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ここだけの話④少年は、見てみたかった

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ここだけの話だったはずだった。

自分が侯爵の庶子だと言うことを聞かされたのは、自分と同じ顔をした異母兄と会ったときだ。

異母兄は、威圧的な話し方ではあったが、僕が知らないことをたくさん教えてくれた。

貴族の振る舞いや、マナーを庶民の僕に教えてくれた。美味しいものを食べさせてくれて、服も綺麗なものをくれて、ただ顔が少し似ているだけだった僕らが、双子に見えるぐらいまで、そっくりにされた。

僕は浅はかだった。異母兄が何を考えているか、考えることをしなかったのだから。

僕は身代わりとして育てられたのだ。どこから、僕の存在を知ったのだろう。自分の命が狙われていると知って、それが回避できないから、僕を彼自身に仕立て上げたのだ。

異母兄は嫌われていた。
侯爵家の嫡男として、好き放題していたからだ。

異母兄は僕にアールと名乗るように言い、僕のジェイと言う名を貰う、と言った。僕はアールとなり、彼はジェイとなった。

僕は浅はかだ。けれど彼はもっと浅はかだ。どれだけ取り繕ったところで、育ちは隠せない。僕がボロを出すより早く、彼は見つかってしまった。

僕は釈放され、異母兄は、処刑された。
侯爵家は取り潰された。
僕は、元の庶民に戻った。

ただ、ジェイに戻りたかった。けれど、一度知ってしまった生活を捨てきれず、元のジェイに戻ることは難航した。

調べてみると、異母兄は、陥れられたようだった。アールはあんまり頭のいいタイプではなかったから、裏切ったやつらのヒントをいろんなところに記していた。こんなに分かりやすければ、消そうと思えば、証拠など消してしまえただろうに、仲間もアールと同じ程度の頭しか持っていないようだった。

僕はアールとそっくりの姿を生かして、アールを騙したやつに一泡吹かせてやろうと思った。今考えると、無知としか言いようがない。

アールの無念を晴らすとかそう言うのではない。アールは、僕を自分の身代わりにして自分は逃げようとした男だ。

アールの恨みを果たしたい、と言う人が僕の前に現れたとき、僕は警戒した。アール側と言うことは、僕の敵だから。
その人のことは信用していなかったが、アールが執着していて、逃げたら嫁にしたいといっていた女がいることを彼から聞いて、興味を持った。

あのアールに狙われるなんて可哀想だな。

アールと同じような女かもしれない。
それなら気をつけなくちゃ。

聞けば結婚していると言う。貴族によくある政略結婚。自由に恋愛して結婚できないなんて可哀想。彼女はアールと結婚したかったのかな。

伯爵家の近くを歩いていて、一度見ただけの彼女に目を奪われた。
アールの気持ちがわかる。
僕は異母兄に、心の中で告げる。

お前の恋焦がれた女は僕が貰う、と。
それが、誰かに作られた想いだと気づかずに。

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