幼馴染は不幸の始まり

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本編

第二王子と

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「お前のおかげでうまくいきそうだ。キエス侯爵家にうまく入り込めたようだし、要らない女を最後に消せば、俺たちは、皆に祝福されて一つになれるぞ。」

第二王子は、マリーナ・キエス侯爵令嬢の肩を抱きまるで恋人のように囁いた。

「それで、ミリアとかいう姉と、偽アリスを消して仕舞えば良いという話だったな。姉はお前に似ているなら離宮で囲ってやっても良いが。」
「私がいますのに、不要でしょう。まさか私一人では物足りないと仰いますの?」

「いや、そんなことはない。いつかお前が裏切る時の保険にしたかっただけだ。」
「私が裏切るなんてしませんわ。命が惜しいですもの。」
「裏切るのは得意中の得意だろう。昔も今も、絶賛裏切っている最中ではないか。」
「昔も今も、裏切ったのは貴方の為なのに、そんなことを仰るの?酷いですわ。」

第二王子の顔を覗き込み、必死に媚び甘える姿は、可愛らしく、第二王子は内心悶えながらも悪い男を演じる。マリーナに扮した女も、わかっていてこの役を演じているのだから、似たようなものだ。

第二王子が彼女を抱きしめて首筋に口をつけたところで、外が騒がしくなる。

「お帰りのようですわね。」
「構わん。続けよう。」
「ダメですわ。計画が破綻してしまいます。」

そう言いつつも、離れずに第二王子の膝の上でイチャイチャしている二人の元に訪れたのは、偽アリスで、彼らを見るなり怒りの形相で殴り込んできた。

彼女の怒りの矛先はまずはマリーナで、次には第二王子に向いたが、第二王子に暴力を振るえば追い出されるとわかったのか大きな音を立てて、部屋を乱暴に出て行った。

「アレは酷い顔をしていたな。」
「仕方ありませんわ。虐待されていたのなら、急に綺麗になっても違和感しかありませんもの。」

第二王子は、アリス・リゼットを保護して結婚する。これは決定事項だ。アリス・リゼットは可哀想なご令嬢で、結婚式までは見窄らしい様子でいなければならない。結婚するのが実際には誰であっても、助けられたアリスを演じる彼女は、まだ綺麗になってはいけないのだ。

綺麗なものにしか触れたくない綺麗好きの第二王子が、偽アリスに触れないのはそう言うこと。

偽アリスが出て行った後にはまた第二王子の攻撃は再開した。ソファに軽く押し倒されて、色々なところに痕をつけようとするのを、柔らかく抵抗してみたが、止まるはずもなく。

これで王宮の使用人達はアリス嬢のことを面白おかしく話すだろう。助けられた後で、彼らに偉そうに振る舞っていた彼女には随分鬱憤が溜まっているだろうから。


マリーナ・キエスは、偽アリスに同情する。あんな男を好きになった愚かな義姉を心底軽蔑しながら。


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