37 / 42
新しい扉
しおりを挟む
何だかアリーチェに勝手に賭けの対象にされているローゼリアとベアトリスだが、ベアトリスは初めての恋に四苦八苦してるし、ローゼリアはローゼリアでやりたいことが沢山あって正直恋愛どころではない。
国を出てからも貴族で居続けられるように、手を回してくれた人がいたことも知っているが、リディアを出た頃から、自分が貴族でいる必要を感じなくなっていることも事実。
ここに来て、留まっている時間すら惜しいのに、何をしていいかわからなくなってきた。
国からずっと付いてくれている護衛が、心配そうにローゼリアを見ている。けれど、彼らに気を許してはならない。何故なら、私は知っているからだ。彼らこそがアリーチェに賭けの内容を提案したのだということを!
彼らは私を、いつもはお嬢様、と慕う姿を見せて手懐けた愚かな女を、アリーチェに売ったのだ。いや、彼らは騙されただけなのかもしれない。アリーチェは私を心配する彼らの純粋な心を利用しただけなのかも。
国王となった元第二王子は、ローゼリアに婚姻の打診をしたものの、断られるのがわかっていたようで、ちっとも残念ではなさそうに「残念だ」と言った。
彼を恋愛対象には見れないが、タイプとしてはローゼリアは悪くないと思っている。腹黒さは隠しきれないようだが、求めているものはわかりやすく、エリオスのように花畑ではない。エリオスに比べると皆彼よりマシという分類になってしまう分、あまり意味はないが。
その昔、ローゼリアは王妃様から、貴女の強みは、集中力と鼻が利くことだと言われたことがある。
胡散臭い人なんかをすぐに見つけて、エリオスの周りから排除するために、とても役に立つと。確かに、ローゼリアは野生の勘に近い直感で、数々の危機を回避したことがある。だが、王妃様にはあの頃言えなかったことは、貴女の息子が一番の危機ですよ、ということ。いつの日か、国を潰すだろうとは思っていた。だが、それは言えなかった。それを言えば、自分達がより厳しい勉強をしなければならないとわかっていた。
やらされた勉強から脱して、新しく自分がやりたい勉強ができることは、至福だ。
「ねえ、もし私が貴族をやめたら、どう思う?」
「そうねえ、スカウトするかな?一緒に働きませんか、って。ローゼリアなら見た目は可愛いし、頭もいいし、何より一緒に働いて楽しい、ってもうわかってるもの。」
アリーチェはいつも、欲しい言葉をくれる。
「一緒に働いてくれるの?」
「ええ。平民の生活をレポートして頂戴ね。マーケティングってやつね。身近な人にお願いできるなら安心だし、貴女の作成した資料なら、私の添削は必要ないでしょう。楽でいいわ。……というか、ローゼリアなら新しいビジネスも模索できるかもしれないわね。本当に来る気はない?サポートするわよ?」
アリーチェの顔がみるみる変わって、まるで決定事項のように、話が進んでいく。
「待って、待って。例えばの話よ。」
慌てて止めると、アリーチェもわかってるわ、と言うが、明らかに目が変わっていた。
ローゼリアは少し安心している自分に気が付いた。
自分の進路はこれから決めるが失敗したとしても雇い入れてくれる仲間がいる。賭けは成り立たないかもしれないがいつでも失敗できるのだから、怯えてないで飛び込んでみよう。
ローゼリアは大きく深く深呼吸をした後、扉を叩いた。
国を出てからも貴族で居続けられるように、手を回してくれた人がいたことも知っているが、リディアを出た頃から、自分が貴族でいる必要を感じなくなっていることも事実。
ここに来て、留まっている時間すら惜しいのに、何をしていいかわからなくなってきた。
国からずっと付いてくれている護衛が、心配そうにローゼリアを見ている。けれど、彼らに気を許してはならない。何故なら、私は知っているからだ。彼らこそがアリーチェに賭けの内容を提案したのだということを!
彼らは私を、いつもはお嬢様、と慕う姿を見せて手懐けた愚かな女を、アリーチェに売ったのだ。いや、彼らは騙されただけなのかもしれない。アリーチェは私を心配する彼らの純粋な心を利用しただけなのかも。
国王となった元第二王子は、ローゼリアに婚姻の打診をしたものの、断られるのがわかっていたようで、ちっとも残念ではなさそうに「残念だ」と言った。
彼を恋愛対象には見れないが、タイプとしてはローゼリアは悪くないと思っている。腹黒さは隠しきれないようだが、求めているものはわかりやすく、エリオスのように花畑ではない。エリオスに比べると皆彼よりマシという分類になってしまう分、あまり意味はないが。
その昔、ローゼリアは王妃様から、貴女の強みは、集中力と鼻が利くことだと言われたことがある。
胡散臭い人なんかをすぐに見つけて、エリオスの周りから排除するために、とても役に立つと。確かに、ローゼリアは野生の勘に近い直感で、数々の危機を回避したことがある。だが、王妃様にはあの頃言えなかったことは、貴女の息子が一番の危機ですよ、ということ。いつの日か、国を潰すだろうとは思っていた。だが、それは言えなかった。それを言えば、自分達がより厳しい勉強をしなければならないとわかっていた。
やらされた勉強から脱して、新しく自分がやりたい勉強ができることは、至福だ。
「ねえ、もし私が貴族をやめたら、どう思う?」
「そうねえ、スカウトするかな?一緒に働きませんか、って。ローゼリアなら見た目は可愛いし、頭もいいし、何より一緒に働いて楽しい、ってもうわかってるもの。」
アリーチェはいつも、欲しい言葉をくれる。
「一緒に働いてくれるの?」
「ええ。平民の生活をレポートして頂戴ね。マーケティングってやつね。身近な人にお願いできるなら安心だし、貴女の作成した資料なら、私の添削は必要ないでしょう。楽でいいわ。……というか、ローゼリアなら新しいビジネスも模索できるかもしれないわね。本当に来る気はない?サポートするわよ?」
アリーチェの顔がみるみる変わって、まるで決定事項のように、話が進んでいく。
「待って、待って。例えばの話よ。」
慌てて止めると、アリーチェもわかってるわ、と言うが、明らかに目が変わっていた。
ローゼリアは少し安心している自分に気が付いた。
自分の進路はこれから決めるが失敗したとしても雇い入れてくれる仲間がいる。賭けは成り立たないかもしれないがいつでも失敗できるのだから、怯えてないで飛び込んでみよう。
ローゼリアは大きく深く深呼吸をした後、扉を叩いた。
26
お気に入りに追加
441
あなたにおすすめの小説
【完結】こんな所で言う事!?まぁいいですけどね。私はあなたに気持ちはありませんもの。
まりぃべる
恋愛
私はアイリーン=トゥブァルクと申します。お父様は辺境伯爵を賜っておりますわ。
私には、14歳の時に決められた、婚約者がおりますの。
お相手は、ガブリエル=ドミニク伯爵令息。彼も同じ歳ですわ。
けれど、彼に言われましたの。
「泥臭いお前とはこれ以上一緒に居たくない。婚約破棄だ!俺は、伯爵令息だぞ!ソニア男爵令嬢と結婚する!」
そうですか。男に二言はありませんね?
読んでいただけたら嬉しいです。
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
泣き虫令嬢は自称商人(本当は公爵)に愛される
琴葉悠
恋愛
エステル・アッシュベリーは泣き虫令嬢と一部から呼ばれていた。
そんな彼女に婚約者がいた。
彼女は婚約者が熱を出して寝込んでいると聞き、彼の屋敷に見舞いにいった時、彼と幼なじみの令嬢との不貞行為を目撃してしまう。
エステルは見舞い品を投げつけて、馬車にも乗らずに泣きながら夜道を走った。
冷静になった途端、ごろつきに囲まれるが謎の商人に助けられ──
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった
Blue
恋愛
王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。
「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」
シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。
アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる