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エミリー
一介の教師
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その日、警告音は学園中に響き渡った。とは言え多くの人達には、どこか遠いところでなり続けるアラーム音のように煩わしいが目くじらを立てるほどでもない、ぐらいの音にすぎなかったが。
学園長室、生徒会、王家にとっては違った。明確な意思を持って発せられた警告音に聞こえた者達は戦慄した。
第一王子の婚約者により発せられ、指定されたのは、学園内のいざこざによるある女生徒の危機。
エミリーの元に次々に人が現れたのはこういう訳だった。
教師、スーリヤ・セリンが学園長室に呼ばれたのは警告音が発する前。警告音によって、学園長は、対応に追われ、スーリヤも、現場に赴くと、今まさに一人の女生徒が何人かの生徒達に囲まれて危害を加えられそうになっていた。
スーリヤが警告音を聞いたのは2度目。第一王子が学園に在籍していた頃に一度あったきりだ。
その時に、スーリヤは運命の目について知った。その目については秘匿されていて、一般的には知られていないことが多い。
運命の目を持つ人物から対象者への目は、ただ対象者の姿をとらえるだけではない。文字通り、彼女の姿を映し続ける。それは物理的に離れていたとしても同じで、対象者に危険が生じれば、目は異常を感知し、警告音を発する。
今回は第一王子の婚約者から発せられたことから、彼女の元にエミリー嬢を運命の相手とする人物がいることになり、新しい運命の目を持つ者が現れたことを意味している。
スーリヤは、エミリー嬢に助けてくれたお礼を何度も言われ、複雑な気持ちだった。自分は何もしていない。寧ろ野次馬みたいに、見に行っただけで、学園長のように彼女達を引き離すことは出来なかった。
エミリー嬢を取り囲んでいた生徒達は、高位貴族が一名、下位貴族二名だが、気の毒だが相手が悪かった。処分は免れないだろう。
その後に現れたルーミス公爵令息によって、エミリー嬢の危機に彼が関係していたことがうっすらわかってしまった。
彼の生徒会での人気は絶大で、ファンの中には不可侵協定が結ばれていると聞く。
エミリー嬢が彼の補佐になり、彼の眼鏡にかなったことで、不可侵が脅かされるとでも思ったのか。
ただ、どういうつもりであれ、ルーミス公爵令息の思いは報われない。彼自身が新たな運命の目を持たない限りは、彼女は今の目の持ち主と結ばれるしかない。
運命の目にはいくつかの制約があれど、互いに愛し合っている者達の間にあれば、それは互いに強力な盾となる。また反対に第一王子とその婚約者のように反目しあっている関係ならば、地獄と言っていいだろう。
好きでもない相手に監視され続けるのは恐怖でしかない。ましてや、彼女は元々この国の出身ではない。ポレイトという小さな島国の出身だ。半ば強制的に連れてこられて、監視され続ける生活は、ずっと檻の中で飼われているみたいだと、スーリヤは想像して、暗い気持ちになった。
学園長室、生徒会、王家にとっては違った。明確な意思を持って発せられた警告音に聞こえた者達は戦慄した。
第一王子の婚約者により発せられ、指定されたのは、学園内のいざこざによるある女生徒の危機。
エミリーの元に次々に人が現れたのはこういう訳だった。
教師、スーリヤ・セリンが学園長室に呼ばれたのは警告音が発する前。警告音によって、学園長は、対応に追われ、スーリヤも、現場に赴くと、今まさに一人の女生徒が何人かの生徒達に囲まれて危害を加えられそうになっていた。
スーリヤが警告音を聞いたのは2度目。第一王子が学園に在籍していた頃に一度あったきりだ。
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今回は第一王子の婚約者から発せられたことから、彼女の元にエミリー嬢を運命の相手とする人物がいることになり、新しい運命の目を持つ者が現れたことを意味している。
スーリヤは、エミリー嬢に助けてくれたお礼を何度も言われ、複雑な気持ちだった。自分は何もしていない。寧ろ野次馬みたいに、見に行っただけで、学園長のように彼女達を引き離すことは出来なかった。
エミリー嬢を取り囲んでいた生徒達は、高位貴族が一名、下位貴族二名だが、気の毒だが相手が悪かった。処分は免れないだろう。
その後に現れたルーミス公爵令息によって、エミリー嬢の危機に彼が関係していたことがうっすらわかってしまった。
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ただ、どういうつもりであれ、ルーミス公爵令息の思いは報われない。彼自身が新たな運命の目を持たない限りは、彼女は今の目の持ち主と結ばれるしかない。
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