上 下
21 / 51

監禁5日目(伯爵領の執事は質問する)

しおりを挟む
元々は、伯爵家のお屋敷で、執事の仕事をするはずだったのに、お屋敷で研修を終えたら、伯爵領へ飛ばされてしまった。

何か粗相があっだのだろうか、と打ちひしがれていると、使用人の先輩方から、同情的な顔をされた。

言わなくても何があったかわかっているような。

私の顔をみて、頷いている。

お屋敷の使用人は、割と年齢層が高めだったのに対し、伯爵領の一緒に働いている人たちは、少し若いようだ。

その中でも、経験もなく、未熟なのは自分で、だからこそしっかりしなければいけないのだけど。

研修のとき、何度かお屋敷でお会いしていた奥様も、こちらにはいらっしゃらないので、完全に癒しが足りない。

奥様は、とても雰囲気が柔らかくて、明るくて可愛らしいお方で、伯爵様が大切にされている理由がわかる、素敵な方だ。

旦那様がソファで横になられ、仮眠をとっていらっしゃった時に、まあまあ、と言いながら、嬉しそうな顔をして見つめていたり、使用人みんなに優しくて、ニコニコされていたり、全てにおいて完璧な奥様だと、思う。

旦那様は、私みたいな若輩者に、睨みをきかせたり、嫉妬心全開だったりするのが、人間らしくて素晴らしいと思う。

私は見た目完璧な人が、ふと見せる人間らしさに、心惹かれるので、見た目完璧には程遠い方が、人間らしさを見せてくると、汚らしくて逃げたくなる。


最近よく伯爵領の執務室に来られるお嬢さんは、子爵家の方らしい。使用人をゴミのように見るが、そのゴミから汚らしいと思われているのを知らないのだろう。おめでたい方である。

せめて見た目完璧なら、貴方のために少しぐらい情けをかけてあげてもよかったのですが、私まだまだ若輩者でして。


飼い主の言うことしか聞けない駄犬ですので、そのように汚らしい顔をして汚らしい言葉を吐いて、汚らしい態度を取られたところで、私の心は奥様と旦那様に忠誠を尽くしているのです。

なんなら噛みつきましょうか。私の歯が菌でボロボロになっても、愛するご主人様方を守れると思えば、喜んで我が身を捧げましょう。

驚かれていらっしゃるのですか。はて、またどうして。

こちらこそどうして?

貴方如きで、奥様に勝てるとお思いですか?
どうして、あんなに奥様に執着されている旦那様が貴方に興味を持つとお思いで?
どうして、そこまで自己評価が高いのですか?
どうして、客観的に自分を見られないのですか?
頭がおかしいのですか?
どうしてそんな面白い顔でじっと黙っているのですか?


次に、彼女が来たら、言ってやろう、と思ってた言葉は、全て今、目の前で吐き出してしまったようだ。

すぐにお帰りになった。

今日はいい日だ。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

処理中です...