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私は陛下の癒しだから

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その日、初夜となる日に陛下はミアの元を訪れた。驚いたのは私だけ?侍女も当然のように陛下がこちらにくることをわかっていたようで、今日も私を綺麗に磨いてくれた。あちらの王妃様も、綺麗に身を整えて陛下を待っているだろうに。彼の貪る様な姿に、ミアは笑いを抑えることが難しかった。

「良かった。泣いているんじゃないかと思っていたんだ。」

「正妃様を迎えることは決まっていたでしょう?私は今日貴方がこちらに来たことで、貴方が怒られないか心配だわ。」

「いや~、彼方のことは気にしなくていい。」
王妃のことはあまり話したくないのか、此方に気を遣っているのか話を早々に切り上げて、彼はミアの体を堪能する。

「可愛い可愛い俺のミア。愛しているよ。」

陛下は昼間あんなにキリッとしているのに、夜はいつも子供の様に甘えん坊になる。ミアは王妃様に遠慮することなく、寧ろ優越感に浸りながら、目の前の男に集中する。

抱きついて、揺さぶられている間、何故かミアの頭には陛下とは別の男の姿が浮かんでいた。何故今頃思い出したかはわからないが、ミアを一生懸命に呼ぶ姿に彼を重ねたのかもしれない。

そういえばあの男も陛下と背格好は似ていた。顔は全く……ん?あの人どんな顔だっけ?騎士志望らしくがっちりとした体躯に、学園では人気があった。だけど、実家が男爵家。だから、私の嫁入りとしては無理だと、一回だけ寝たら終わりにしたのだった。別れ話とか何もしてないけれど、何度か手紙も届いていたけれど、どれも読まずに捨てたし、流石に王家に入ったからには向こうもわかってくれただろう。

「ミア、俺以外のことを考えているの?」

陛下に覗き込まれ、ミアは気づく。あれ?陛下の瞳って、こんな色だったっけ。

小さな疑問は次の陛下の一突きで霧散する。ミアは快楽の中、すっかり現実に戻されてしまった。

その後激しい責めは続き、ミアが眠ったのは朝になってからだった。

 


ミアが目を覚ました時はもう昼だった。勿論、陛下はいない。あれだけ激しい夜を過ごして、普通に朝から仕事に向かえる体力に感心してしまう。

ミアは足腰が震えて、立つことも満足にできないほどだったので尚更である。

湯浴みをした後、侍女が朝食兼昼食を持って来てくれる。朝まで声を出していた所為で掠れ声しかでないミアの為に、喉に効くお薬も一緒に。

「王妃様はどうお過ごしだったのかしら。」

侍女に対する問いかけは、独り言と思われた様で、侍女からの返事はない。

ミアは自然に尋ねた風を装ってはいたが、心の奥にある「愛されない王妃」を下に見る気持ちが声色に現れていた。

侍女はミアに付いてはいたが、それは陛下の指示によるもので、ミアに忠誠を誓っている訳ではない。

侍女は勿論ミアとは違い、事情をしっかり聞いているので、ミアの人間性も勘違いも全てわかっていた。

侍女の役目はミアがここを去るその日まで一人を除いて、誰も彼女に近づけないこと。それ以上はミアに付き合うつもりはなかった。
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