馬鹿につける薬あります

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私の生き方

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セドリック兄様は縁談をすぐに持ってきたものの、特に辺境伯としては娘の婚姻を急いでいる訳ではないらしい。

後継はアレク兄様に決まっているんだし、シガニ卿のところだって特に後継に困っている訳ではない。

どちらかと言うと、兄弟はステラの為を思って泣く泣く縁談を持って来ただけで、何なら嫁に行く必要はないと思っている。

「ずっと家にいれば良い。」などと、素で言う始末。それは、兄様達のお嫁さんに叱られるだろうと思うが、アレク兄様に至っては、縁談の際にわざわざ周知させる覚悟のようで、最初から小姑付きなんて、貰い手がなくなるよ、と心配する。

それでなくとも、辺境は田舎で粗野で乱暴者だと思われがちなのだから。

顔合わせの様子を見ていたセドリック兄様は、何か思うところがあったのか、お茶のタイミングで部屋にやって来た。

いつもなら、鍛錬ばかりしている人なのに。

セドリック兄様は他の兄様と違って、しょっちゅう弱音を吐く。弱音ぐらい吐かないとやってられないらしい。弱音を吐きつつもやらなきゃならないことはちゃんとする。ギャップがある人だ。

彼は昔から人の話を聞き出すのが上手い人だった。悪さをして捕まったりした人の聴取なども担当する。見た目はゴリラでも、話しやすいゴリラで人の懐に容易く入り込む。

セドリック兄様は熱いお茶を冷ましながら飲んでいた。猫舌で、冷たいものを一気に飲むことを好む彼は滅多に熱い茶を飲まないと言うのに。

「縁談を持ってきた俺が言うのも何だけど、あまり身分とか、家のこととか気にしなくて良いからな。あの前の婚約者の時から分かってるとは思って言わなかったが、あれは向こうのごり押しだったし、こちらの意思ではなかったから、悪かったと思ってるんだ。

できれば、手元に置いておきたくて、色々紹介したりしたけれど、やりたいことがあればしていいし、縁談以外に好きな人がいればその人と一緒になれば良い。

ルイスと仲良くしていたみたいだったから、どうかな、とは思ったけれど、彼のことを好きにならなきゃ、とかは全く思わなくて良いからな。

両親だって、政略結婚ではないし、ステラはまだ若い。これからのことはじっくり考えて、結論を出してくれ。」

「もし、私が平民と結婚したいって言ったら?」

「その人が好きで、ちゃんと紹介できる相手なんだったら勿論応援する。多分皆反対はしないんじゃないかな。」

「紹介できない人ってどんなの。」

「いや、ほら、既婚者とか、犯罪者とか。定職についてない、とか。胡散臭いとか、あるだろ?まあ、あまりにも弱っちい奴だったら、教育的指導はあるかもだけど。

もし、考えがまとまらないなら、結婚だけが人生ではないから働いたって良いんだ。それで、見えてくるものもある、らしいからな。」

「それは誰の教え?」

セドリック兄様の顔が赤い。これは、ひょっとする?

「いや、ま、友人だよ、友人。そいつも、縁談が結婚間近で解消になったから、今は仕事に没頭してる。女性だからって結婚が幸せとは限らないだろ?外には色々な生き方があるから、それに塗れてみるのも手じゃないかな。」

働くことは薄々考えてはいた。でも、自分に何ができるかわからなくて、やりたいことを考えたら、また誰かに助けてもらわなくちゃ出来ない、と思って。そう思うと、これは間違いなんじゃないか、ほかにやり方があるんじゃないかと、堂々巡りになってしまう。

「兄様、私働きたいわ。でも何が出来るかわからないの。誰かに相談に乗ってもらいたいのだけれど、適任者はいるかしら。」

「なら、俺の知り合いでよければ、紹介するよ。」
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