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交換条件がおかしい
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魔道具について話し合って、その間、すっかり存在を忘れていたのですが、怒る様子もなく、のんびりと優雅にお茶を飲んでいる姿には正直不思議な感情がありました。
エトワール様は、第二王子として優秀な方ですが、ゲームの中ではユリアーナ様を裏切ってヒロインに骨抜きになってしまうので、浮気男と言う印象です。前世ではユリアーナ様をよく思っていなかったとはいえ、そこは同情を禁じ得ませんでした。
失礼ですが、初めは、あまり良い印象はありませんでした。
ユリアーナ様もようやくエトワール様の存在を思い出したようで、話はひとまずここまでになりました。
エトワール様に向き直ります。ユリアーナ様は、私の顔を見ながら、申し訳なさそうに話します。
「ええと、相談と言うのは、まあ、借金の回収を引き受ける代わりに婚約者候補を代わって貰おうと思ってるの。」
「……婚約者候補?」
「カート子爵家との婚約は解消されたのだろう?私と婚約しないか?」
…………はあ?
…………えーと、今何と?
「……えっ?」
頭が動かない。
「あら、固まっちゃったわ。」
ユリアーナ様の無邪気な声が聞こえる。
「何を仰っているのですか?」
漸く頭が回り出しました。あ、冗談かしら。酷い冗談だけど、笑うべきよね、そうよね。
「混乱させて申し訳ない。冗談ではないんだ。ユリアーナの恋を応援する代わりに、私の恋もユリアーナは応援してくれると言うんだ。だから、君の弱みにつけ込んで、驚かせてすまない。けれど、君を婚約者にしたいのは本気なんだ。すぐに決めなくていいから、考えてみてほしい。」
私の恋?
回り出した頭が余計な一言を拾う。エトワール様が私に恋?
混乱している私に跪き、手の甲に口づけされる。私の容量はオーバーしてしまいました。
「もう、必死すぎよ!」
遠くで、ユリアーナ様のお叱りの声が聞こえます。目を開けると、ユリアーナ様の微笑みが側にありました。
私は、少しの間、意識を失っていたようです。
エトワール様は心配そうにされて、心なしか落ち込んでいるようです。
「お話の途中でしたのに、申し訳ありません。」
「いや、こちらこそ。急ぎすぎてしまった。」
よっぽどユリアーナ様に絞られたようで、しゅんとされています。
私の顔がみるみる赤く染まっていきます。倒れたおかげで時間差で来たみたいです。
「あらあら、まあまあ。」
ユリアーナ様は余計な言葉を口にされます。
「貴方、これ、脈アリって言うことかしらね。」
エトワール様も嬉しそうに笑います。
うっ、イケメンの笑顔の破壊力は凄まじいです。ユリアーナ様の笑顔も素晴らしいと言うのに。
落ち着いたところで、気になっていたことを聞きます。
「どうして、私なのですか。」
「私のことを覚えている?初めて会った時、君は私を助けてくれたんだ。」
エトワール様と初めてお会いしたあの時、よく覚えていますとも。あの日、生死の境をさまよった私は前世を思い出し、ここが乙女ゲームの世界であると、知ったのですから。
「私は、あれからすっかり君を好きになってしまったんだ。」
エトワール様がニコニコしています。私が知るゲームの中のエトワール様はこんなにほんわかした人ではありませんでした。
いつもどこか満たされない想いを抱いて、そこにいない誰かを思っているような…
これは誰ですか?エトワール様は二人いるとか?
