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また鉱山

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気がつけばそこは鉱山だった。いや、違う。今は鉱山で働く方ではない。サワラン公爵家が所有する鉱山を見せてもらっているのだ。

ここは、ヘルマンのいた場所ではない。申し訳程度の簡易の宿泊施設ではなく、立派な豪邸が、作業員の疲れを癒してくれる。鉱山の作業員には、罪人はおらず、ここで働くことはある種のステータスになる。皆作業は辛くても、余りあるほどの福利厚生と、給金に希望者が絶えない程の人気ぶりなのだ。

「第二王子がこの鉱山を狙っている、ということもあるのだよ。」

マリーだけでなく、この鉱山も、第二王子、もしくは側妃の狙いらしい。

「側妃様の家にも鉱山はありましたよね?」

前回の時もそのおかげで、王宮でやりたい放題をしていても、側妃様は咎められることはなかった。

「ああ、あったが、あそこはもう鉱石が取れない。落盤事故があったからね。だから、うちの鉱山が欲しいんだろう。」

確か安全性を無視して掘り続けた結果、何人かの作業員が生き埋めになり、大きな問題になったのだったか。


生き埋めになった作業員の中に、子爵家の次男坊がいたとかで話題になっていた。

「あの子爵家の次男坊、って実家はまだあるんでしたっけ?」

「いいや、彼の娘だと名乗る少女が起こした事件の余波で取り潰しになっている。確かローマン子爵家だったか。

あの娘も、実際には本当に彼の娘かはわからないと言う話だったが、気の毒なことだ。似ているのは瞳の色だけ、ということだったからな。ただ子爵家の当主夫妻が認めてしまったからには受け入れられてしまったが。」

「何が決め手だったのでしょう。」

「ふとした仕草が似ている、と言われたそうだ。息子の考える時の仕草や、笑顔なんかがそっくりだと。」

身内の欲目、とはまた違うのだろうが、どうしても彼らが騙されていたのではないかと言う思いが拭えない。それはサワラン公爵も同じだったようだ。

「私はあの娘は本当は子爵家の血は流れていないように思えるんだ。だから、あの娘を保護しているカート王子にも不審感が残る。君も調べたのだろう。あの元メイドは、ローマン子爵家に乗り込み、自らを亡くなった次男の娘だと言い張った。そして、子爵家を没落に追い込んだ張本人だ。」

「ローマン子爵家とは仲が良かったのですか。」

「ああ、当主の兄とは学園時代に友人だったんだ。身分差からあまり大っぴらに仲良くはできなかったのだがね。」

公爵の友人である人は、体が弱く、学園を卒業後すぐに病に倒れ、還らぬ人となっていた。

「彼には子爵家のことを頼むと、言われていたからな。すまないことをした。」

ベアトリス嬢によく似た娘は、とんだ極悪人らしい。

公爵から貰えた情報を無駄にせず、またもやヘルマンは鉱山に関わることになった。そもそも落盤事故と娘の因果関係がわからない。偶々起きた事故を利用したのならまだ良いが、彼女が乗り込む為に事故を起こしたのなら、話が違ってくる。

やり直しの人生、幸せになるまでにはたくさんの壁があるようだ。ヘルマンは、マリーの笑顔を思い浮かべて奮起した。

折角やり直せたのなら、今度こそマリーには幸せになって貰わなければ。



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