7 / 10
ベネーノ家の庶子 リオル視点
しおりを挟む
リオル・ベネーノは、第二王子フェリクスとはまともに話したことはない。いつも彼の影を間に挟んでの会話をおかしいと思ったことはなかった。公爵家に入ったとはいえ、庶子でしかない自分を見下し、王子が話したくないと言うのも、そういうのが普通だと理解していた。
だが、最近他の人と話す機会が増えると、本当にそうか、と疑う気持ちが芽生え始めていた。
王子フェリクスと自分の間に入る影は一人ではない。こういう場合、王子自身が嫌がっている場合と、影が嫌がっている場合、良かれと思って行動している場合、何となく、というのがある。
この時一番厄介なのは「何となく」で、誰が言い出したことかはわからないが、「なんとなく」決まったことを皆が何も考えずに実行してしまうことにより犯人探しができなくなる。薄く洗脳でもかけられている状態ともいえる。
ベネーノ家の干渉が嫌なのか、それともリオル自身が嫌なのかわからないが、ただ受け入れるよりは少しばかり抗ってみても良いのかもしれない。
「部下が殺された直後なんだから、配慮してはどうか。」などと、言われたからには、「此方側から新しい情報を得られなくとも良いのか?」と、問うと、相手からは嘲笑と、明確な拒否が見てとれた。口調から彼は、フェリクスと常に一緒にいる影ではなく、ベネーノ家に来る影でもない。他の王子によって影の数はまちまちだと言うが、フェリクスには厄介な影が多い気がした。
誰の思惑かはわからないが、フェリクスにあまり知恵はつけさせたくないらしい。他の王子と違い、あんまり頭の出来は期待されていない彼にベネーノ家が付いたことは、彼を利用しようと狙っていた者達からすれば不服だったことだろう。
ある人からの情報で、影になる人間は、アケル公爵家と絡みがある、と聞いたが、第二王子の影にはその絡みとやらは見られなかった。
確かに他の王子の影の何人かはアケル公爵家に出入りしている者がいたり、裏で接触していたりするが、第二王子の周辺の者達は、避けているのか用心しているのか、繋がりが全く確認できなかった。
これは隠したいのか、関係がないのか判断はつきにくい。
ポエナ公爵令嬢に、密かに紹介してもらった男によると、ベネーノ家の内部に、スパイが紛れ込んでいるらしく、確かに怪しくない人物に絞って調べると、浮き上がる者がいた。ベネーノ家には庶子だから、と蔑む者はいない。彼らが嫌うのは庶子ではなく、働かない者だけ。
リオルは男を強制的に拘束し、フェリクスに報告をしないままに、クルデリス公爵に頼み事をした。
王子を介さないと取り次いでもらえないかと危惧したが、そんなことはなかった。
噂通りの怖い見た目をしていたが、スパイを尋問してくれた。
「母親に情はあるか。」
「いえ、特には。」
何となく、自分の母だった人は生きていないのではないか、と思った。
だが、それはリオルにはすでにどうでもよく、スパイの尋問に気を移した瞬間から忘れてしまった。
クルデリス公爵はそんなリオルを責めなかった。親子の間にある情など信じていない彼に妙な親近感を覚えたのは不思議な感情だった。
だが、最近他の人と話す機会が増えると、本当にそうか、と疑う気持ちが芽生え始めていた。
王子フェリクスと自分の間に入る影は一人ではない。こういう場合、王子自身が嫌がっている場合と、影が嫌がっている場合、良かれと思って行動している場合、何となく、というのがある。
この時一番厄介なのは「何となく」で、誰が言い出したことかはわからないが、「なんとなく」決まったことを皆が何も考えずに実行してしまうことにより犯人探しができなくなる。薄く洗脳でもかけられている状態ともいえる。
ベネーノ家の干渉が嫌なのか、それともリオル自身が嫌なのかわからないが、ただ受け入れるよりは少しばかり抗ってみても良いのかもしれない。
「部下が殺された直後なんだから、配慮してはどうか。」などと、言われたからには、「此方側から新しい情報を得られなくとも良いのか?」と、問うと、相手からは嘲笑と、明確な拒否が見てとれた。口調から彼は、フェリクスと常に一緒にいる影ではなく、ベネーノ家に来る影でもない。他の王子によって影の数はまちまちだと言うが、フェリクスには厄介な影が多い気がした。
誰の思惑かはわからないが、フェリクスにあまり知恵はつけさせたくないらしい。他の王子と違い、あんまり頭の出来は期待されていない彼にベネーノ家が付いたことは、彼を利用しようと狙っていた者達からすれば不服だったことだろう。
ある人からの情報で、影になる人間は、アケル公爵家と絡みがある、と聞いたが、第二王子の影にはその絡みとやらは見られなかった。
確かに他の王子の影の何人かはアケル公爵家に出入りしている者がいたり、裏で接触していたりするが、第二王子の周辺の者達は、避けているのか用心しているのか、繋がりが全く確認できなかった。
これは隠したいのか、関係がないのか判断はつきにくい。
ポエナ公爵令嬢に、密かに紹介してもらった男によると、ベネーノ家の内部に、スパイが紛れ込んでいるらしく、確かに怪しくない人物に絞って調べると、浮き上がる者がいた。ベネーノ家には庶子だから、と蔑む者はいない。彼らが嫌うのは庶子ではなく、働かない者だけ。
リオルは男を強制的に拘束し、フェリクスに報告をしないままに、クルデリス公爵に頼み事をした。
王子を介さないと取り次いでもらえないかと危惧したが、そんなことはなかった。
噂通りの怖い見た目をしていたが、スパイを尋問してくれた。
「母親に情はあるか。」
「いえ、特には。」
何となく、自分の母だった人は生きていないのではないか、と思った。
だが、それはリオルにはすでにどうでもよく、スパイの尋問に気を移した瞬間から忘れてしまった。
クルデリス公爵はそんなリオルを責めなかった。親子の間にある情など信じていない彼に妙な親近感を覚えたのは不思議な感情だった。
1
お気に入りに追加
138
あなたにおすすめの小説
何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします
天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。
側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。
それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
公爵閣下、私があなたと愛を育むつもりだと思っているのでしたらとんだ勘違いですよ~息子を愛していますので、あなたからの愛は必要ありません~
ぽんた
恋愛
アン・ロックフェラー公爵令嬢は、諦め人生を送っている。王子との運命の婚約に結婚。そして、離縁。将軍であるクレイグ・マッキントッシュ公爵に下賜された再婚。しかし、彼女は息子を得た。最愛の息子レナード(レン)を。国境警備で不在のクレイグに代わり、マッキントッシュ公爵領でレンとすごす日々。この束の間のしあわせは、クレイグが国境警備から帰ってきたことによって打ち砕かれることに。アンは、ふたたび諦めることを決意するのだった。その方がラクだからと。しかし、最愛の息子のため最善を尽くしたいという気持ちと葛藤する。
※ハッピーエンド確約。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる