僕はお人形を愛でる

不都合

宝物 ☆

ルイがベッドの住人になる度、世話をするのが好きだ。私なしでは何もできない、と言う感じが。それは願望ではあるけれど、そうはならない。だってルイは寝ているだけでも何でもできる大魔法使いであり、人形遣いであるからだ。

ルイが動かなくても人形が全てやってくれる。むしろ、私は自分が彼の人形になったような感覚にすらなる。

私が彼を生かしてるのではなく、彼が私を生かしている。

寝息を立てる弟のおでこにキスを落とす。それだけでこの強力な情欲を逃すのに成功している。どういうわけか、弟に触れる度に彼を自分のものにしてしまいたいと言う激しい気持ちが湧き上がってくる時期があった。今でもたまにあるが。

ずっと欲望のままに抱き続けていたら、弟が壊れてしまう。それが怖くて怖くて仕方ないから、おでこにキスをして、何とか気持ちを落ち着ける。簡単に言うと、暗示のように、自分に言い聞かせる。

ルイは宝物だから、壊れないようにしなくてはいけない、と。実際そうだし、何も間違ったことではない。

目の届かないところにルイは行かない。私が行ってほしくない、と理解しているから。ルイを抱き上げて、外に出るか、全く出ないか。ルイを出来ることなら縛り付けておきたい。

私以外を見ないでほしい。私以外に触れないでほしい。触れられないでほしい。見られないでほしい。

ルイを見た奴の目を抉り出してやりたい。喧嘩は強くないので、難しいが。

皮肉にも、あの塔から逃げ出してこれたのに、今度は私に捕まるなんて、弟はかわいそうだな。

弟を閉じ込めた奴の心理も今の私と同じなんだろうか。彼の気持ちなどお構いなしで、自分の欲望に付き合わせて、それがいかに愚かなことか知っている。

ルイを自由にしてやりたかった。最初は、彼を守ってあげたら、解放して、お互いそれぞれで生きて行こうと、考えていた。

自分の存在を側に感じるのは、彼にとって良くないことしかないのではないか、と思っていた。

いつからだ……？

いつからこんな執着が？独占欲が剥き出しだ。これはどこからか、精神に干渉する魔法攻撃を受けているってことなんだろうか。魔法に詳しくない自分にはよくわからない。

ルイが起きたら聞いてみよう。彼の近くで魔法が使われたなら、真っ先に気がつくはずなのに、そうでないなら、敵は手強い筈なんだ。

私に精神魔法をかけた誰かが弟を襲う前に、私は正気に戻る必要がある。呆れられるだろうが、弟に魔法を解いて貰うしか、方法はない。