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呑気な人達①
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王家の仕事を一手に引き受けていたアレクサンドラが、既に国を出たと言うのに、今回の騒動の渦中にいる連中は呑気に会談を重ねていた。
陛下と王妃は、男爵令嬢が王子を選んでも、男爵令息を選んでもどちらにせよあまり関心がない。王子の廃嫡は決定事項だし、アレクサンドラを逃す手はないと思っている。彼らの頭の中では、アレクサンドラが彼らの為に働くのは臣下として当然のことで、そこに婚約破棄などの諸事情はあってないようなものである。
アレクサンドラの国外脱出の件は、クララが根回しに走ったのと、アレクサンドラを憐れんだ心ある貴族連中の協力により水面下で行われた。
レニエ公爵は、娘より王家に味方していたため、その詳細を秘匿され、娘とは金輪際会えなくなってしまったことをまだ知らない。
何より彼らは留学生のクララの正体をしらないので、彼女から追うことすらも叶わない。彼女とアレクサンドラが仲良くしていても、ただの友人だと侮ってこうなる危険性を考えなかった。
こういう時、何故愚か者は自分だけが我慢を強いられていると、思えるのだろう。大した仕事もなく、女と遊び歩いていた男と、やる必要のない仕事に追われていたか弱い女性。後者の我慢の度合いの方が明らかに高いのに。
中でも一番の愚か者代表、男爵令嬢は、婚約者と王子を天秤に掛け、どちらにしようか、迷っている。選んだところで向かう先は幸せではないというのに。
彼女は血筋だけで何とかなると思っている馬鹿王子よりも罪深い。ちゃんとした計画を持ってアレクサンドラの居場所を無くした。そのおかげでクララが用意した新しい人生を彼女は歩むことになったのだから、ある意味では感謝すべきかもしれない。
でもだからといって彼女が費やした時間分の努力を踏み躙ったことを、許すつもりはない。
クララも王族の端くれであるから、国を背負う大変さはわかっているつもりだ。
王族には自由などない。あるのは、皆が自由でいられるように国に尽くすことだけ。あの国にはそのことを理解している者がアレクサンドラしかいなかった。
まさに宝の持ち腐れ。クララは成り行きでも、彼女をスカウトし、自国に多大なる貢献をしたことを誇りに思う。
彼女だけではなく、うっかり生き別れの婚約者まで発掘した時は笑ってしまったけれど。
男爵令嬢マリナは、偉い人の話を聞いている余裕がなかった。地位だけなら一択で王子を選ぶのだが、ここに来て急に男爵令息に心を奪われたのだ。
この人、こんな顔だったかな。
「髪を切ってメガネを取っただけ」の婚約者は、マリナ好みのイケメンで、実際、王子よりも好きな顔をしている。どこで覚えたのか女性に気を使える様子も、何でもしてもらって当然の王子よりも高評価で、マリナは今更悩んでしまった。
マリナにまともな感覚が少しはあったなら、自分が壊したアレクサンドラと王子の婚約の後始末として、自分がアレクサンドラの代わりになるように努力するのだろうが、彼女にはそんな気は一切ない。彼女は彼女。自分は自分。
一男爵令嬢に、公爵令嬢の代わりなんて出来るわけもない、と、図らずも王族と同じような考えに陥っていた。
「あの人なら王子様が頼んだら好きに働いてくれるわ。」
この時アレクサンドラ・レニエ公爵令嬢と言う人物は居なくなっている。アレクサンドラは、新しい名前と身分を持って、クララの国に来た。彼女は名をサーシャと改め、クララの従姉妹になった。
陛下と王妃は、男爵令嬢が王子を選んでも、男爵令息を選んでもどちらにせよあまり関心がない。王子の廃嫡は決定事項だし、アレクサンドラを逃す手はないと思っている。彼らの頭の中では、アレクサンドラが彼らの為に働くのは臣下として当然のことで、そこに婚約破棄などの諸事情はあってないようなものである。
アレクサンドラの国外脱出の件は、クララが根回しに走ったのと、アレクサンドラを憐れんだ心ある貴族連中の協力により水面下で行われた。
レニエ公爵は、娘より王家に味方していたため、その詳細を秘匿され、娘とは金輪際会えなくなってしまったことをまだ知らない。
何より彼らは留学生のクララの正体をしらないので、彼女から追うことすらも叶わない。彼女とアレクサンドラが仲良くしていても、ただの友人だと侮ってこうなる危険性を考えなかった。
こういう時、何故愚か者は自分だけが我慢を強いられていると、思えるのだろう。大した仕事もなく、女と遊び歩いていた男と、やる必要のない仕事に追われていたか弱い女性。後者の我慢の度合いの方が明らかに高いのに。
中でも一番の愚か者代表、男爵令嬢は、婚約者と王子を天秤に掛け、どちらにしようか、迷っている。選んだところで向かう先は幸せではないというのに。
彼女は血筋だけで何とかなると思っている馬鹿王子よりも罪深い。ちゃんとした計画を持ってアレクサンドラの居場所を無くした。そのおかげでクララが用意した新しい人生を彼女は歩むことになったのだから、ある意味では感謝すべきかもしれない。
でもだからといって彼女が費やした時間分の努力を踏み躙ったことを、許すつもりはない。
クララも王族の端くれであるから、国を背負う大変さはわかっているつもりだ。
王族には自由などない。あるのは、皆が自由でいられるように国に尽くすことだけ。あの国にはそのことを理解している者がアレクサンドラしかいなかった。
まさに宝の持ち腐れ。クララは成り行きでも、彼女をスカウトし、自国に多大なる貢献をしたことを誇りに思う。
彼女だけではなく、うっかり生き別れの婚約者まで発掘した時は笑ってしまったけれど。
男爵令嬢マリナは、偉い人の話を聞いている余裕がなかった。地位だけなら一択で王子を選ぶのだが、ここに来て急に男爵令息に心を奪われたのだ。
この人、こんな顔だったかな。
「髪を切ってメガネを取っただけ」の婚約者は、マリナ好みのイケメンで、実際、王子よりも好きな顔をしている。どこで覚えたのか女性に気を使える様子も、何でもしてもらって当然の王子よりも高評価で、マリナは今更悩んでしまった。
マリナにまともな感覚が少しはあったなら、自分が壊したアレクサンドラと王子の婚約の後始末として、自分がアレクサンドラの代わりになるように努力するのだろうが、彼女にはそんな気は一切ない。彼女は彼女。自分は自分。
一男爵令嬢に、公爵令嬢の代わりなんて出来るわけもない、と、図らずも王族と同じような考えに陥っていた。
「あの人なら王子様が頼んだら好きに働いてくれるわ。」
この時アレクサンドラ・レニエ公爵令嬢と言う人物は居なくなっている。アレクサンドラは、新しい名前と身分を持って、クララの国に来た。彼女は名をサーシャと改め、クララの従姉妹になった。
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