七代目 双子の桃太郎

ヒムネ

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    桃太郎と猪

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 朝の日差しで目覚めた桃太。
「う~ん、ん?」
 何やらざわついているが、
「どうした、一体何を焦っている?」

「桃太、お前の村の方からただならぬ気配がする」

 そう言って空を見上げる犬達。
「なに!」
 ただならぬ気配、彼が思うところは当然、

「鬼か」

「鬼ですか? しかし何故この時に」
 長老は疑問に感じた。
「村になにかあったら、どうする桃太」

 飛竜達の言っていることが事実なら村に危険が、しかしキジや猿も仲間にしなくては行けない。

「長老!」
「どうした?」

「猪がーー」

「オラオラどけ、ここに桃太郎が居るはずだ」
「拙者が桃太郎だ」
 竹やぶから姿を現したのは桃太よりも一回り大きい闘志を全く隠す気のない獰猛な猪。
「なにようか」
「お前が桃太郎か。鬼が呼んでるぜ、村で待機している」
「まだキジと猿を仲間にしていないのだ」
「そんなの知るか、気が変わって鬼が村に何するか分からんぜ」
 そこに飛竜が、
「お前、脅迫か!」
「へっへっへっ」嫌みの様に笑う。

「······分かった、案内してくれ」
 決断した桃太、お爺様やお婆様、そして桃子の住む村が襲われては鬼退治どころではないとの想いだった。
「桃太郎」

「それとその前に」
「なんだ」

「オレと戦ってもらおうかっ!」

 殺気を堂々と出してきて、刀を構え、
「ウゥ~!」飛竜も体勢をとる。
「お主と戦うのも鬼の指示か?」
「いーやぁ、鬼に呼ばれるほど強いのか試してみてえのよ、ブルルァーっ!」

 猛然と突進してくるが、

「動きが丸見えだ」
 三回、四回とかわしていく。

「どうした、避けているだけでは勝てんぞ!」

 挑発する猪。だが気を緩めたらあの湾曲した牙で命の危険も、なので冷静に見極める。

 そして七回、八回と続けていた。
「何をやってるんだ桃太は」
 飛竜も焦り初めて、

「てめえ~、ふざけんなよっ!」
 相手は怒り、笹の葉が舞うほど鼻息を荒くするのだった。

「見切った」

「あぁ?」

「来い」スッと棒立ちする桃太郎に、

「死んでも知らねぇーぞぉぉー!」

 迷わず突進をする猪、

 ギリギリまで惹き付け、
「ふっ」

 側転で避けつつ牙を掴み、
「よっと!」頭に乗った。

「てめえ、何のつもりだ!」
「これで拙者の勝ちだな」
「ふざけんなっ」
「ふざけておらん、それに案内して貰うのに傷をつける訳にはいかないのでな」
「オレがこんな事で負けを認めると思うのか」
 まだ続けようとするのに対し、桃太は鋭い目になり、

「······拙者がやろうと思えばここから刺せるという事は、結果が見えてるはずだが?」

「ぐぐっ」
「諦めろ、猪」飛竜も言う。

 桃太郎に苦言を呈され悟ったのか闘志が消え大人しくなり、
「ちっ、分かったよ······行くぞ」
「ああっ」

 突如として引き返すことになった桃太郎と犬は、鬼の待つ村に戻るのだったーー。
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