7 / 11
嵐の前の
しおりを挟む
意外にもミアはそれから大人しくなった。王妃には敵意を抱きつつも、彼女に近づくこともなく、訪れた陛下には優しく相手をする。
堕胎薬を盛った侍女は、ミアの担当から外れ、王妃付きになった。代わりにミアのところには新しい侍女がやって来た。
「侍女のマリーと、ローズです。」どちらも男爵令嬢と子爵令嬢で、でも、ミアを見下す様な素振りは見せなかった。
腹の中はわからなくても、彼女達は若いからか感じが良い。
彼女達は、王宮侍女の中では経験が浅い様で失敗することもあったが、ミアと歳が近く、友人のように過ごしてくれたのでミアの心も落ち着いて来た様だった。
陛下はそれでも頑なに王妃と愛妾を会わせることはしなかった。
「あれは反省などしない女だ。ああいうタイプはすぐに人の所為にして、己を省みない。子が流れたのも、理由があるとは思わず、ディアの所為にするだろう。」
クラウディアもその話には同意だった。愛妾様から感じる殺気は、ヒシヒシと、クラウディアと彼女の膨らんできたお腹に注がれている。それに、油断ならない相手も彼方側にいる。
ミアに使われた堕胎薬は、後遺症の残りにくいとても高価なものだ。彼女に負担をかけることを後悔した彼女の恋人が働いて得たお金で購入した。彼は失った命を守れなかったことをとても後悔している。
愛妾様をあれだけ愛している恋人のことをいい加減気づいてあげたら良いのに。
ミアが大人しくなったのは、周りの人の油断を誘う為のもので、決して心の中が変わった訳ではない。
狙うはお飾りでしかない、勘違い女の王妃だけ。
ミアは陛下のいない隙に元恋人を誑かして、王妃の殺害を手伝って貰おうとしたが、目を離すとすぐに彼はいなくなり、陛下だけになるので、幸か不幸か実行することは出来なかった。
だが、信じて待っているとチャンスはやって来る。
ミアは以前、王妃と偶然出会った庭の端に座って、王妃の周囲を見渡す。
庭には王妃と侍女、少し離れた場所に護衛が何人か。
護衛は知らない顔ばかりだったが、綺麗な顔の男ばかりで地味に腹が立った。
最初はただ王妃を殺そうと思っていたが、どうせなら愛される喜びを教えてあげれば良いんじゃないかしら。勿論、相手は陛下ではなくて、別の男。
ミアは学園時代に声をかけて来た男達を頼って、王妃を傷物にしようと企んだ。
王妃を穢せる、となれば、喜んで飛びつく変態は必ずいる。ミアは若い騎士を誑かし、手紙をある人物に届けることにした。
ミアに手紙を渡された騎士は、内容が何であれ、陛下に報告へ向かう。手紙の内容は改められ、計画は知られることになる。
陛下が王妃を囮にするのを嫌がった為に、王妃役を愛妾様の恋人がやってくれる様になった。
計画は杜撰だが、悪質であると、陛下は彼に叱責し、愛妾様が実行した場合、罰は必要であると諭した。いくら勘違いといえど一線を越えてきた彼女。陛下は彼女の恋人が彼女と暮らすまでに我慢させたあれこれを申し訳なく思っていたが、今回のことは許せない様だ。
王妃の腹の中には、まだ形としてはとても小さく儚い、我が国の後継者たる子供がいる。
いくら愛妾様が目論んでも企んでも、後継者を産めるのは、王妃だけ。それだけは変えようもない決まり事であった。
堕胎薬を盛った侍女は、ミアの担当から外れ、王妃付きになった。代わりにミアのところには新しい侍女がやって来た。
「侍女のマリーと、ローズです。」どちらも男爵令嬢と子爵令嬢で、でも、ミアを見下す様な素振りは見せなかった。
腹の中はわからなくても、彼女達は若いからか感じが良い。
彼女達は、王宮侍女の中では経験が浅い様で失敗することもあったが、ミアと歳が近く、友人のように過ごしてくれたのでミアの心も落ち着いて来た様だった。
陛下はそれでも頑なに王妃と愛妾を会わせることはしなかった。
「あれは反省などしない女だ。ああいうタイプはすぐに人の所為にして、己を省みない。子が流れたのも、理由があるとは思わず、ディアの所為にするだろう。」
クラウディアもその話には同意だった。愛妾様から感じる殺気は、ヒシヒシと、クラウディアと彼女の膨らんできたお腹に注がれている。それに、油断ならない相手も彼方側にいる。
ミアに使われた堕胎薬は、後遺症の残りにくいとても高価なものだ。彼女に負担をかけることを後悔した彼女の恋人が働いて得たお金で購入した。彼は失った命を守れなかったことをとても後悔している。
愛妾様をあれだけ愛している恋人のことをいい加減気づいてあげたら良いのに。
ミアが大人しくなったのは、周りの人の油断を誘う為のもので、決して心の中が変わった訳ではない。
狙うはお飾りでしかない、勘違い女の王妃だけ。
ミアは陛下のいない隙に元恋人を誑かして、王妃の殺害を手伝って貰おうとしたが、目を離すとすぐに彼はいなくなり、陛下だけになるので、幸か不幸か実行することは出来なかった。
だが、信じて待っているとチャンスはやって来る。
ミアは以前、王妃と偶然出会った庭の端に座って、王妃の周囲を見渡す。
庭には王妃と侍女、少し離れた場所に護衛が何人か。
護衛は知らない顔ばかりだったが、綺麗な顔の男ばかりで地味に腹が立った。
最初はただ王妃を殺そうと思っていたが、どうせなら愛される喜びを教えてあげれば良いんじゃないかしら。勿論、相手は陛下ではなくて、別の男。
ミアは学園時代に声をかけて来た男達を頼って、王妃を傷物にしようと企んだ。
王妃を穢せる、となれば、喜んで飛びつく変態は必ずいる。ミアは若い騎士を誑かし、手紙をある人物に届けることにした。
ミアに手紙を渡された騎士は、内容が何であれ、陛下に報告へ向かう。手紙の内容は改められ、計画は知られることになる。
陛下が王妃を囮にするのを嫌がった為に、王妃役を愛妾様の恋人がやってくれる様になった。
計画は杜撰だが、悪質であると、陛下は彼に叱責し、愛妾様が実行した場合、罰は必要であると諭した。いくら勘違いといえど一線を越えてきた彼女。陛下は彼女の恋人が彼女と暮らすまでに我慢させたあれこれを申し訳なく思っていたが、今回のことは許せない様だ。
王妃の腹の中には、まだ形としてはとても小さく儚い、我が国の後継者たる子供がいる。
いくら愛妾様が目論んでも企んでも、後継者を産めるのは、王妃だけ。それだけは変えようもない決まり事であった。
726
お気に入りに追加
770
あなたにおすすめの小説
【片思いの5年間】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。
五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」
婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。
愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー?
それって最高じゃないですか。
ずっとそう思っていた私が、王子様に溺愛されるまでの物語。
この作品は
「婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。」のスピンオフ作品となっています。
どちらの作品から読んでも楽しめるようになっています。気になる方は是非上記の作品も手にとってみてください。
番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番
すれ違いエンド
ざまぁ
ゆるゆる設定
彼が愛した王女はもういない
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。
どちらも叶わない恋をした――はずだった。
※関連作がありますが、これのみで読めます。
※全11話です。
【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
そんなに優しいメイドが恋しいなら、どうぞ彼女の元に行ってください。私は、弟達と幸せに暮らしますので。
木山楽斗
恋愛
アルムナ・メルスードは、レバデイン王国に暮らす公爵令嬢である。
彼女は、王国の第三王子であるスルーガと婚約していた。しかし、彼は自身に仕えているメイドに思いを寄せていた。
スルーガは、ことあるごとにメイドと比較して、アルムナを罵倒してくる。そんな日々に耐えられなくなったアルムナは、彼と婚約破棄することにした。
婚約破棄したアルムナは、義弟達の誰かと婚約することになった。新しい婚約者が見つからなかったため、身内と結ばれることになったのである。
父親の計らいで、選択権はアルムナに与えられた。こうして、アルムナは弟の内誰と婚約するか、悩むことになるのだった。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる