1 / 4
ヒロインガチャはまた外れ
しおりを挟む
第一王子のサイモンは疲れていた。また今回のヒロインも外れだったからだ。正直、彼女に割く時間が勿体ない。影に頼んで、隣国に捨ててきてもらうことにした。
「大丈夫、大丈夫。隣国なら治安も良いし、王子はイケメンだし、またヒロインになれるよ。」
「いえ、隣国の第二王子は今、ヒロイン恐怖症のため、臥せっておいでです。」
「じゃあ、第一王子は……」
「幽閉されております。その前のヒロインを王子の婚約者が虐めたと、冤罪で国外追放致しまして、その罪で。」
そうだった。隣国から助けを求めて公爵家がそのまま引っ越してきて、サイモンの従兄弟と結婚したのだった。今では立派な公爵夫人である。
「まあ、王子だけじゃなく、高位貴族なら誰でも良いだろう。顔なんかより、贅沢できるかどうかが、彼女達の狙いどころだろう。」
「顔が良いなら、魔王とかも攻略対象になりますものね。自称聖女と言い出すヒロインもいますし。光魔法が使えたら聖女だとか。それなら私も、サイモン様も聖女になり得ますよ。」
「女ではないから、聖女は無理じゃないか?まあ、でもこの国では基本が光魔法だからな。闇と光と両方使えて初めて一人前だから、光だけの聖女なんて、呪いでもかけられてんのか、って話だよな。」
「そうですね。でもこれだけまともなヒロインが来ないとなると、流石にハードルは随分低くなるでしょうね。」
「だから、彼女も最初は、期待されたんだ。それが蓋を開けてみれば、勉強は出来ない、マナーも覚えない、注意すれば、酷いと泣き喚き、いじめだ、とまた喚く。うるさすぎて、何度永眠を勧めたか。
やれ、ドレスを買え、貢物をしろ、二人になりたい、作ったクッキーを食え、遊びにいこう、勉強なんてしなくていいんです、貴方は王子なんですから、誰よりも頑張ってますよ、って当たり前のことを言うんじゃねえ。王子だから、誰よりも頑張って、それでも足りないんだよ、正直お前に割く時間も惜しいんだ。本当に、こんなヒロインしかいないのか。ハズレしかない、ガチャとかあるのか?
あたり入ってる?」
「確か、女神様が仰るには、当たりは適度に入っているそうですよ?王子、ガチャ運ないんだー!と仰ってました。」
「何かバカにされている気がすんな。はあ、もういいや。引いてもまた外れるんだろ。じゃ、バカなこと考えずに婚約者との仲を暖めて行けば良い。」
「まあ、それはそうですね。殿下には、立派な婚約者がいらっしゃいますものね。」
侍従とバカな話をしながら、サイモンが伸びていると、扉をノックする音が響く。
「どうぞー。」
間延びした返事で答えると、婚約者が入ってきた。彼女は幼い頃から婚約者になっている、公爵令嬢のミリー。
「あら、休憩中でしたか?」
いつ見ても彼女は美しい。手を伸ばして、近くに座るように誘導する。侍従は雰囲気を察すると、さっさといなくなった。
「大丈夫、大丈夫。隣国なら治安も良いし、王子はイケメンだし、またヒロインになれるよ。」
「いえ、隣国の第二王子は今、ヒロイン恐怖症のため、臥せっておいでです。」
「じゃあ、第一王子は……」
「幽閉されております。その前のヒロインを王子の婚約者が虐めたと、冤罪で国外追放致しまして、その罪で。」
そうだった。隣国から助けを求めて公爵家がそのまま引っ越してきて、サイモンの従兄弟と結婚したのだった。今では立派な公爵夫人である。
「まあ、王子だけじゃなく、高位貴族なら誰でも良いだろう。顔なんかより、贅沢できるかどうかが、彼女達の狙いどころだろう。」
「顔が良いなら、魔王とかも攻略対象になりますものね。自称聖女と言い出すヒロインもいますし。光魔法が使えたら聖女だとか。それなら私も、サイモン様も聖女になり得ますよ。」
「女ではないから、聖女は無理じゃないか?まあ、でもこの国では基本が光魔法だからな。闇と光と両方使えて初めて一人前だから、光だけの聖女なんて、呪いでもかけられてんのか、って話だよな。」
「そうですね。でもこれだけまともなヒロインが来ないとなると、流石にハードルは随分低くなるでしょうね。」
「だから、彼女も最初は、期待されたんだ。それが蓋を開けてみれば、勉強は出来ない、マナーも覚えない、注意すれば、酷いと泣き喚き、いじめだ、とまた喚く。うるさすぎて、何度永眠を勧めたか。
やれ、ドレスを買え、貢物をしろ、二人になりたい、作ったクッキーを食え、遊びにいこう、勉強なんてしなくていいんです、貴方は王子なんですから、誰よりも頑張ってますよ、って当たり前のことを言うんじゃねえ。王子だから、誰よりも頑張って、それでも足りないんだよ、正直お前に割く時間も惜しいんだ。本当に、こんなヒロインしかいないのか。ハズレしかない、ガチャとかあるのか?
あたり入ってる?」
「確か、女神様が仰るには、当たりは適度に入っているそうですよ?王子、ガチャ運ないんだー!と仰ってました。」
「何かバカにされている気がすんな。はあ、もういいや。引いてもまた外れるんだろ。じゃ、バカなこと考えずに婚約者との仲を暖めて行けば良い。」
「まあ、それはそうですね。殿下には、立派な婚約者がいらっしゃいますものね。」
侍従とバカな話をしながら、サイモンが伸びていると、扉をノックする音が響く。
「どうぞー。」
間延びした返事で答えると、婚約者が入ってきた。彼女は幼い頃から婚約者になっている、公爵令嬢のミリー。
「あら、休憩中でしたか?」
いつ見ても彼女は美しい。手を伸ばして、近くに座るように誘導する。侍従は雰囲気を察すると、さっさといなくなった。
23
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話
下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。
御都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。
みゅー
恋愛
王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。
いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。
聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。
王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。
ちょっと切ないお話です。
今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。
お兄様がお義姉様との婚約を破棄しようとしたのでぶっ飛ばそうとしたらそもそもお兄様はお義姉様にべた惚れでした。
有川カナデ
恋愛
憧れのお義姉様と本当の家族になるまであと少し。だというのに当の兄がお義姉様の卒業パーティでまさかの断罪イベント!?その隣にいる下品な女性は誰です!?えぇわかりました、わたくしがぶっ飛ばしてさしあげます!……と思ったら、そうでした。お兄様はお義姉様にべた惚れなのでした。
微ざまぁあり、諸々ご都合主義。短文なのでさくっと読めます。
カクヨム、なろうにも投稿しております。
「聖女に比べてお前には癒しが足りない」と婚約破棄される将来が見えたので、医者になって彼を見返すことにしました。
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
「ジュリア=ミゲット。お前のようなお飾りではなく、俺の病気を癒してくれるマリーこそ、王妃に相応しいのだ!!」
侯爵令嬢だったジュリアはアンドレ王子の婚約者だった。王妃教育はあんまり乗り気ではなかったけれど、それが役目なのだからとそれなりに頑張ってきた。だがそんな彼女はとある夢を見た。三年後の婚姻式で、アンドレ王子に婚約破棄を言い渡される悪夢を。
「……認めませんわ。あんな未来は絶対にお断り致します」
そんな夢を回避するため、ジュリアは行動を開始する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる