8 / 30
本編
婚約者の現状
しおりを挟む
「イーサンとは二人で会うな。」
そうダニエルに言われたクラリッサだが、新しく護衛になったアルバートによると、会って確かめて欲しいことがあるそうで、先触れを出して会おうとした。
実際にアリス嬢の捜索がどうなっているかも聞きたいし、ミリア嬢を匿っているのが誰かも知りたい。
そして一番は、イーサンが元気かどうかが知りたかった。
だが、先触れを出したところで、話は終わった。イーサンの母である侯爵夫人からお断りの手紙が寄越されたのだ。
夫人の手紙には、不安が見て取れた。イーサンはアリス嬢がいなくなってから人が変わったように怯えて、何かから必死に姿を隠したがっていると言う。
何が怖いのか聞いても、何も話してくれないらしく、クラリッサに話を聞きたいものの、会えたところで彼が何をするか分からず、イーサンの母としては了承できない、と。夫人はイーサンがクラリッサに害を及ぼすと危惧しているようだ。
「夫人の為に、アルバート様の名前を出しても良いですか?」
公爵家の名前で誘導するのは卑怯だが、背に腹は変えられない。アルバートは自ら、動こうとしてくれた。
「イーサンは精神的に少し弱い子だから、クラリッサより先に影響を受けてしまったようだな。君が不安ならば、私だけでも先に彼に話を聞いてくるが、どうする?」
クラリッサはアルバートを信じているが、果たしてそのやり方であっているかの判断ができない。ついこの間、同じ手法でダニエルにしてやられたところだからだ。
「私が嘘をつくか心配ならば、やはり一緒に行くのが一番だ。うーん、私はあまり得意ではないのだが。クラリッサ嬢、変装しよう。」
あれよあれよと言う間に、クラリッサはいつもの姿からは想像もできないような少年の姿に変身した。
コルセットをしないだけで、随分と楽だし、違う人間に見える。クラリッサは目的も忘れて感嘆していたら、アルバートに注意されてしまった。
見え方を変えただけなので、この姿でクラリッサだと認識してしまえば、効果はなくなるらしい。
「君にも詳しい説明はするが、今のところまだ夫人は此方側だと考えておいてくれ。多分君にはこれからも、接触してこようとする人はいるが、アリス嬢を名乗る女性と、第二王子殿下関連、ダニエルは勿論避けてくれ。他にはキエス侯爵令嬢も、避けてくれるとありがたい。多分そのうち絡んでくると思うから。
ただ逃げられなかった時は、集中して、情報収集に努めてくれ。多分ダニエル達は、クラリッサ嬢から状況を把握したいと思う筈だ。」
「詳しい説明というのはいつ?」
「キエス侯爵令嬢から、話が持ちかけられたら、で構わない。」
キエス侯爵令嬢と聞いて、漸く合点がいった。
「ああ、アリス嬢ってキエス侯爵令嬢に似てるんだわ。顔じゃなくて、態度が。」
先日、アリス嬢に感じた違和感の先にあるものに、気がついて、クラリッサは密かに満足した。
キエス侯爵令嬢は、第二王子の元婚約者で前は修道院に入っていた。つい最近、還俗したのだが、下位貴族に態度の悪い彼女にはあまり近づきたいと思わなくて、再会もしていない為に、わざわざ自分から絡みに行く気はなかった。
「あの、アリス嬢ってキエス侯爵令嬢のご親戚か何かですか?前に見たカーテシーがそっくりだったので。すみません。変なことを申しました。」
アルバートは驚いて、目を見張った後また感心しきりの様子。
「いや、君……そうか。すごいね。そこのつながりに気づくなんて。これは彼方側も君を逃したくはないよね。」
アルバートの不敵な笑みに恐怖を感じたのは、多分クラリッサの気のせいではなかった。
そうダニエルに言われたクラリッサだが、新しく護衛になったアルバートによると、会って確かめて欲しいことがあるそうで、先触れを出して会おうとした。
実際にアリス嬢の捜索がどうなっているかも聞きたいし、ミリア嬢を匿っているのが誰かも知りたい。
そして一番は、イーサンが元気かどうかが知りたかった。
だが、先触れを出したところで、話は終わった。イーサンの母である侯爵夫人からお断りの手紙が寄越されたのだ。
夫人の手紙には、不安が見て取れた。イーサンはアリス嬢がいなくなってから人が変わったように怯えて、何かから必死に姿を隠したがっていると言う。
何が怖いのか聞いても、何も話してくれないらしく、クラリッサに話を聞きたいものの、会えたところで彼が何をするか分からず、イーサンの母としては了承できない、と。夫人はイーサンがクラリッサに害を及ぼすと危惧しているようだ。
「夫人の為に、アルバート様の名前を出しても良いですか?」
公爵家の名前で誘導するのは卑怯だが、背に腹は変えられない。アルバートは自ら、動こうとしてくれた。
「イーサンは精神的に少し弱い子だから、クラリッサより先に影響を受けてしまったようだな。君が不安ならば、私だけでも先に彼に話を聞いてくるが、どうする?」
クラリッサはアルバートを信じているが、果たしてそのやり方であっているかの判断ができない。ついこの間、同じ手法でダニエルにしてやられたところだからだ。
「私が嘘をつくか心配ならば、やはり一緒に行くのが一番だ。うーん、私はあまり得意ではないのだが。クラリッサ嬢、変装しよう。」
あれよあれよと言う間に、クラリッサはいつもの姿からは想像もできないような少年の姿に変身した。
コルセットをしないだけで、随分と楽だし、違う人間に見える。クラリッサは目的も忘れて感嘆していたら、アルバートに注意されてしまった。
見え方を変えただけなので、この姿でクラリッサだと認識してしまえば、効果はなくなるらしい。
「君にも詳しい説明はするが、今のところまだ夫人は此方側だと考えておいてくれ。多分君にはこれからも、接触してこようとする人はいるが、アリス嬢を名乗る女性と、第二王子殿下関連、ダニエルは勿論避けてくれ。他にはキエス侯爵令嬢も、避けてくれるとありがたい。多分そのうち絡んでくると思うから。
ただ逃げられなかった時は、集中して、情報収集に努めてくれ。多分ダニエル達は、クラリッサ嬢から状況を把握したいと思う筈だ。」
「詳しい説明というのはいつ?」
「キエス侯爵令嬢から、話が持ちかけられたら、で構わない。」
キエス侯爵令嬢と聞いて、漸く合点がいった。
「ああ、アリス嬢ってキエス侯爵令嬢に似てるんだわ。顔じゃなくて、態度が。」
先日、アリス嬢に感じた違和感の先にあるものに、気がついて、クラリッサは密かに満足した。
キエス侯爵令嬢は、第二王子の元婚約者で前は修道院に入っていた。つい最近、還俗したのだが、下位貴族に態度の悪い彼女にはあまり近づきたいと思わなくて、再会もしていない為に、わざわざ自分から絡みに行く気はなかった。
「あの、アリス嬢ってキエス侯爵令嬢のご親戚か何かですか?前に見たカーテシーがそっくりだったので。すみません。変なことを申しました。」
アルバートは驚いて、目を見張った後また感心しきりの様子。
「いや、君……そうか。すごいね。そこのつながりに気づくなんて。これは彼方側も君を逃したくはないよね。」
アルバートの不敵な笑みに恐怖を感じたのは、多分クラリッサの気のせいではなかった。
16
お気に入りに追加
1,435
あなたにおすすめの小説
生まれたときから今日まで無かったことにしてください。
はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。
物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。
週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。
当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。
家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。
でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。
家族の中心は姉だから。
決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。
…………
処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。
本編完結。
番外編数話続きます。
続編(2章)
『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。
そちらもよろしくお願いします。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
7年ぶりに帰国した美貌の年下婚約者は年上婚約者を溺愛したい。
なーさ
恋愛
7年前に隣国との交換留学に行った6歳下の婚約者ラドルフ。その婚約者で王城で侍女をしながら領地の運営もする貧乏令嬢ジューン。
7年ぶりにラドルフが帰国するがジューンは現れない。それもそのはず2年前にラドルフとジューンは婚約破棄しているからだ。そのことを知らないラドルフはジューンの家を訪ねる。しかしジューンはいない。後日王城で会った二人だったがラドルフは再会を喜ぶもジューンは喜べない。なぜなら王妃にラドルフと話すなと言われているからだ。わざと突き放すような言い方をしてその場を去ったジューン。そしてラドルフは7年ぶりに帰った実家で婚約破棄したことを知る。
溺愛したい美貌の年下騎士と弟としか見ていない年上令嬢。二人のじれじれラブストーリー!
私のことが大嫌いらしい婚約者に婚約破棄を告げてみた結果。
夢風 月
恋愛
カルディア王国公爵家令嬢シャルロットには7歳の時から婚約者がいたが、何故かその相手である第二王子から酷く嫌われていた。
顔を合わせれば睨まれ、嫌味を言われ、周囲の貴族達からは哀れみの目を向けられる日々。
我慢の限界を迎えたシャルロットは、両親と国王を脅……説得して、自分たちの婚約を解消させた。
そしてパーティーにて、いつものように冷たい態度をとる婚約者にこう言い放つ。
「私と殿下の婚約は解消されました。今までありがとうございました!」
そうして笑顔でパーティー会場を後にしたシャルロットだったが……次の日から何故か婚約を解消したはずのキースが家に押しかけてくるようになった。
「なんで今更元婚約者の私に会いに来るんですか!?」
「……好きだからだ」
「……はい?」
いろんな意味でたくましい公爵令嬢と、不器用すぎる王子との恋物語──。
※タグをよくご確認ください※
婚約解消? 私、王女なんですけど良いのですか?
マルローネ
恋愛
ファリス・カリストロは王女殿下であり、西方地方を管理する公爵家の子息と婚約していた。
しかし、公爵令息は隣国の幼馴染と結婚する為に、王女との婚約解消を申し出たのだ。
ファリスは悲しんだが、隣国との関係強化は重要だということで、認められた。
しかし、元婚約者の公爵令息は隣国の幼馴染に騙されており……。
関係強化どころか自国に被害を出しかねない公爵令息は王家に助けを求めるも、逆に制裁を下されることになる。
ファリスについても、他国の幼馴染王子と再会し、関係性を強化していく。皮肉なことに公爵令息とは違って幸せを掴んでいくのだった。
何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします
天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。
側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。
それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる