悪役令嬢は冤罪を嗜む

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噂?③男爵令嬢の素行

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第二王子アレクセイは、耳を疑った。
「どう言うことだ?」
問われた側近は、同じ言葉を繰り返す。

「だから、どうして、そんなことになっているんだ!」

つい数日前までは跡形もなかった事実。いや、……気づかなかったのか、隠されていた、のか?

公爵家の悪行を暴く為、意気揚々と動き出した彼らの前に突然降って湧いた男爵家の醜聞。

いや、これは寧ろ……公爵家の名を使い、あれこれやらかしているのはトリア男爵家の方ではないか。

数ある罪の中でこれだけは、大人の興味を集めそうなものだっただけに、これを使えないとなると、未練が残る。

理由を問いかけても、側近は言いづらそうに、こちらの顔色を窺ってばかり。

「おそらく、隠されていたのでしょう。男爵か、もしくはそれ以上の立場の者によって。」

「レイナには知らせてないだろうな。」
「……ええ、勿論です。」
「レイナは、優しいから、父親が犯罪の片棒を担いでいることに心を痛めてしまうだろう。」
「誠に申し上げにくいのですが、この項目は今回は保留になさればよろしいのでは?」

側近のアシストに、アレクセイは頷くしか道はない。公爵家と共にトリア男爵家が倒れては意味がない。

最近彼方此方で聞こえ始めたアレクセイの母である側妃に関する噂話のせいで、アレクセイは疲れていた。

兄の体調不良の原因は、母が盛った毒物だと、まことしやかに流れているアレだ。

そんなわけがない、とは言い切れないところが噂が収束しない原因の一つになっている。

噂によると、母の生家である侯爵領内には、薬草を育てている地域があり、その薬草の成分の一部が兄の食事から、発見されたという。

「薬草は、人体に良い効果を齎すだけではありません。その人物や、症状に合わない薬草は処方したところで無害、もしくは有害になり得ます。」

侯爵領内にある薬草畑は有名で、草をみると、どこの畑で育てているものかすぐにわかる。

言われてみれば昔幼い頃に、祖父に連れて行って貰った。

「この辺りは、まだアレクセイ様には早うございます。大人になってから、またご紹介しますよ。貴方にどうしても消したい人物ができたら、の話ですが。」

あの時は、彼が言った言葉の意味がわかっていなかった。

きっと母は、あの辺りの毒を使ったのだな。

噂が広まってから、母はすぐに体調を崩し、部屋に引きこもるようになった。反論をしようにも、強く言いすぎると信憑性を与え、あまりに言わなすぎると認めたような感じになってしまう。

兄は兄で、毒の後遺症があるかもしれない、と別荘で療養をしている。王宮内に残らないことで、噂は更に加速していく。アレクセイは今はそれどころではないのに、急に居心地の悪くなった王宮で肩身の狭い思いに囚われていた。


先程とは別の側近がアレクセイに用があったようで、耳打ちをする。

「レイナ嬢のことなのですが……」
「どうした。彼女の身に何かあったのか。」

またクラリスの取り巻きに虐められたのかと聞けば、側近はおかしなことを口にする。

「訴えられました。隣国の貴族と、我が国の者も何人か含まれているようで。政略結婚を何度も潰したとして、結婚詐欺の罪と、それに伴う慰謝料を請求されています。」

「結婚詐欺だと?」

「はい、詳しくはまだ把握しておりませんが、レイナ嬢が平民から男爵になったことを聞きつけて、訴訟を起こすことになったそうです。」




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