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もてなしを受ける嫁と毒見役の俺
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「精霊王の娘」と言うパワーワードに釣られて、ちゃんとした人から変な奴までいろんな人に声をかけられる。いくらイケメンでも、中身のない奴やヤバい奴は同族嫌悪と言うのか、割とわかるのだけど、嫁はそう言う特殊なのが、好きなのか?囁かれる言葉に、まんざらでもない顔をしている。甘い言葉に耳を貸すな。しっかりしろ!
嫁の機嫌は引き続きあまりよくない。貴方には関係ないでしょ、とでも言いたい顔をしているが、いや、コイツは俺と同じ匂いがする、と言えば嫁が怯えて、近づかないので、まあ、牽制は出来たと思う。俺の精神は抉れたけど。
とにかく歩いているだけで、いろんな人に食事に誘われている。俺のことは、置物かなにかと思われているのか。見向きもされない。食べ物には、何か毒とか、惚れ薬とか入ってないだろうな。嫁に何かあると思うと、不安で、心配でならない。そう言うと、「あ、じゃあ、宜しくね。」と返されてしまった。え、俺、毒味役なの?
躊躇っていると、「大丈夫、私回復魔法使える、はず。」と言った。まあ、そうか。戦闘の時、散々使ってくれたもんな。うーん、怖い気もするけど、嫁に何かあるよりはマシか。わかった!食うぞー!
異世界の食事って絶対に美味しくない、と勝手に思っていたのだが、意外と美味しいことが判明した。最初に誘われて行った家は、いかにも成金みたいな怪しげなオヤジの招待だったから、偏見で用心してしまったが、取り越し苦労だったようだ。大丈夫だった。美味しくて、毒味だと言うのに、たらふく平らげてしまった。眠くなる。あまりの早い眠気に睡眠薬を疑ったが……
はっ、と飛び起きるが、嫁は無事?みたいだ。いつのまにか自宅に帰っていて、自室だった。念のため嫁の寝てる部屋に行くと、鍵がかかっている。多分大丈夫だろう。嫁は俺より強いしね。いくらたらふくでも、先に眠ってしまったので、申し訳ないと反省する。呆れているだろうな。明日謝ろう。また寝に部屋へ戻る。
次の日、起きて謝ったら、嫁が意外にも優しい。どうやら、昨日の食事に睡眠薬が入っていたらしく、俺が毒味をしたおかげで嫁が助かったらしい。柔らかな笑顔を向けられて、素直に嬉しい。
そうなのか。まあ、嫁が無事ならいいや。次からも、頑張って毒味をしよう。
決意を新たにしたのも束の間。
また変な男に声をかけられている。その男もちょっと……じっとみていると、嫁が気にしてくれて、お断りをしていた。感動してしまう。これだけで感動とか前の自分ではあり得ないな、と考えて苦笑する。あれだけ女遊びをしていた自分には今異世界にいるとはいえ、嫁の行動や交友関係についてとやかく言う資格なんかない。
でも、やばい奴はわかる。俺と同じ匂いだから!異世界では嫁に幸せになってほしい。本当はその場に自分がいたいけれど、出来たらもう一度やり直したいと思うけれど、それはただの我儘になる。
嫁が嫌がっていることをこれ以上強要はできない。
今回は睡眠薬だったけれど、毒とか食べてしまった場合、毒耐性とかつくのだろうか。と言うか、死んだりはしないよな。死んだら、流石に泣いてくれるかな。それか、漸く自由を手に入れたと、スッキリしてしまうのだろうか。
でも、自分は、嫁にとっては一度死んだような存在だと思う。ずっと帰ってこなくて、夫としての責務も果たさず、頼れもしない。いるようないないような。もうはじめから諦めていないもの、としてしまえば、楽な存在。
自分が同じことをされたら、絶対大騒ぎするくせに、自分がしたことに、責任すら取らない。本当に反省しかない。
嫁が今でも見捨てずにいてくれるのを、嬉しく思っている反面、夫婦だから当然とか思ってしまう。けれど、ちっとも当然なんかではない。かなこが、優しいのと、義理堅いだけだ。一度夫婦だった俺に対して情けをかけてくれただけ。
毒味をすることを怖いとは思う。けれどこれで死んだとしても、悔いはないだろう。嫁に迷惑かけてきた少しでも、恩を返せたらいいと思うから。
嫁からしたら、こんな少しの恩では割に合わないと言うかもしれないが。
男達がひと段落したら、女性たちからのお誘いがあった。嫁の危険を考えたら、女性相手の方が、安心だと思うのだが、嫁の視線が気になる。
あれ、何か怒ってる?眉間に皺が凄いけれど。
嫁は断ることに慣れたのか、丁重にお断りを入れていた。疲れたのかな?