ゲームと違いすぎでしょう。あ、でもカトリーヌの前例があるわね。あれも、カトリーヌちゃんとは別物だし。
「ユ、ユリアーナ様の恋のお相手は誰なのですか?あ、勿論、言いにくければ結構ですが。」
話を急に変えてしまったが、照れくさかったことにしよう。
「大丈夫よ。貴女も知っている方よ。」
そう言って恥ずかしいのか頬を赤らめる。恋する乙女の顔だ。
「ロバート・ユーグ様よ。実は幼馴染なの。」
やっぱりと言うか、知ってた。ロバート・ユーグ様と言えば、大魔術師で、何千年に一度の天才と呼ばれる方。変わり者と有名な方で、ロバートルートでも、ユリアーナ様が悪役令嬢に変わりなかったから。
まさかユリアーナ様の本命がこちらとは思わなかったけど。
エトワール様は、第二王子として優秀な方ですが、ゲームの中ではユリアーナ様を裏切ってヒロインに骨抜きになってしまうので、浮気男と言う印象です。前世ではユリアーナ様をよく思っていなかったとはいえ、そこは同情を禁じ得ませんでした。
失礼ですが、初めは、あまり良い印象はありませんでした。
ユリアーナ様もようやくエトワール様の存在を思い出したようで、話はひとまずここまでになりました。
エトワール様に向き直ります。ユリアーナ様は、私の顔を見ながら、申し訳なさそうに話します。
「ええと、相談と言うのは、まあ、借金の回収を引き受ける代わりに婚約者候補を代わって貰おうと思ってるの。」
「……婚約者候補?」
「カート子爵家との婚約は解消されたのだろう?私と婚約しないか?」
…………はあ?
…………えーと、今何と?
「……えっ?」
頭が動かない。
「あら、固まっちゃったわ。」
ユリアーナ様の無邪気な声が聞こえる。
「何を仰っているのですか?」
漸く頭が回り出しました。あ、冗談かしら。酷い冗談だけど、笑うべきよね、そうよね。
「混乱させて申し訳ない。冗談ではないんだ。ユリアーナの恋を応援する代わりに、私の恋もユリアーナは応援してくれると言うんだ。だから、君の弱みにつけ込んで、驚かせてすまない。けれど、君を婚約者にしたいのは本気なんだ。すぐに決めなくていいから、考えてみてほしい。」
私の恋?
回り出した頭が余計な一言を拾う。エトワール様が私に恋?
混乱している私に跪き、手の甲に口づけされる。私の容量はオーバーしてしまいました。
「もう、必死すぎよ!」
遠くで、ユリアーナ様のお叱りの声が聞こえます。目を開けると、ユリアーナ様の微笑みが側にありました。
私は、少しの間、意識を失っていたようです。
エトワール様は心配そうにされて、心なしか落ち込んでいるようです。
「お話の途中でしたのに、申し訳ありません。」
「いや、こちらこそ。急ぎすぎてしまった。」
よっぽどユリアーナ様に絞られたようで、しゅんとされています。
私の顔がみるみる赤く染まっていきます。倒れたおかげで時間差で来たみたいです。
「あらあら、まあまあ。」
ユリアーナ様は余計な言葉を口にされます。
「貴方、これ、脈アリって言うことかしらね。」
エトワール様も嬉しそうに笑います。
うっ、イケメンの笑顔の破壊力は凄まじいです。ユリアーナ様の笑顔も素晴らしいと言うのに。
落ち着いたところで、気になっていたことを聞きます。
「どうして、私なのですか。」
「私のことを覚えている?初めて会った時、君は私を助けてくれたんだ。」
エトワール様と初めてお会いしたあの時、よく覚えていますとも。あの日、生死の境をさまよった私は前世を思い出し、ここが乙女ゲームの世界であると、知ったのですから。
「私は、あれからすっかり君を好きになってしまったんだ。」
エトワール様がニコニコしています。私が知るゲームの中のエトワール様はこんなにほんわかした人ではありませんでした。
いつもどこか満たされない想いを抱いて、そこにいない誰かを思っているような…
これは誰ですか?エトワール様は二人いるとか?
ゲームと違いすぎでしょう。あ、でもカトリーヌの前例があるわね。あれも、カトリーヌちゃんとは別物だし。
「ユ、ユリアーナ様の恋のお相手は誰なのですか?あ、勿論、言いにくければ結構ですが。」
話を急に変えてしまったが、照れくさかったことにしよう。
「大丈夫よ。貴女も知っている方よ。」
そう言って恥ずかしいのか頬を赤らめる。恋する乙女の顔だ。
「ロバート・ユーグ様よ。実は幼馴染なの。」
やっぱりと言うか、知ってた。ロバート・ユーグ様と言えば、大魔術師で、何千年に一度の天才と呼ばれる方。変わり者と有名な方で、ロバートルートでも、ユリアーナ様が悪役令嬢に変わりなかったから。
まさかユリアーナ様の本命がこちらとは思わなかったけど。
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