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何も変わらない?

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エリオスとかの男爵令嬢はクリスに荷物のように抱えられ、ステインから消えた。クリスの扱う能力は企業秘密として、何も教えてはもらえなかったけれど、理論が難し過ぎて聞いたところで、理解不能かもしれない。

あれから、ベアトリスとハインツの仲は特に変わりはない。二人とも奥手なのだと気がついたのは最近だ。

ユーガ侯爵家の二人に至っては、思わぬ事故が起き、二人の連携にヒビが入った。早い話が破滅の聖女と、マリウスの仲に亀裂が入ったこと。

アリーチェは知らぬ存ぜぬを貫いているが何がしたことはわかっている。概ね、マリウスの方にハニートラップでも仕掛けたのだろう。面白いぐらいに女好きなようだった。ある意味、女に惑わされているようでは、大それたことなどできない、ということだろうか。

破滅の聖女は、第二王子の温情により、一命は取り留めたものの、こちらも何があったか自分より体格の大きな者を見るだけで、怯えて隠れるようになってしまった。

その様子を冷静に見られている自分も、多少どこか壊れているに違いない。

「ビー、何を考えているの?」

振り向けばハインツ様が笑っている。二人の気持ちは確かめたけれど、以前とは何も変わりはない……筈。

第二王子もとい、新しい国王陛下は、新しく王家を作り替えた。王妃として、ローゼリアに打診したようだが、彼女からは振られたと聞いている。

「愛のない結婚は今後しなくていいって、お父様から言質を取っているの。だから、彼とは結婚しないわ。それに、あんな厄介な男、苦手なのよね。」

最後は小声で不敬発言をばら撒いていたけれど、大丈夫かしら。

第二王子にしても、断られるのは想定済だったみたいで、余裕そうだったから大丈夫だろう。

「ローゼリア様って、あの王子様の好きなタイプ?」

「念の為の確認じゃないかな。彼女が王妃になれる性質があることで、希望なら可能性はあるよ、と言う。ビーには私がいるし、アリーチェ嬢にも、ね。だから、ローゼリア嬢に最初に確認したんじゃない?」

ハインツ様の話を聞いて、頭の中にハテナが浮かぶ。

アリーチェに、誰かいるって言った?

ハインツ様の顔をまじまじと見つめたベアトリスと向かい合い、一瞬の間の後、ハインツは釘を刺した。

「アリーチェ嬢のことは、私が言うわけにはいかないから、本人に聞いてよ。私はそれ以外言えないから。」

「え?誰ですか。私の知ってる人?」
「さあ?私は言わないよ。プライバシーに関わるからね。私は言えない。」

「誰?クリス?」
「それはない。」

ベアトリスの問いにどこから聞いていたのか低い声で当のクリスから否定されてしまう。

「と言うか、何故知らないんですか?」
逆に不思議な顔で問い詰められ、ベアトリスの脳がショートした。


ローゼリアまで、便乗して、やれ人を鈍感だとか、詰ってくるけれど、そこまで言われても未だにわからない。アリーチェの想い人って誰?

「寧ろ、ベアトリス様が知らないって言う方が驚きなんですが。」

「え、もしかして。アルフレッド?」
ローゼリアが可哀想な物を見る目でベアトリスを見た。ハインツ様に至っては笑いを押し殺している。肩震えてますけど。



 
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