よくわからないまま、足早に帰ろうとする嫁の後を追う。厳しい顔をしている。何か言われたのだろうか。いい人そうに見えたけど。
正直、男のやばい奴はわかるけど、女のやばいのはわからない。女の人は嘘が上手いから。
嫁の機嫌は引き続きあまりよくない。貴方には関係ないでしょ、とでも言いたい顔をしているが、いや、コイツは俺と同じ匂いがする、と言えば嫁が怯えて、近づかないので、まあ、牽制は出来たと思う。俺の精神は抉れたけど。
とにかく歩いているだけで、いろんな人に食事に誘われている。俺のことは、置物かなにかと思われているのか。見向きもされない。食べ物には、何か毒とか、惚れ薬とか入ってないだろうな。嫁に何かあると思うと、不安で、心配でならない。そう言うと、「あ、じゃあ、宜しくね。」と返されてしまった。え、俺、毒味役なの?
躊躇っていると、「大丈夫、私回復魔法使える、はず。」と言った。まあ、そうか。戦闘の時、散々使ってくれたもんな。うーん、怖い気もするけど、嫁に何かあるよりはマシか。わかった!食うぞー!
異世界の食事って絶対に美味しくない、と勝手に思っていたのだが、意外と美味しいことが判明した。最初に誘われて行った家は、いかにも成金みたいな怪しげなオヤジの招待だったから、偏見で用心してしまったが、取り越し苦労だったようだ。大丈夫だった。美味しくて、毒味だと言うのに、たらふく平らげてしまった。眠くなる。あまりの早い眠気に睡眠薬を疑ったが……
はっ、と飛び起きるが、嫁は無事?みたいだ。いつのまにか自宅に帰っていて、自室だった。念のため嫁の寝てる部屋に行くと、鍵がかかっている。多分大丈夫だろう。嫁は俺より強いしね。いくらたらふくでも、先に眠ってしまったので、申し訳ないと反省する。呆れているだろうな。明日謝ろう。また寝に部屋へ戻る。
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そうなのか。まあ、嫁が無事ならいいや。次からも、頑張って毒味をしよう。
決意を新たにしたのも束の間。
また変な男に声をかけられている。その男もちょっと……じっとみていると、嫁が気にしてくれて、お断りをしていた。感動してしまう。これだけで感動とか前の自分ではあり得ないな、と考えて苦笑する。あれだけ女遊びをしていた自分には今異世界にいるとはいえ、嫁の行動や交友関係についてとやかく言う資格なんかない。
でも、やばい奴はわかる。俺と同じ匂いだから!異世界では嫁に幸せになってほしい。本当はその場に自分がいたいけれど、出来たらもう一度やり直したいと思うけれど、それはただの我儘になる。
嫁が嫌がっていることをこれ以上強要はできない。
今回は睡眠薬だったけれど、毒とか食べてしまった場合、毒耐性とかつくのだろうか。と言うか、死んだりはしないよな。死んだら、流石に泣いてくれるかな。それか、漸く自由を手に入れたと、スッキリしてしまうのだろうか。
でも、自分は、嫁にとっては一度死んだような存在だと思う。ずっと帰ってこなくて、夫としての責務も果たさず、頼れもしない。いるようないないような。もうはじめから諦めていないもの、としてしまえば、楽な存在。
自分が同じことをされたら、絶対大騒ぎするくせに、自分がしたことに、責任すら取らない。本当に反省しかない。
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あれ、何か怒ってる?眉間に皺が凄いけれど。
嫁は断ることに慣れたのか、丁重にお断りを入れていた。疲れたのかな?
よくわからないまま、足早に帰ろうとする嫁の後を追う。厳しい顔をしている。何か言われたのだろうか。いい人そうに見えたけど。
正直、男のやばい奴はわかるけど、女のやばいのはわからない。女の人は嘘が上手いから。
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