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大きなプレゼント

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ステイン公国と何の交流もなかったリディアと言う小さな国。初めから国力も何もかもはるかな差があり、興味も関心もなかった。

エドワードは第二王子である自分が王位に就くことは万が一にもないと思っていた。それは第一王子が優秀だとか、彼に執着している婚約者の家である公爵家の力が強い、だとか民が第一王子を望んでいる、などではなく、ただ真っ先に潰されてしまう、と思っていたからだ。

国王陛下はじめ、王家の腐敗は留まることを知らない。それでも周辺諸国よりはまだマシな方だと臭い物には蓋をし、自分自身、振り返って国の有様を見たこともない。

上手い話を上手く使えるには才がいる。けれどずる賢い第一王子とは違い、人心掌握も上手くできない第二王子には、その手の才能はない。ならば、それを逆手にとり、彼らが自滅する方へ賭けてみた。

第一王子は、こちらを侮り、勝手に落ちていった。妹である第三王女も、己が舞台に立つ寸前になって欲が出た。あれもこれもと強請り驕りが出たところで、切り捨てる。それは生きていくために身につけた最低限の知恵だ。

兄の婚約者だった公爵家のご令嬢が妹と結託し、王位を簒奪しようとした。それだけ王家がそんな些細な綻びにも気がつけずにいることを露呈する羽目になった。


リディア国からの亡命者を助けたのは、偶然だった。偶々拾った死にかけの青年は変装していたとはいえ、ただの平民に見えず、与えられていた屋敷に連れ帰ったのが始まりだ。

名も知らぬ小国の先代の王の子。彼の命を狙う暗殺者が何故か途中からは、まるで保護者のように、彼の周りを守っていたのは、彼の預かり知らぬところ。

リディアと言う国に興味を覚えたのは、彼が中々使える駒であると、その才能を露わにした時だった。

小国リディアは女王の国だ。代々建国からずっと女王が国を守っていた。だが、女性が王家に生まれなくなったタイミングで何故か女系から男系へ王家が変わって行ってしまった。

男系へと変わった王家だったが、実際には女性が仕事をするのは変わっておらず、結果王家の力のバランスが崩れることになった。

「後継者を馬鹿の一つ覚えみたいに、絶対に第一王子、と決めなければ良い」

そもそもの元凶はいつも、その第一王子からだ。ハインツしかり、彼女らしかり。身の丈に合わない欲を隠すことすらしない。


「それはそうですが。第一王子の側から言われない限りは、揉み消されるでしょう。」

確かに。黙っていたなら、安易に手に入ったものを自ら手放せる人物なら、元々問題は発生していない。


「なら、女系に戻すべきでは?」


「男系へ移行して、甘い蜜を吸った人間達は、反対するでしょうね。」

大臣達はわかっている。聡い女性より、馬鹿な男性の方が遥かに扱いやすいと。


「因みに今、女王にするとしたら、一番近い存在はやはり彼女か?」

「ええ、まあ、ベアトリス嬢でしょうね。血筋も、仕事ぶりも、文句なしです。」

「なら、お前が王配となり、彼女を女王にすれば、全てうまくいくのでは?」

「よしてください。貴方が言うと、冗談にきこえません。」


嫌そうに、けれど、彼女の話には些か嬉しそうな顔をして話す姿はどう見ても、なのだが、本人達は全くお互いの気持ちに気が付かないのだから鈍感も過ぎれば面倒なことこの上ない。




それにしても、彼女達を見ていると、ベアトリス嬢を先頭に、ローゼリア嬢、アリーチェ嬢が連携して問題を解決しようとしているように見える。今までそうやって三人で知恵を絞ってやってきたのだろう。この三人をみすみす他国に放つなんて、気がしれない。そう言う意味では、リディア国の評価は地に落ちている。

リディアを手に入れたところで、ステイン公国には何の旨味はないが、試しに彼らの統治を見てみたいと、少しでも思ってしまった。

もし、今後彼らが素直になって、お互いに愛を育んで行けたらその時は、大きなプレゼントをするのも、いいのかもしれない。

第二王子改め、王太子エドワードはひっそりと一人ほくそ笑んだ。
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