第二王女は死に戻る

さくたろう

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第0話 王の独白「そして僕は」

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「すさんだ目をした貧乏人。
 彼を見たときに、初めに抱いた印象だった。
 この国の王子たる僕は、彼のような“弱者”に、優しくしなくてはならない。
 だから学校に忍び込んだ彼を助けた。他に理由はない。それだけだった。

 次に彼に抱いたのは、熱心な奴だ、という感心だった。
 貴族の誰が、彼のように貪欲に知識を求めただろう。彼は僕の学ぶ勉強を面白がり、ブルクストンが教える魔法を吸収していった。
 そう、彼は魔法が使えた。
 とりわけ僕が興味を惹かれたのは、だからだったのかもしれない。
 
 魔法使いは貴重だった。
 中には力を隠す者もいる。
 普通の人が持たない力を持つということは、他者にとって危険な存在となり得るからだ。

 彼は不思議な奴だった。
 
 貧民街の最下層に生まれながら、その魂は輝きに満ちていた。王族に生まれながら、僕の魂が枯れているのとは正反対だ。

 最後に彼に抱いたのは、尊敬だった。
 レイズナー・レイブンという人間は、僕にとってまるで未知だったから。

 共通点がまるでない僕らが、友人となるのにそう時間はかからなかった。
 
 父母が亡くなり、未曾有の多忙が襲っても、彼との交流は続いていた。姉のルイサなど、僕に着いて彼に会いたがったものだ。
 だが王族が一介の、しかも我が国最低の街で暮らす人間と会うことを、当然ながらよく思わない連中もいた。
 意外なことに、それは僕が師のように慕っているブルクストンだった。

『あのような者と関わりあいになるのはおやめください。どのように利用されるか分からない』
 
 宮廷魔法使いである彼は使用人ではないが、僕は彼を信頼し、いつも側に置いていた。だが僕は忠告を聞き入れなかった。
 僕の態度に、ブルクストンは失望したようだった。彼はそのころ、ひどく寡黙になり、時期を同じくして亡くなった。
 高齢であったし、仕方の無いことだとは思う。
 
 葬儀に立ち会えなかったのは、ブルクストンが死んだ日、僕が高熱を出したせいだ。
 解熱したときには、一切終わった後だった。妹たちは泣いていて、慰めた記憶がある。

 レイズナーとは、それからも度々会っていた。彼の暮らす家を見たいと言ったのは、市政の人間の暮らしを知りたかったからだ。
 彼は初め渋っていたが、やがては頷いた。

 片付けるから待っていて欲しいと言われ、玄関の前で待つ。

 やがて家の中から、甲高い悲鳴が聞こえた。急いで僕は扉を開ける。

 倒れるレイズナーの体があった。
 泣いて怯える、彼の妹の姿があった。
 僕を見て、驚く男と目が合った。 

 血まみれのナイフが床に落ちている。
 レイズナーの体から、おびただしい量の血が流れていく。


 そして僕は」
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