはっ」

 笑った。

「拙者はもう痛いのはごめんだ、ははっ」
「俺もだ、戦って怪我して、仕事も遅くなるだけだしな、はっはっはっ」

 桃太郎と鬼というお互いの背負う物が無くなり、敵だった二人は、今、平和を感じてただ笑う。

「なあに、笑ってるんだアホな二人」
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