幼馴染は不幸の始まり

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本編

婚約者の現状

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「イーサンとは二人で会うな。」
そうダニエルに言われたクラリッサだが、新しく護衛になったアルバートによると、会って確かめて欲しいことがあるそうで、先触れを出して会おうとした。

実際にアリス嬢の捜索がどうなっているかも聞きたいし、ミリア嬢を匿っているのが誰かも知りたい。

そして一番は、イーサンが元気かどうかが知りたかった。

だが、先触れを出したところで、話は終わった。イーサンの母である侯爵夫人からお断りの手紙が寄越されたのだ。

夫人の手紙には、不安が見て取れた。イーサンはアリス嬢がいなくなってから人が変わったように怯えて、何かから必死に姿を隠したがっていると言う。

何が怖いのか聞いても、何も話してくれないらしく、クラリッサに話を聞きたいものの、会えたところで彼が何をするか分からず、イーサンの母としては了承できない、と。夫人はイーサンがクラリッサに害を及ぼすと危惧しているようだ。

「夫人の為に、アルバート様の名前を出しても良いですか?」
公爵家の名前で誘導するのは卑怯だが、背に腹は変えられない。アルバートは自ら、動こうとしてくれた。

「イーサンは精神的に少し弱い子だから、クラリッサより先に影響を受けてしまったようだな。君が不安ならば、私だけでも先に彼に話を聞いてくるが、どうする?」

クラリッサはアルバートを信じているが、果たしてそのやり方であっているかの判断ができない。ついこの間、同じ手法でダニエルにしてやられたところだからだ。

「私が嘘をつくか心配ならば、やはり一緒に行くのが一番だ。うーん、私はあまり得意ではないのだが。クラリッサ嬢、変装しよう。」

あれよあれよと言う間に、クラリッサはいつもの姿からは想像もできないような少年の姿に変身した。

コルセットをしないだけで、随分と楽だし、違う人間に見える。クラリッサは目的も忘れて感嘆していたら、アルバートに注意されてしまった。

見え方を変えただけなので、この姿でクラリッサだと認識してしまえば、効果はなくなるらしい。


「君にも詳しい説明はするが、今のところまだ夫人は此方側だと考えておいてくれ。多分君にはこれからも、接触してこようとする人はいるが、アリス嬢を名乗る女性と、第二王子殿下関連、ダニエルは勿論避けてくれ。他にはキエス侯爵令嬢も、避けてくれるとありがたい。多分そのうち絡んでくると思うから。

ただ逃げられなかった時は、集中して、情報収集に努めてくれ。多分ダニエル達は、クラリッサ嬢から状況を把握したいと思う筈だ。」
「詳しい説明というのはいつ?」
「キエス侯爵令嬢から、話が持ちかけられたら、で構わない。」
キエス侯爵令嬢と聞いて、漸く合点がいった。

「ああ、アリス嬢ってキエス侯爵令嬢に似てるんだわ。顔じゃなくて、態度が。」

先日、アリス嬢に感じた違和感の先にあるものに、気がついて、クラリッサは密かに満足した。

キエス侯爵令嬢は、第二王子の元婚約者で前は修道院に入っていた。つい最近、還俗したのだが、下位貴族に態度の悪い彼女にはあまり近づきたいと思わなくて、再会もしていない為に、わざわざ自分から絡みに行く気はなかった。

「あの、アリス嬢ってキエス侯爵令嬢のご親戚か何かですか?前に見たカーテシーがそっくりだったので。すみません。変なことを申しました。」

アルバートは驚いて、目を見張った後また感心しきりの様子。

「いや、君……そうか。すごいね。そこのつながりに気づくなんて。これは彼方側も君を逃したくはないよね。」

アルバートの不敵な笑みに恐怖を感じたのは、多分クラリッサの気のせいではなかった。
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